「このやり方はどう?奏はこれが大好きでね」一郎は得意げに説明する。「最初の投資は莫大だけど、相手を完全に潰せば、その後の主導権は全部こちらのものになる」「本当に人を引き抜けるのかしら。すみれはかなりの見返りを出してるはずだし、株まで約束してるかもしれない」「すみれに出せるものなら、こっちも出せる。それどころかもっと出せる」一郎は言う。「君なら常盤グループと金城技術、どっちに入る」この二社はそもそも規模が違いすぎて比べるまでもない。「じゃあ……誰が行くの?あなた?それとも私?」「一緒に行けばいい」一郎は即答する。「本当は奏が行けば一番話が早いけど、いつ帰国できるか聞いたら当分無理だってさ」とわこは視線を落とす。「剛が死なないと戻れないの。今は集中治療室にいるから、いつ容体が急変してもおかしくない」「その話は聞いてない。電話では君の会社のことしか言わなかった」一郎はため息をつく。「まるで僕は駒みたいで、兄弟だと思われてない気がする」「違うわ」とわこは奏をかばう。「あなたを心配させたくないだけ。もしあなたが向こうへ行ったら、かえって彼の立場が苦しくなる。強い者でも土地の勢力には勝てないって言うでしょう。Y国は法律も違うし、有力一族以外の命は驚くほど軽い」「分かってる。だから行かない」一郎は言う。「僕は会社を守る。それが一番の助けだ。ただ彼の状況を知りたいだけなんだ」「なら話すわ。今の奥さんは真帆で、剛の一人娘よ。彼女は奏を愛していて、二人は体外受精で子どもを作る予定。ただし子どもは奏と血がつながってない。それでも剛の条件を満たすためにやる。その子は高橋の姓を名乗ってY国に残り、剛の財産を継ぐ」とわこは静かに続ける。「そして奏は剛を殺す機会を狙ってる」一郎はうなずく。「教えてくれてありがとう。彼がそう言ってくれたら僕もここまで不安にならなかった。だが剛を消すのは簡単じゃない。側には腹心が何人もいるはずだ」「ええ。でも奏にも仲間がいる。一緒にいる連中は皆、奏の味方よ。もう少し時間があれば必ず帰ってくる」一郎はうなずき、しばらく黙ってから言う。「提携の話はまだ公にしないでくれ。すみれの中核チームを引き抜いてから発表しよう。その方が相手は面食らう」マイクが水を持ってくる。「さすが年の功だな。本当にえげつない」「褒め言葉と
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