皇后は気にも留めない様子で笑った。「母上は大げさです。どうして陛下まで巻き込まれるのでしょう?陛下は政務でお忙しいのに、こんなことにお構いになるはずがございません。それより越前弾正尹がどうしたというのです?私がいつ彼を害そうとしたと?」越前弾正尹は清良長公主の舅にあたる。わざわざ越前家を敵に回す理由などない。斎藤夫人は深いため息をついた。「あなたは本当に愚かですね。北冥親王様が戦地にいらっしゃるのに、なぜ側妃探しなどするのです?そもそも陛下が北冥親王妃を御書院に数日お一人で残され、深夜にお見舞いにいらしたことの説明もついていないのに、また新たな騒動を起こして、人々が邪推しないはずがありましょうか」「それは皆が勝手に深読みしているだけです」皇后は平然と言い放った。斎藤夫人は娘の能天気な様子を見つめながら、失望を隠せずに首を振った。「一連の出来事が筋道立って繋がっているのは言うまでもなく、陛下が少しでも眉をひそめられたり、何かおっしゃったりすれば、大臣たちは必ず詮索するものです。朝廷のことは置いておくとしても、後宮でだって陛下がお顔色を変えられれば、あなたも色々と推測するでしょう?」少し間を置いてから、斎藤夫人の声調は一段と厳しくなった。「それに、あなたは謹慎を解かれたばかりなのです。本来なら深く反省して、何事も控えめにし、しなくて済むことはしないでいるべきなのに、よりによって厄介事の先頭に立って、人の恨みを買うようなことをして。今では王妃様を巻き込んだだけでなく、平南伯爵家の姫君まで傷つけてしまった。陛下が今この件をご存じかどうかは分かりませんが、もしお知りになったら、簡単にお許しくださると思いますか?」皇后は母のこの言葉を聞いて、ようやく事態の深刻さを理解し、心中に恐怖を覚えた。しかし母の前で弱気を見せたくなかった皇后は、かえって正義を盾にして言い張った。「母上が今日この件でいらしたのなら、私も率直に申し上げましょう。この件を持ち出した真意は、上原さくらに辞官を勧めて、陛下が深夜に北冥親王家を訪問された件を鎮静化させることでした。まさか彼女が宮中にも足を向けず、きっぱりと断ってくるとは思いませんでした。しかも言葉遣いが非常に失礼で、私を皇后とも思っていない様子でした。私は陛下のお立場を思い、陛下のお名前に傷がつかないよう配慮したのです。間
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