私は一瞬で涙があふれ、震える指先でビロードの箱を受け取った。そっと蓋を開けると、中には二つのお守りが入っていた。どちらも透明感のある美しい細工が施されていて、一つには優しい模様が浮かび、もう一つはすっきりとした無地だった。こんなに品のあるお守りは、そうそう手に入るものではない。おじいさんがどれほど心を込めて選んでくれたのかが伝わってくる。私は大切に蓋を閉じ、鼻をすんとすすった。「私が妊娠してること……おじいさんはいつから知ってたの?」本当はとっくに知っていたのに、私の気持ちを思って、あえて一度も聞いてこなかったのだ。もう亡くなってしまったけれど、私は今でもおじいさんの優しさに包まれていた。すると土屋じいさんが口を開いた。「前回の家族の集まりのあと、旦那様は病院から若奥様の診療記録を取り寄せさせました。若奥様……どうか責めないであげてください。お身体を案じるあまり、若奥様が心配させまいとして隠しているのではと……」「責めるわけないじゃない……」私は声を詰まらせながら、ますます泣いてしまった。「ただ、自分を責めてるだけ……」もっと早く打ち明けていれば、おじいさんはきっともっと幸せな時間を過ごせたのに。こんなに気を遣わせて、一言も聞けないままにさせてしまって――「江川家に新しい命が生まれるだけでも、旦那様は十分お喜びになっているはずです。あの世でも、きっと笑顔ですよ」土屋じいさんはそう言って私を慰めながら、ふと思い出したように話を続けた。「それと、旦那様は以前こう仰っていました。この子のことですが、もしも将来、本当に若様とうまくやっていけなくなったときは、子どもは若奥様が連れて行っていい。江川家は金銭的な援助だけをする、と」私は言葉を失った。喉に苦いものがつかえて、何も返せなかった。……そうだったんだ。私が勝手に疑いすぎていただけで、おじいさんは一度だって、子どもを取り上げようなんて考えていなかった。「ただ……」土屋じいさんは少し口ごもってから言った。「やはり旦那様としては、若奥様と若様が末永く仲睦まじく暮らしていくことを、心から願っておられました」「……わかってる」私は大きく息を吸い込み、涙をそのままに顔を上げた。「子どものこと……しばらくは内密にしておいてもらえます
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