けれどよりにもよって、この人が私の叔父さんだ。その立場を笠に着て、宏の前で好き勝手なことを吹き込めるなんて……「姉貴、そんな言い方はちょっと冷たすぎるんじゃないか?」秋紀が手に残っていた柿の種を袋に放り込み、いかにも事情通って顔で言ってきた。「知ってるよ、兄貴が浮気したってことだろ?さっきその女見たけど、あんたより全然イケてなかったよ。いかにも整形顔って感じ。そういうのはさ、ちょっと遊ばせてやればいいんだ。飽きたらどうせ戻ってくるんだし」――浮気。この手の、道徳のかけらもない男たちにかかると、そんな重い話ですら、驚くほど軽い。私はどうにか怒りを飲み込みながら言った。「だから、この件には口出さないでって言ったでしょ。聞こえなかった?」「聞こえたよ」悪びれた様子もなく、叔父さんがニヤリと笑う。ネットでよく見る「老害」って、たぶんこんな人のことを言うんだろう。黄ばんだ歯を剥き出しにして、煙草臭い息を吐きながら言った。「江川のところに口を出してほしくないってんなら、それでもいいさ。けど条件がある。これから毎月60万寄こして、秋紀の就職先もちゃんと世話するなら、俺は一切手を引いてやるよ」「それ、もう強盗じゃない?」私もついに堪えきれず、声を荒げた。「よく聞いて。今後、あなたたちには一円も出さないから」「いい度胸だな。じゃあ裁判所で会おうか?老人を扶養しないってことで訴えてやる。世間に恥を晒せばいい!」「どうぞ、ご自由に」私は声を張った。「こっちには、今まであんたたちに送った金の明細が全部揃ってる。でも、あんたは?私が赤木家で暮らしたあの何年もの間、あんたは私のためにいくら使った?私はどれだけのことをしてきたと思ってんの?」あの頃、家のことはほとんど全部私の仕事だった。まだ8歳なのに、力が足りなくて雑巾で床を膝ついて何度も拭いた。下校時間がもっと早ければ、きっとご飯作りも押し付けられていたと思う。叔母さんが私をかばおうとすれば、叔父さんは決まって「役立たずなんか飼ってどうすんだ」と怒鳴って、私を家から追い出すぞと脅した。家政婦だって雇うなら住む場所くらいは必要なのに。ギャンブルに狂っていたあの人は、私のバイト代まで何度も勝手に持っていった。そんな人が今さら「育ててやった恩
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