この家で叔母さんも、決して楽に暮らしてきたわけじゃない。そう思うと、なんだか切なくなって、「叔母さん……」と声をかけた。叔母さんは私の頭をそっと撫でながら言った。「南、どうして離婚しようと思ったのか、叔母さんに話してごらん?」「……私……」叔母さんと父は、目元や雰囲気がどこか似ていて。だから叔母さんの顔を見るたびに、胸の奥に懐かしさが込み上げてくる。そんなふうに優しく聞かれてしまったら、もう我慢できなかった。私は叔母さんの胸に飛び込んで、しゃくり上げながら泣き出した。「私……子どもを失ったの。叔母さん……あの子、もう手も足も生えてたのに……私、守ってあげられなかった……守ってあげられなかったの!」叔母さんは背中を優しくさすりながら、ぽんぽんと軽く叩いてくれた。「南、人と人との縁も、子どもとの縁も、巡り合わせなんだよ。あんたのせいじゃない。ただ今回は、その縁が少し足りなかっただけ」「私……本当に楽しみにしてたのに……」やっと、自分の家族を持てると思っていたのに。私は叔母さんの胸に顔をうずめたまま、どれくらい泣いただろう。泣き疲れてようやく呼吸が落ち着いてきた頃、叔母さんがそっと涙を拭ってくれた。「ちゃんと考えて、それでも離婚したいと思うなら、いいよ。叔母さんは味方だよ」「……うん」そのあとも叔母さんと長く話し込んで、無理やり400万を渡してから、ようやく席を立った。叔母さんは「ほとんど足りてる」と言っていたけれど、実際はそうじゃない。そもそも、あのとき叔母さんが私を家に連れ帰ってくれなかったら、私は飢え死にするか、凍え死ぬか、借金取りに殺されていたかもしれない。世の中には、返しきれない恩というものがある。病室を出ると、廊下の長椅子で横になっていた叔父さんが、さっと起き上がった。「それとさ、聖心病院にVIP病室ってあるだろ?叔母さんの病気はそう簡単に治らないだろうし、あそこのベッドは広いって聞いたから、俺もゆっくり休める。早く取ってきてくれよ」「……」私は言葉を失ったが、これ以上叔母さんと揉められても困るので、しぶしぶ「わかった」と答えた。離婚はまだ成立してないし、これまで江川の奥さんって立場で何か得したこともない。今さらVIP病室を取るくらい、悪くないだろう。ところが、VIP病
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