彼の顔に浮かんだ反応を見た瞬間、胸の奥から言いようのない快感が込み上げてきた。その感覚が私をさらに煽り、もっと言葉をぶつけたくなる。頭が少しぼんやりして、身体が熱を帯びているような気がした。けれど精神は極限まで研ぎ澄まされ、ただ吐き出したくてたまらなかった。漆黒の瞳を真っ直ぐに見据え、唇の端を吊り上げて、できる限り残酷に告げる。「そう――わかったのは、まだ5週目のとき。すごく小さくて、胎動なんてもちろん無いし、胎心だって確認できなかった。しかも切迫流産の兆候があって、その頃ずっとお腹が痛かったのは……妊娠していたからよ」宏は狼狽したように視線を泳がせ、かすれた声を漏らす。「……なぜ、言わなかった」「結婚3周年の日にわかったの。嬉しくてたまらなくて、早くあなたに知らせたくて……帰ってから3周年のキャンドルディナーを用意して、検査結果を手作りのケーキの中に忍ばせたの。あなたを驚かせたくて」「……ケーキなんて、見てない」「そうでしょうね。その日、あなたは私なんて眼中になかったもん」思い出して、口元に自嘲めいた笑みが浮かぶ。「アナに会いに行って、私がずっと欲しかったネックレスを自分の手で彼女の首に掛けてあげてた。私たちの記念日を忘れて、彼女の離婚を祝ってたのよ」「数日後、病院で再検査しようって誘ったのは……本当はあなたの手で赤ちゃんのエコー写真を受け取ってほしかったから」彼の表情が少しずつ崩れていくのを見ながら、私は淡々と続ける。「でもその朝、あなたはもう彼女のところへ行っていて……私ひとりで病院に行くしかなかった」「それから――健康診断の日も、本当はそのときに言おうと思ってた」「……悪かった、俺は……」「謝らないで」頬を伝った涙を乱暴に拭い、瞬きをひとつ。「その日、先生は言ったわ。赤ちゃんはとても順調で、もう小さな手も足も生えてきていて、元気そのものだって。……でも、あの日、アナに引きずられて起きた事故で、あの子は血の塊になってしまった」言えば言うほど、自分の痛みを共有できるのはこの男しかいないのだと思い知らされる。そして彼が苦しむほど、私の胸の痛みはわずかに和らいでいく。もう理性なんて残っていなかった。私はその心臓に、さらに深く刃を突き立てる。「本当は、あの子は助かったか
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