清墨は康史の到着を待ちきれなかった。彼は仲間を率いて、先に倉庫内へ潜入することに決めた。耳元では康史が必死に警告していた。「焦るな、焦りは禁物だ!」清墨には、すでに明確な作戦があった。「まずは高杉さんの支援に向かう」彼は低く指示を出した。今、輝明は第二防衛線に閉じ込められている。誰よりも焦ってるはずだ。あのテレビを通して綿の動きを見せられるなど、生殺しも同然だった。宏は、さすが裏社会で生き抜いてきた男だった。どうすれば人を焦らせ、どうすれば絶望させられるか、熟知していた。綿と嬌が一緒に縛られている。――それが、どれだけ人々の興味を煽る構図か、彼らはよくわかっていた。もし誘拐されたのが綿一人だけなら、世間の反応はただの憤りで終わったかもしれない。だが、そこに嬌も加わったとなれば話は別だ。どちらも、かつて輝明と関係のあった女たち――人々は怒りながらも、皮肉な好奇心を抑えきれないだろう。ただの事件が、どこか面白くなってしまうのだ。宏は輝明に話しかけた。「高杉さん、ちょっと二つ、質問してもいいか?」輝明は冷たい顔で、周囲を取り囲む男たちを睨んだ。彼らは全員、屈強な男たちだった。戦えば勝てるかもしれない。だが……彼らのポケットには銃がある。無謀な行動はできなかった。これらの男たちは命知らずだった。輝明には、まだ守るべき命があった。「綿と嬌が同時に水に落ちたら、どちらを救う?」宏は目を細め、笑いながら尋ねた。くだらない話題だった。だが、輝明は即座に答えた。「綿だ」その言葉を聞いた瞬間、嬌の心はぎゅっと締め付けられた。彼女は愚かだった。一瞬だけ、輝明が自分の名を呼ぶことを期待してしまったのだ。かつて、彼は確かに自分に優しかった。だが、その優しさは、もう跡形もなく消え失せていた。悪いのは、彼女だった。不誠実だったのも、大事にしなかったのも――あの頃、輝明が与えてくれた温もりを、ちゃんと受け止めなかったのは、彼女のほうだった。けれど、今や二人の関係がこんなふうになってしまったのは、本当に、彼女だけが悪いのだろうか?「じゃあ、もう一つ質問だ」宏はリモコンを手に弄びながら、続けた。「綿のためなら、なんでもするか?」輝明は眉をひそめた。この狂った男が、何をしでかすか分
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