突然、啓司が紗枝の手を握った。「教えてくれ。どうして戻ってきたんだ?」今の啓司は、紗枝がなぜ戻ってきたのかを思い出せていない。数日前に記憶を失っていたことさえ覚えていなかった。仕方なく、紗枝はもう一度、戻ってきた理由を彼に説明した。「......つまり、俺の子どもを連れて、五年間も姿を消してたってことか?」啓司はさらに問い詰めた。紗枝はもうこれ以上話したくなかった。「その話、前にもしたでしょ。もう話したくないの」けれど、啓司は手を離そうとせず、むしろさらに強く握りしめた。「紗枝......」紗枝は振り払おうとしたが、どうしても抜け出せなかった。「離してよ」啓司はそれでも離さず、逆に彼女の腰を抱き上げた。ふわっと体が浮いて、紗枝は驚きの声を上げた。「ちょっと、何してるの!?下ろして!」思わず怖くなって、彼の腕をぎゅっと掴んだ。「ちゃんと前見て!前にテーブルあるから、ぶつからないように気をつけて!」啓司は彼女の言葉どおり、テーブルを避けて歩いた。「寝室に行く。左でいいのか?それとも右?」寝室?紗枝は昨夜の出来事を思い出し、思わず彼の肩をつねった。「下ろしてってば!」でも、啓司は彼女がもう話したくないのだと察すると、何も言わずそのまま彼女を抱えて階段を上っていった。記憶の頼りを辿るように。「そこ、気をつけて!柱あるから!」紗枝の注意がなければ、おそらくぶつかっていただろう。やがて二人は部屋にたどり着いた。啓司はそのままベッドに倒れ込むようにして紗枝を抱きしめ、決して手を離そうとしなかった。「なんでだろう......この夢、やけに長く感じるんだ」「また夢だって言うの?もう夢じゃないって、何回言えばわかるのよ」紗枝が呆れながらも答えると、啓司はさらに彼女をぎゅっと抱きしめた。「紗枝......頭が痛い......すごく眠い......」紗枝は不安になり、急いで言った。「すぐにお医者さん呼んでくる!」そう言って立ち上がろうとしたが、啓司の腕に強く抱きしめられていて、動けなかった。「行ったら......もう戻ってこないんじゃないか......?」紗枝はどうしてもその腕から逃れられず、そのまま啓司に抱かれ続けるしかなかった。どれくらい時間が経ったのかわから
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