辰巳は厚かましくもこう言った。「彼女はいつかは必ず俺の奥さんになる人ですよ。先にそう呼んでおけば、結婚してからも自然に呼べるでしょう。理仁兄さんみたいにぎこちなくて、呼べないようじゃダメじゃないですか」唯花は笑った。「つまり、理仁さんを反面教師にでもしようってことね」「理仁兄さんの前例があるから、恋愛においてヘマしないように俺たちはできるんですよ」唯花「……」理仁が親しく名前で呼び始めたのはいつだったか?唯花はあまり覚えていなかった。恐らく彼女はその時あまり気にしていなかったのだろう。そうでなければ、覚えていないはずがない。唯花がそう思っていることを、あのヤキモチ焼き名人が知らなくてよかった。もし彼が知れば、きっと嫉妬の炎に包まれて、夜は一睡もできなくなってしまう。そして唯花はその場を離れた。彼女は一緒に事業を起こすパートナー二人のところへ戻っていった。姫華は明凛を連れて、親友である村瀬希を紹介していた。そこには希の従兄も一緒にいておしゃべりしていた。そこへ唯花が来たのを見て、姫華は彼女の腕を組んで希に言った。「希、この子が私の従妹の唯花よ。あの結城理仁を落とした子なの」姫華は無理だったが、従妹である唯花が見事理仁を虜にさせたのだ。姫華はそれを誇らしく思っていた。希は笑って言った。「若奥様のことはうかがっています。今夜初めてお会いしましたが、まるで女神が下界に降りてきたかのようですね。あの結城社長を虜にしたのも当然のことです」唯花も笑った。「村瀬さん、それは褒めすぎです。あなたが言うみたいにそこまでじゃないですよ。私と理仁さんは、誰が誰を落としたとかじゃなくて、お互いだんだんと惹かれ合っていったんです」その場にいたみんなが笑った。姫華に紹介されて、唯花と明凛は多くの令嬢たちと知り合いになった。それに多くの収穫もあった。今後の野菜や果物などの農作物の販売経路が大きく開かれたのだ。理仁は唯花を独占することはなく、彼女のしたいように自由に交流をさせていたが、実際は目を離すことなく、ずっと彼女のことを見守り続けていた。悟と彼は一緒にいて、理仁がまた唯花のほうを見ているのでこう言った。「社長夫人は生まれつきこの社交界に相応しい気質の人みたいだ。彼女は誰の前に立ってもまったく尻込みする様子がないよね。も
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