電話の向こうの理仁は明凛が叫ぶ声が聞こえ、彼もまたしきりに呼びかけた。「唯花、唯花!」姫華は唯花の携帯を拾い、電話越しに理仁に向って叫んだ。「結城さん、あなた唯花に何を言ったの?ねえ、唯月さん、一体どうしたのよ?」「神崎さん、唯花を送ってきてくれ。義姉さんは怪我をして病院で救命措置を受けているんだ。他のことは君たちが来てから話すよ」「唯月さんの怪我の具合は?」それを聞いて姫華は顔が青ざめた。姫華は唯月に何かがあって、唯花がショックを受けてこうなってしまったとわかっていたが、一体何が起こったのかは知らない。そしてこの時、理仁の話を聞いて、彼女も緊張し恐ろしくなった。姫華の母親は内海家のこの姉妹を目に入れても痛くないほど大切に思っているというのに。もし、唯月に何かがあれば、詩乃はショックを受けてどうなってしまうか想像もつかない。「俺も具体的にはわからない。ナイフで刺されて、今救命措置を受けている。俺はすでに病院に着いているんだ。神崎さん、牧野さんと一緒にすぐ唯花を連れて来てくれないだろうか。車の運転は気をつけて」理仁は今すぐ空を飛んで妻を迎えに行きたくてたまらなかった。しかし、この時彼はここから離れるわけにはいかない。唯月のもとには親族がいる必要がある。もし、転院する必要があるなら、彼がいれば迅速に決めることができるからだ。彼はそれを俊介に任せるわけにはいかない。「ええ、わかったわ。私たちすぐにそっちへ行くから。唯月さんには一番良いお医者さんを頼んで、いくらお金がかかってもいいから、絶対に唯月さんを助けてもらって!」姫華に言われるまでもなく、理仁は出来る限りのことを唯月にするつもりだ。その電話が終わった後、唯花はゆっくりと意識を取り戻した。目を覚ますと、運転席に這っていき、自ら運転しようとした。明凛と姫華がそれを死に物狂いで引き留めた。今彼女に運転させると、絶対に事故を起こしてしまうだろう。「お姉ちゃん!」唯花はハンドルに触れることができず、拳で激しく座席を叩きながら泣いていた。姉を失ってしまう!今の唯花には血の繋がりのある家族は姉しかいない。神様はどうしてそんな姉まで奪っていこうとするのか!父親と母親はすでに天国に旅立ってしまった。それでも足りず、姉にまで手を出そうというのか!
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