All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1391 - Chapter 1400

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第1391話

電話の向こうの理仁は明凛が叫ぶ声が聞こえ、彼もまたしきりに呼びかけた。「唯花、唯花!」姫華は唯花の携帯を拾い、電話越しに理仁に向って叫んだ。「結城さん、あなた唯花に何を言ったの?ねえ、唯月さん、一体どうしたのよ?」「神崎さん、唯花を送ってきてくれ。義姉さんは怪我をして病院で救命措置を受けているんだ。他のことは君たちが来てから話すよ」「唯月さんの怪我の具合は?」それを聞いて姫華は顔が青ざめた。姫華は唯月に何かがあって、唯花がショックを受けてこうなってしまったとわかっていたが、一体何が起こったのかは知らない。そしてこの時、理仁の話を聞いて、彼女も緊張し恐ろしくなった。姫華の母親は内海家のこの姉妹を目に入れても痛くないほど大切に思っているというのに。もし、唯月に何かがあれば、詩乃はショックを受けてどうなってしまうか想像もつかない。「俺も具体的にはわからない。ナイフで刺されて、今救命措置を受けている。俺はすでに病院に着いているんだ。神崎さん、牧野さんと一緒にすぐ唯花を連れて来てくれないだろうか。車の運転は気をつけて」理仁は今すぐ空を飛んで妻を迎えに行きたくてたまらなかった。しかし、この時彼はここから離れるわけにはいかない。唯月のもとには親族がいる必要がある。もし、転院する必要があるなら、彼がいれば迅速に決めることができるからだ。彼はそれを俊介に任せるわけにはいかない。「ええ、わかったわ。私たちすぐにそっちへ行くから。唯月さんには一番良いお医者さんを頼んで、いくらお金がかかってもいいから、絶対に唯月さんを助けてもらって!」姫華に言われるまでもなく、理仁は出来る限りのことを唯月にするつもりだ。その電話が終わった後、唯花はゆっくりと意識を取り戻した。目を覚ますと、運転席に這っていき、自ら運転しようとした。明凛と姫華がそれを死に物狂いで引き留めた。今彼女に運転させると、絶対に事故を起こしてしまうだろう。「お姉ちゃん!」唯花はハンドルに触れることができず、拳で激しく座席を叩きながら泣いていた。姉を失ってしまう!今の唯花には血の繋がりのある家族は姉しかいない。神様はどうしてそんな姉まで奪っていこうとするのか!父親と母親はすでに天国に旅立ってしまった。それでも足りず、姉にまで手を出そうというのか!
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第1392話

陽がさらわれた時、唯月と俊介が犯人に追いつけなかったとしても、理仁たちが配置していたボディーガードたちが陽を救い出すこともできたのだ。彼らは早くに包囲網を張り巡らしており、あの犯人を一網打尽にする予定だった。しかし、彼らは母親の子供を守る強さをうっかり見落としていたのだ。我が子のためなら、母親は自分の命さえも犠牲にしてしまう。もし子供がさらわれたら、母親は無意識にそれを追いかけるものだ。彼らもそれは想像できたが、まさか唯月が完全に犯人に追いついてしまえるとまでは思ってもいなかったのだ。彼女のあの体力は誰にも予想できなかった。そして最後まで、諦めることはなかった。男に激しく蹴られ、ナイフで刺されようとも、息子を抱く手を緩めることはなかった。彼女は結城家のボディーガードたちが現場に到着したのを確認し、もう安全だとわかってやっとその手を放した。そして彼女は重症を負ったが、陽には傷一つついていなかった。隼翔は後ろを向き、拳で壁を殴った。そう、隼翔自身も、部下を派遣して唯月親子の警護に当たっていたのだ。それでも唯月は怪我をしてしまった。隼翔も守ることができなかったのだ!この時、玲凰、詩乃と航が病院に駆けつけてきた。「結城社長、唯月さんの状況は?唯花さんには伝えたのか?」玲凰が尋ねた。詩乃は恐怖でしっかりと夫の手を握りしめていた。ようやく見つけ出した姪が自分の妹の後を追って天国に行ってしまうのではないかと恐ろしくてたまらなかったのだ。彼女は妹を数十年捜し続け、ようやく手がかりが掴めたと思いきや、その妹は十数年前に他界していることを知った。しかし、その妹の娘たち二人、つまり彼女の姪が健在であることが、彼女の心を慰めてくれた。もし、この姪まで……「まだ中にいて出てきていない。今どういう状況なのかはわからないんだ。唯花さんには伝えてある、今ここに来ている途中だ」玲凰はひとこと「そうか」と返事した。そして彼は母親に慰めの言葉をかけた。この時、莉奈もこっそりと来ていて、顔を真っ青にさせて静かに俊介と陽の隣に立っていた。あの時、警察のサイレンが鳴り響き、多くの警官が駆けつけてきたことがわかった。それに、理仁が指示を出し、裏で唯月親子二人を守っていたことも知ったのだった。彼女はあの犯人たちが陽を誘拐す
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第1393話

唯花の言葉を聞いて、詩乃も思わず涙を流し始めた。彼女は自分自身にそれを重ねていたのだ。当時、彼女と妹が児童養護施設に送られた時、姉妹二人だった。しかし、妹の手がかりが掴めたと思ったら、結局、彼女は一人ぼっちになってしまっていたのだ。たった一人の妹に最期一目会うことすら叶わなかった。理仁は唯花をぎゅっと抱きしめた。彼女の頼りになるように、少しでも心を落ち着かせてあげられるように。「唯花、義姉さんはきっと大丈夫だよ。すぐに目を覚ましてくれるから、心配しないで。あまり心配しないで。義姉さんが寝ている間は陽君の世話をしなくちゃ。陽君はかなりショックを受けているから」唯花はあまりの恐怖で涙を絶えずポロポロこぼしていて、理仁がいくら慰めの言葉をかけても効果はなかった。しかし、陽の話になると、彼女の泣き声はだんだんと落ち着いていった。そうだ、姉に代わって、陽の面倒を見る必要がある。暫く泣いて、唯花は気持ちを落ち着かせ、理仁からティッシュをもらって涙を拭き取った後、理仁の懐から離れてずっと俊介に抱きかかえられている陽のもとへと歩いていった。「おばたん」陽は彼女のほうへ両手を伸ばした。唯花は陽を抱き上げた。「唯花、本当にごめん」俊介はすごく後悔した様子で謝罪の言葉を述べた。全て自分のせいだ。あの時、自分が陽を抱きかかえていなかったし、唯月のところから陽を引っ張ってきてしまった。唯月にもしものことがあれば、一生自分を責めるだろうし、陽がもし誘拐されてしまっていたら、一生自分を責め続けていたはずだ。唯花は甥を抱いたまま、俊介に背を向け理仁のもとへ戻った。俊介のことは構いたくないのだ。俊介は自分のせいだと、責め続けていた。この時、佐々木母は何か言いたそうにしていたが、それを夫に止められた。こんな状況で彼らが何を言っても間違ってしまう。唯花は絶対に彼らの息子である俊介を恨んでいるはずだ。莉奈はさらに恐怖に襲われていた。彼女はできるだけ透明人間のように自分の気配を消そうとした。「おばたん、ママ死んじゃうの?」陽は恐怖で唯花に尋ねた。彼は母親が全身血まみれになっている様子を見たので、とても怖かったのだ。唯花は甥の頭を自分の懐によりかからせて、ぎゅっと力強くその震える小さな体を抱きしめた。そしてかす
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第1394話

唯月は重症患者の病室に入り、家族は毎日一度だけ中に入り様子を見ることが許された。病室の中で姉を見守ることはできなくても、唯花は病院を離れようとしなかった。彼女は病室の外で姉が目を覚ますのを待つことにした。姉は絶対に目を覚ます。その時、警察が病院にやって来た。みんなが数名の警察がやって来るのを見ていた。「すみません、成瀬莉奈という方はどなたですか?」先頭を歩いていた警察が尋ねた。するとその場にいた全員の視線が莉奈へと向かった。莉奈は恐る恐るそれに答えた。「私ですが」その警察が何か呟くと、すぐに二人の婦人警官が莉奈のところへ行き、彼女を連れていった。「すみません」俊介は慌てて彼らの行く手を阻んだ。佐々木父と母の二人も俊介の後ろに控えた。彼らは警察を見つめていた。「あの、うちの妻が何か罪を犯しましたか?彼女を連れて行くんですか?」俊介はまるで詰問するかのように尋ねた。「我々は成瀬莉奈が今回の子供の誘拐事件に関わっていると睨んでいます。彼女には警察署に来てもらって、事情聴取を受けていただきます」その瞬間、莉奈の顔はサーっと血の気を失っていった。両足の力が抜けしっかりと立っていられなくなってしまった。もし二人の警察が彼女を支えていなければ、床に倒れ込んでいたことだろう。彼女は信じられなかった。あの事件が起きて数時間で、警察が彼女を捕まえに来たのだ。あの名前の知らない女が遣わした男たちが警察の手に渡ったのだろうか?それで彼らが彼女のことを話したのか?陽がさらわれた時、彼女は犯人側には多くの人間がいて、唯月が陽をさらった男を追いかける邪魔をしているのを見た。その中には唯月の味方もいたが、お互いに取っ組み合いになり、あの場はかなり混乱していた。それに数人が必死になって唯月を追いかけていた。彼女はその時、その数人が唯月に「内海様」と叫ぶのをはっきりと聞いた。彼らは悪者ではなく、唯月を助けに来た人たちだろう。間違いでなければ、きっと結城理仁が手配した者だ。莉奈はその時、ようやく結城理仁が人を遣わし、ずっと裏で唯月親子を守っていたことに気づいたのだ。唯月は陽の実の母親だ。女性にどれほどの潜在能力があるのかは、我が子に何かあった時に、それがわかる。結城家のボディーガードはしっかりと訓練を
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第1395話

「この女は佐々木家がこの代で終わるように陽ちゃんを殺そうとしたんだ!そして唯月さんも!この毒女!人として終わってるよ!」佐々木母は声が枯れるほど怒声を上げていた。今回の件に、もし成瀬莉奈が関わっているとするなら、前回彼ら一家で動物園に遊びに行った時に起きた事件も偶然ではなかったということになる。これは成瀬莉奈が計画した悪質な事件なのだ。この女、どうしてここまで腐っているのか!恭弥と陽の二人の孫を連れ去ろうとしたのだ。唯花は莉奈がこの件に関わっているという内容を聞いて、陽を理仁の懐に抱かせて、莉奈を殴ってやろうと思った。「唯花」その時、理仁は唯花の手を引き言った。「法に則ってあの女に刑罰を与えるべきだ。君は手を出さないほうがいい」ここへはすでに警察も来たのだから、彼らがこれ以上莉奈に教訓を与えるようなことをする必要はないだろう。九条弦のところに確かな証拠があるのだから、莉奈も罪を免れることはできない。少なくとも数年は刑務所で過ごすことになるだろう。柴尾加奈子が父親として慕っていたあのヤクザのボスの手下たちが捕まれば、奴らは前科持ちであるから、さらに重い刑罰を受けることになる。彼らは全て暴力団関係者なのだからだ。そうすれば柴尾加奈子も逃げることなどできなくなる。実際、警察は二手に分かれていた。片方は病院へ成瀬莉奈を連行し事情聴取するため、もう片方はもちろん柴尾邸へ向かっている。柴尾加奈子の手下たちは、結城、九条、東、三家の力によって、今回は逃げることはできず、全て法に裁かれることになる。陽を連れ去るために、今回加奈子もかなり追いつめられた状態だった。それで夫に何も相談することなく多くの人員を導入して今回の陰謀を計画したのだった。しかし、その中に含まれていたのは金で雇った不良たちも混ざっていた。咲も言っていたが、加奈子がかなり焦った時には、もうなりふり構わず何でもやってのけてしまうのだ。もちろん、このことを柴尾社長が知れば、きっと血を吐く思いだろう。衝動に走ってしまった妻をひどく叱りつけるはずだ。娘の鈴は彼女と同じように衝動的に行動してしまい、刑務所に入れられてしまったのだ。結局、自分の妻もこのような行動に出てしまった。妻が刑務所に入ることになればおとなしく入っていればいい。それと同時にこ
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第1396話

これは唯花がある人を怒らせ、その人物が唯花に復讐するために、莉奈に陽を利用させるような事態に追いやったのだ。あの名前も知らない女は、陽が自分のもとに来て言うことを聞き、騒ぐことがなければ絶対に手を出さないと言っていた。唯花がその女に会いに行けば、陽は無事に帰してやると。陽は髪の毛一本傷つくことはないのだ。それがまさか陽を救うために唯月が怪我をしてしまうとは莉奈も予想できるわけないだろう。そもそも、そこまでしなくても陽が傷つくことはなかったのに?俊介はその場に立ったまま、ぶつぶつと呟いていた。「どうして莉奈が、どうして莉奈なんだ……どうして」「俊介!」この時、佐々木父が大声でそう一喝した。そして平手打ちを食らわせた大きな音がその場に響いた。その場にいた全員がその光景を見ていたが、誰も止める者はいなかった。「お前のせいだ。お前があんな人でなしをうちに連れて来た。あの女がお前の結婚生活をめちゃくちゃにして、静かに暮らしていた我々に厄介事を持ってきやがった。陽君の親権は唯月さんに渡し、陽君にまでこのようなひどい真似をしたんだぞ。あの毒女め……お前だ、お前の女を見る目がなかったんだよ!」佐々木父は息子を指さして大声で怒鳴りつけた。俊介は父親から一発殴られても、何も言う勇気はなかった。彼はぶたれた頬に手を当てて、両親の顔を見ることもできなかった。彼自身も、まさかこんなことになろうとは思ってもいなかった。彼も、まさか莉奈が陽にこのような手を使うとは思っていなかったのだ。陽を唯月に渡してしまい、もし彼らが陽に会いに行かなければ、唯月親子は絶対に彼らの前に現れることはない。全く彼らの暮らしに影響が及ぶことはなかったというのに。莉奈はどうしてこのようなことをしてしまったのだろうか。陽がいるから、彼が唯月とまた気持ちを取り戻して、再婚するかもしれないと恐れていたのか?それなら莉奈はあまりにも唯月のことを見くびっている。唯月は彼と離婚したからには、絶対に後悔するようなことはないのだ。唯月の今の暮らしがどんどん良くなっていて、彼が惨めな暮らしをし始めたからだけではない。彼らが逆の立場になり、唯月の暮らしがどんどん悪くなっていったとしても、彼女は絶対に後悔して彼に付き纏い邪魔をしてくるようなことなどないのだ。立派な
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第1397話

暫くして、佐々木母は唯花の前にやってきた。唯花に抱かれている陽を見て、彼女は手を伸ばし孫を撫でたいと思った。しかしその手を途中で止めて引っ込め、申し訳なさそうに唯花に言った。「唯花さん、ごめんなさい。佐々木家は運が悪くてあんなとんでもない女を嫁にしてしまって、お姉さんをこんな目に遭わせちゃったわ」唯花は冷たく彼女を見つめた。警察が莉奈を連行し、唯花は一体どういうことなのかはっきりわかるわけではないが、だいたいのことは予想がついた。「うちのお姉ちゃんは佐々木さんとは離婚して、新しい人生をスタートさせてるわ。陽ちゃんだって、お姉ちゃんがしっかし育ててる。だから、あんた達佐々木家は今後お姉ちゃんに近づかないでもらえるかしら。お姉ちゃんは今まで一度たりとも佐々木さんと復縁したいと思ったことないから。あの成瀬って女は憎いけど、あんた達も同じように憎いんだから!」佐々木母は非常に恥ずかしく思い顔を下に向けた。そうだ、佐々木家も同じように憎むべき存在なのだ。佐々木母は、唯月姉妹には金持ちの伯母の存在があり、唯花があの財閥家の結城理仁と結婚したことがわかってから、どうにかして息子と莉奈を離婚させて唯月と再婚させたいと思っていた。成瀬莉奈は憎しみから陽にその牙を向けてきたのだ。「あんた達の顔も見たくない、お願いだから、今すぐここから消えてよ」警察が莉奈だけを連れて行った時、唯花は佐々木家はこの件に関わっていないとわかった。陽はなんといっても彼らにとって実の孫であるには変わらないのだ。佐々木母は恭弥のほうに気持ちが寄っているが、陽のこともやはり気にしているのだ。絶対に悪者と結託して陽を連れ去ろうなどと考えない。佐々木家は関係ないと言えども、唯花はこの時彼らの顔も見たくなかった。「唯花さん、私たちが今何を言ったってどうしようもないってわかってるけど、私たちも本当にあなたのお姉さんを心配しているんだよ。お姉さんの目が覚めたら、図々しく会えるなんて思ってないから、メッセージを送って無事なことを教えてくれたらいいわ」唯花は厳しい顔つきで何も言わなかった。佐々木母は再び謝った後、唯花たちに背を向けて夫と一緒に病院を離れた。俊介はここに残っていたかったが、両親に引っ張られる形で去っていった。佐々木一家がいなくなってから、唯花は理仁に尋ねた
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第1398話

「母さん」この時、玲凰と姫華が同時に呼んだ。航も妻がここに残るのには反対で言った。「私たちが病院にいても何もできないんだから、みんな帰って休もう。まだ処理が終わっていないことを片付けないと」「だって心配なんだもの!」この時、嗚咽交じりの声で詩乃がそう言った。唯花が姉をとても心配しているように、詩乃は姪のことをとても心配している。彼女たち二人の気持ちは同じなのだ。「伯母様、あなた達は帰ってお休みください。お姉ちゃんが起きたら、すぐに連絡しますから」唯花も伯母に家に帰るように言った。詩乃もそんなに若くないから疲労を溜めるのは体に良くない。周りから説得されて、詩乃はようやく帰っていった。最後に、理仁と唯花夫妻、そして隼翔が病院に残った。「隼翔、お前と悟には他にやってもらいたいことがたくさんあるんだ。安心しろ、義姉さんが目を覚ましたら、すぐにお前に伝えるから」親友も唯月のことをとても心配しているのがわかっていて、理仁は隼翔の肩を軽く叩いて言った。「最後の後始末は、お前と悟に頼むよ」隼翔は重症患者の病室を見つめ、唯月の傍についていたいと強く思っていた。しかし、彼女が病室の中にいて、妹の唯花も姉の様子を見に中にいることができないのだから、彼がここにいたところで何もできないだろう。暫く黙っていて、彼は陽のほうを見た。この時、陽はすでに唯花の懐に抱かれて寝ていた。ぐっすりと眠っていて、小さな両手で無意識にぎゅっと唯花の服を掴んでいた。今日起きたことは、三歳の幼い子供にとって、大きな心理的な傷を植え付けることになるだろう。隼翔もそんな陽を見つめ心が痛んだ。「何かあったら、俺に連絡してくれ。先にこの件の処理に向かう」「ああ」隼翔は深く息を吸い込み、再び病室を見つめ、それから彼らに背を向けて去っていった。唯月親子が今後安全に、一般人と同じようにずっと暮らしていけるように、今回のような事件が起きる心配などしなくていいように、彼らは完全に根から全てを取り除かなければならないのだ。理仁はボディガードにテイクアウトで食事を持ってくるよう伝え、運転手に電話をかけた。彼にキャンピングカーを病院まで運転してくるように頼んだのだ。そうすれば唯花が陽に食事を作るのに便利だからだ。彼らに指示を出し終わり、理仁は唯花の傍に
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第1399話

唯花は彼のほうへ顔を傾けて尋ねた。「あなた達事前に相談してたの?じゃ、前から相手の陰謀に気づいていて、わざと陽ちゃんを餌におびき出すつもりだったの?」「違う!」それを聞いて理仁は慌てて否定した。「九条家がずっと柴尾夫人の一挙一動を見張っていた。そして今日、彼女の様子がおかしいことに気づいて、俺と隼翔に連絡してきたんだ。それで俺たちは義姉さんと陽君の警護を増強させたんだ。理仁は説明した。「あいつらが陽君を連れ去っても、俺たちは絶対に救い出すことができたんだ。ただ、母親が我が子を守ろうとするその力がそこまで強いとは考慮してなかったんだ。義姉さんはうちのボディガードたちよりも早く犯人に追いついていった。ボディガードが追いつくまでの数分の間に義姉さんはこんなことに」唯花は不安そうに寝ている陽のほうへ視線を落とし、目を赤くさせて言った。「陽ちゃんはお姉ちゃんが十か月お腹の中で大切に育てて産んだ子だもの、お姉ちゃんの命と同じよ。裏で自分たちが守られていて、陽ちゃんが必ず助け出されるってことを知っていたとしても、母親として、きっとがむしゃらに犯人を追いかけて、陽ちゃんを救おうとしたはずよ。理仁は自分を責めた。「俺たちの力不足のせいでもある」唯花は片手で涙を拭いた。「成瀬が利用されてるって、どうしてお姉ちゃんに注意しておかなかったの?」「義姉さんは知っていたよ。俺よりも先に義姉さんが成瀬のことを疑い始めたんだ。電話をして俺に教えてくれた。彼女があの女のことを怪しいと思ったから、今日は佐々木夫婦に絶対について行って、陽君を佐々木俊介たちだけと一緒にさせなかったんだよ」唯花「……お姉ちゃん、どうしてそれを私に教えてくれなかったのかしら」理仁はそれにどう答えたらいいのかわからなかった。唯月が唯花に伝えなかったということは、彼女なりの理由があったのだろう。しかし、理仁はそれを知らないのだ。「九条さんのほうに証拠があるんだよね?」「証拠なら、弦さんのところにあるよ」「証拠があるのに、どうして警察に通報しなかったの?」唯花は尋ねた。理仁は少し黙ってから言った。「柴尾夫人の手下どもは、散り散りになっている。一人を捕まえようと思っても草の根をかき分けて見つけ出す感じだ。この間の動物園での事件があった後、君と義姉さんには、偶然あんなこと
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第1400話

「唯花ちゃん、唯月さんの様子はどう?奏汰と一緒に出張に行ってそんなに経っていないというのに、こんな大ごとになるだなんて」唯花に電話をしてきたのは結城おばあさんだった。おばあさんは奏汰と一緒に柏浜まで出張に行っていて、さっき唯月が負傷したという知らせを受けたばかりだった。「おばあちゃん……」おばあさんの声を聞くと、さっき泣き止んでばかりの唯花はまた涙が溢れてきた。泣き声になって「おばあちゃん、お姉ちゃんが怪我しちゃったの」と伝えた。「唯花ちゃん、泣かないで、今お姉さんの様子はどうなのか教えてくれる?今星城に帰っているところよ、心配しないで、この世の終わりが来たって、おばあちゃんがあなた達を守ってあげるんだから」おばあさんは唯月が負傷したという知らせを受けると、奏汰の恋愛の機会を作ってやっている場合ではなくなり、急いで星城への帰路についていた。奏汰の仕事もだいたい終わらせていて、おばあさん一人で帰らせるのは安心できなかったので、まだ終わっていない仕事は別の人に任せて、彼女と一緒に星城に戻っていた。「お医者さんは、今のところ危険な状態からは抜け出たけど、重症患者用の病室で数日過ごす必要があるって。数日お姉ちゃんに急変がなければ、もう大丈夫なんだって」「どこの病院にいるの?」おばあさんが尋ねた。唯花は今いる病院をおばあさんに伝えた。おばあさんは言った。「その病院なら問題ないわ。安心して、お姉さんは絶対に元気になるから。もし必要なら、おばあちゃんがコネ使って腕の良いお医者さんに診てもらうから。安心してね。もう泣かないで、おばあちゃんはね、今そっちに向かう途中なのよ。おばあちゃんがいれば、何も怖いことないんだから、心配しないのよ。おばあちゃんは人の運勢が見えるんだから。あなた達姉妹の運勢なら前見たことがあるの、あなた達は幸運の持ち主よ。ただ、最初は苦労するけど、後はとっても幸せになれるんだから」おばあさんは孫の嫁を安心させるために、運勢が見える話まで持ち出してきた。おばあさんに慰められて、不安でソワソワし続けていた唯花の心はだんだんと落ち着いていった。唯花自身も姉はとても幸運を持っている人で、長生きするのだと思っていた。そして理仁にかかってきた電話は母親からのだった。麗華は電話越しに唯月の具合と陽の様子を尋
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