悟は言った。「警備員たちはみんな明凛と社長夫人が乗っている車を覚えているからね。君が来て会社に入っていかなかったら、連絡が俺のところに来るんだ。会社に来たのに俺に会いに入ってこないから、俺が何かやらかしたのかと心配になって慌てて手元の仕事を放って、転げ落ちそうになりながらフルスピードで走って来たんだからな」その言葉に明凛はたまらず吹き出した。ボディーガードすらも笑いをこらえることができなかった。しかし、悟の妻のように思いっきり笑うことはできない。顔をそむけてこっそりと笑っていた。「なんだか私が悪者みたいじゃないの。何が転げ落ちるようによ、走ってくるのは見えたけど転げるほどじゃないでしょ。そんなふうに言うなら、今から車を降りてその様子を見せてごらんなさいよ」悟が言った。「妻からのリクエストとあれば、早速降りてお見せしましょう」そう言いながら、彼は本当に車を降りようとした。そこへ明凛が彼の手を掴み、引き戻して、ぶつくさと言った。「本気にしないでよね、ただの冗談に決まってるでしょ」悟はケラケラと笑った。「君に楽しんでもらうことこそ重要だって言っただろ。君のリクエストならどんな事だってやってみせる」口ではそう言いながら、彼はすでに座席にしっかり座り、ほっとため息をついた。「やっぱりエアコンは気持ちいいな。会社から出てあの距離でもめっちゃ暑くて死にそうだったよ」「建設現場の人たち、こんな暑い日に外で働いてるなんてね」「まったくだな、工事の人たちは夏場は本当に大変だよ。そういえば、理仁ん家に行って親友には会えなかったの?」明凛は首を横に振った。「ええ、唯花ったらまったく、昨日帰ってきたんなら私に教えてくれればいいのに。今朝あの子がフラワーガーデンの一階で写真撮ってSNSにアップしてたの。それを見て帰ってきてることに気づいたのよ」昨日あちこちにめでたい知らせを伝えまくっていたのは理仁だった。唯花の邪魔になるのを気にせず連絡できる人も家族や友人たちだけだ。みんな彼女が星城に帰っていることは知らず、ただLINEでおめでとうのメッセージを送っただけだった。明凛は唯花のおめでたを聞いて、自分が妊娠した時よりも喜んでいた。昨日の午後から唯花へのお祝いを準備し始めて、唯花が音濱岳から帰って来たら、家まで持って行こうと思っていた。明凛
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