麗華は結婚してから、夫から今までずっと愛され続け、三十数年を過ごしてきた。そして、今でも夫の中ではこの妻は最も重要な位置を占めている。少し黙ってから、麗華は息子に言った。「どうしたの?私があなたの奥さんは家事をさぼってあなたにご飯を作らせてるって責めるのが怖いの?あなたが出張から帰ってからすぐ会社に戻ってきたのは言うまでもないし、あなた数日間風邪で寝込んでいたんでしょ、ようやく体調が良くなったのに、彼女ったらあなたに食事を作らせるなんて。お母さんは別にあなたに奥さんを大事にするなと言ってるわけじゃないのよ。ただあまりに甘やかしすぎたら駄目じゃないの。そんなことして彼女があぐらをかいて、わがままになったらどうするの。あなたの身分を笠に着て、外で偉そうに威張り散らしたり、余計な問題を起こしたり、軽はずみな行動をし始めるかもしれないわよ」それを聞いた理仁の顔色は一気に暗くなった。「はいはい、わかったわよ。お母さんもう彼女の悪口は言わないから。あなたのその顔、私はただちょっと注意しただけなのに。別に私がさっき言ったみたいに彼女が変わったっていう話じゃないでしょ、なのにそんな怖い顔しちゃって、すごい鬼の形相よ、あなた」麗華は、唯花が結城家があの財閥家だと知ったら、すぐに態度をガラリと変えて、狂ったように自分の身分を笠に着て自由勝手な振舞いをし、息子がその後処理にまわる羽目になるのではないかと心配しているのだ。それを少しだけ注意しただけなのに、結果息子はそれが面白くなかったらしく、端正なあの顔を不機嫌そうにしてしまった。「母さん、唯花さんとはあまり関わったことがないのに、どうして彼女がどんな人間かわかるって言うんだ?だけど、息子の俺の人を見る目はどうか母さんも知ってるはずだ。彼女は決して権力を振りかざして人をいじめるようなタイプじゃないよ」内海姉妹は神崎夫人という金も権力もある伯母ができたのに、やはり以前のまま控えめな態度でいる。ただ上流社会の世界に生きる人だけが姉妹が神崎家の姪であることを知っていて、一般世間は何も知らないのだ。いや、佐々木家は知っているのだが。俊介の両親と姉は、今頃きっと悔しさで腸が煮えくり返っていることだろう。彼がちょっと圧力をかけるだけで、佐々木家はすぐに仕事を失うことになる。その時には佐々木家の面々はさら
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