All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 841 - Chapter 850

神崎玲凰に家まで来させるわけにはいかなかった。玲凰は理仁が唯花の自由を奪っていることを知らない。恐らく唯花も玲凰に助けを求めようとも考えが及んでいないはずだ。もし、玲凰が理仁に会いに来たら、現状がばれてしまう。他の人間であれば、理仁もどうでもよかった。しかし、神崎詩乃と玲凰の親子は軽視することなどできない。しかも詩乃は唯花の実の伯母である。彼女は唯花の親族で年長者なのだ。だから唯花を自由にさせる理由も資格も詩乃にはあるのだ。「わかった、神崎社長にはそう伝えておく」悟はそう言い終わるとすぐに電話を切ってしまった。もしこれ以上ちんたらしていたら、理仁がまた彼にどうすればいいか尋ね始めるかもしれないからだ。悟の意見を俺様の理仁が聞き入れるわけもないのだから、どうしろというのだ？理仁はそれからすぐに瑞雲山邸を後にした。彼は渡辺に唯花に朝食をしっかり食べさせるよう伝言を残した。彼がいない隙に唯花が逃げ出すのを防ぐために、ボディーガードの半分を屋敷に残していた。そして四十分後。結城グループの社長室。理仁と玲凰はちょうど同じくらいのタイミングでオフィスにやって来た。理仁はオフィスのデスクまでまっすぐと歩いて行き、黒の社長椅子に腰かけた。玲凰はその後ろに続き、遠慮せず勝手に理仁の前を陣取った。秘書の木村が二人に温かいお茶を持って邪魔にならないよう、そっと入ってくると、また黒子のようにササッと部屋を出ていった。この二人の社長の表情はとても恐ろしく、悟でさえも彼らに混じろうとしないくらいだ。ならばただの秘書である木村がさらに長居はしたくないのは当然だ。「おい、結城、俺がこの間言った話を、てめぇ聞こえてなかったのか？姫華がまだお前に対する気持ちを整理しきれてないってのに、内海さんに全て打ち明けるとは、お前ら姫華の気持ちを考えたことがあんのか？姫華は明日帰って来る。あいつが仲の良い従妹が自分の恋敵で愛する男を奪っていっただなんて知ったら、発狂しちまうだろうがよ」この時の玲凰はものすごい剣幕で怒っていた。口調も格別に遠慮なしだった。理仁が自分の正体を暴露してから、唯花がどのような反応をしたのかは全くニュースにはなっていなかった。玲凰も唯花に連絡してみようと思ったのだが、彼女の携帯は電源が切れていて、唯花が記者たち

「もしこれが二か月前のことなら、俺も彼女は躊躇することもなく、さっさと離婚していたと思うが、今は状況が違うだろ。今の彼女はそんなにあっさり離婚を決めて去っていくことはないと思うぞ。一度誰かを好きになったら、そう簡単にその気持ちを捨てられないはずさ」そして少し黙って、悟は少し面白そうに尋ねた。「彼女、妊娠したか？」理仁「……まだだ」彼らは特別に避妊をしてはいなかったし、彼もかなり頑張ってはいたが、それでもコウノトリはまだ訪れて来ない。もしかしたら、子供を授かるにはまだ機が熟していないのかもしれない。「子供で繋ぎとめることができないなら、もうあとは自分でどうにかするしかないな。理仁、君だってバカじゃないんだ、こうなってから君が彼女にやってきたことは本能的な自己防衛反応だ。自分に問いかけてみろ、もし君が内海さんだったとして、ずっと騙され続けてきた挙句、閉じ込められて、首の後ろに手刀入れられたら、どんな気持ちになるか？今はもう君が彼女を騙したかどうかの問題じゃないんだ。それはもう過ぎたことなんだよ。重要なのは、お前が過ちを犯した後どうするかだ。今君のその後の行為が内海さんを苦しめているんだ。彼女が離婚したがってるからって怖がって、このまま彼女を閉じ込めておけば、その運命から逃れることができるのか？この行為はな、ただ君と彼女の間の溝をもっともっと深くさせるだけだぞ。これ以上彼女を軟禁するのはよせ。数日お互いに離れて冷静になるんだ。君も一旦心を落ち着かせてよく考えてみろ。これから内海さんにどのように接すれば彼女からまた信頼してもらえるかをね。だってさ、ずっとこんなふうに騙し続けてきたんだから、今や彼女の君に対する信用度はゼロだぞ。彼女も冷静になってから、やっと君の良いところが思い出せるんだ。今まで君と過ごしてきた日々をね。それに、彼女は毎回困った時に君がいつも傍にいて助けてくれたことにまた気づくだろう。これって君たち夫婦が一緒に過ごしてきた積み重ねだろ。彼女が君の良いところを思い返せるくらいまで落ち着いたら、君は彼女の信頼回復に努めるんだ。そうすれば、この氷は一気に溶け始めるだろう。それがずっと彼女を軟禁したままだと、ずっと君の悪いところしか見えなくて騙されたことをひたすら思い出すだけだ。そんな負の感情しかないから、君が彼女のためにやって

理仁はちらりと木村が抱えている書類の山を見て言いつけた。「辰巳のところに持っていって、処理してもらってくれ。もし辰巳が決められないことなら、おばあ様のところへ行くよう伝えてくれるか。ついでに、最近は俺が会社に来るのは少なくなるはずだ。あいつも結城家の男だから、一族の事業の重荷を負担するべきだとも伝えてくれ」木村はそれに頷いた。社長は仕事を放り出して、全身全霊で奥様をなだめにいくのだろうか？理仁はそう木村に指示を出すと、サッとエレベーターのほうへと歩いていった。数分後、理仁は専用車で結城グループを離れた。それと同じ頃、木村のほうも副社長室をノックし、理仁の伝言を辰巳に伝えた。辰巳は木村が抱えてる書類の山を見て、顔をこわばらせながら言った。「ここに置いといて、後で処理したらまた連絡するよ」「ありがとうございます、副社長」「そうだ、社長が最近はあまり会社に来られないそうです。『結城家の男だから、一族の事業の重荷を負担するべきだ』と副社長に伝えるよう言われました」辰巳は理解して言った。「わかった、お前は自分の仕事を続けてくれ」彼は言われる前に、すでにこの予感がしていた。理仁は再び愛する女性の気持ちを取り戻さなければならないので、会社の責任を彼に負わせるとわかっていたのだ。兄弟、従兄弟たちは全部で九人いる。彼と理仁は本社の中心人物で、他の男たちは子会社を経営している。ホテルの運営をしている者もいれば、一族が経営する会社以外で活躍している者もいる。つまり自分の会社を経営しているのだ。今理仁には時間がないのだから、彼がトップに立って会社を引っ張るしかない。こんなことなら独身を卒業しておけばよかった。今おばあさんは至る所で彼に相応しい女性を探しまわっているらしいが……辰巳は身震いがした。理仁が愛に囚われるようになってから冷静さを失ってしまったので、彼はやはりそんなことになるくらいなら、独身でいたほうがマシだと思った。もし、いつの日か本当に結婚することになったら、辰巳は正直に相手に対して彼が結城家の人間だということを伝え、理仁のように隠すようなことはしない。今では理仁が結城家の若い世代にとって、反面教師となってくれたから、彼らが恋愛をする時には、絶対に正直に誠実に相手と接し、少しも女性を騙すようなことはしては

もしこれからもずっと軟禁生活を送らされることになれば、彼女は精神崩壊を起こしてしまうだろう。それが理仁がようやく考えを改めて、彼女を解放すると決めてくれたおかげでそうならずに済んだ。「おじたん」陽は叔母に抱っこされながら理仁のほうを見て、嬉しそうに彼のほうへ両手を伸ばし抱っこをおねだりしてきた。理仁は陽の期待に応えるため、彼を抱き上げた。「たかい、たかい。おじたん、たかいたかいして」理仁が笑って陽を高く上にあげると、陽はキャキャッと嬉しそうに声をあげて笑った。「このトラックの中って……」唯月が尋ね終わる前に理仁が口を開いた。「義姉さん、唯花さんが小鳥を飼いたがっていたので、牧野さんが買ってきてくれたんです。渡辺に唯花さんをうちの果樹園にある温室に連れて行かせて、小鳥たちをそこで放し飼いしようかと考えていたところなんですが」唯月は妹を疑惑の眼差しで見つめて言った。「特に理由もなく、どうしてこんなにたくさんの小鳥を飼おうだなんて思ったのよ？」唯花「……もう買ってきちゃったことだし、どのみちどこかで飼わないといけないわ」唯月は妹を見た後、理仁のほうを見て、妹がふざけた真似をしようとしていたことがわかった。……しかし、何か見落としているような。さっき理仁は何と言っていた？執事に唯花を彼の家にある果樹園の温室へ連れて行ってもらうと？これは唯花を自由にさせるということか？「結城さん、私は行かないわ。渡辺さんと運転手さんでお宅の果樹園に行ってもらって。お姉ちゃんが来たことだし、ちょうど一緒に帰ろうと思うの」理仁は優しく言った。「君のしたいようにしたらいいよ」彼は意見はなかった。唯花は理仁からまた陽を抱き上げると、姉と親友に言った。「お姉ちゃん、明凛、行きましょ」「あ、うん」明凛と唯月は歩きながら後ろを振り返って理仁を見ていた。唯花は陽を抱っこしたまま車の前まで来てドアを開け、陽を座らせて自分も車に乗り込もうとした。「唯花さん」突然理仁が彼女を呼び止めた。三人はこの瞬間ギクリとした。特に唯花だ。彼女は自分が呼び止められたことに理仁が後悔してさっきの言葉を撤回するのではないかと思ったのだ。だから急いでここから逃れなければ、そう思い彼女は急いで運転席のドアを開けたが、乗り込む前に理仁に腕を掴まれて引

渡辺は恭しい態度で彼に応え、また心配になってこう言った。「若旦那様、外は風が強くて冷えますから、中に入りましょう。今朝起きられてから、まだ何も口にされていらっしゃらないでしょう」理仁はその場に立ったまま動かず、渡辺に尋ねた。「もし俺が何も食べず気を失ったら、妻は戻ってきてくれるだろうか？」渡辺「……」理仁は自嘲する笑みを浮かべた。「ただ適当に言っただけだ。自分の体を傷つけるような冗談は言わないさ。俺はまだ唯花さんとの間に子供を作って白髪になるまで一緒に生きないといけないんだからな。何も食べずにいたら、それもできずに後悔するだけだ」渡辺は急いで言った。「若奥様はお食事されたい時にされます。若奥様のような気持ちの持ち方というのは素晴らしいことだと思いますよ」彼がわざと何も食べずに気を失っても、若奥様のほうが情けをかけず戻って来てくれなかったら、若旦那様は飢え死にする気なのだろうか？「彼女は……俺のようには、そこまで愛してくれていないからな」だから、彼女は情け容赦ないことだってできるのだ。「七瀬」理仁は低い声で彼を呼んだ。七瀬はすぐに小走りに彼の元へやってきた。「車を手配してくれ。数日琴ヶ丘に帰る」「かしこまりました」七瀬は急いで運転手に連絡をした。数分後、理仁のあの高級車の列が瑞雲山邸から出発し、勢いよく琴ヶ丘邸へと向かっていった。琴ヶ丘邸の中心部にある庭の東屋で、おばあさんが使用人にコーヒーを淹れさせていた。麗華はおばあさんに言った。「お義母さん、年も召されて睡眠もあまり良くないのに、コーヒーを飲まれるなんて、余計に眠れなくなってしまいますわよ」「私はコーヒーは効かないわ。そうじゃなくて、理仁たち夫婦のせいよ」おばあさんはコーヒーを二口飲んだ。「ちょっと頭をすっきりさせて、あの子たちをどうフォローしてあげるか考えないと」麗華は言った。「お義母さん、こんなことになってしまったのに、まだ何かしてあげるおつもりですか？あの二人、自分たちで解決させましょうよ。理仁と唯花さんが今こうなったのも、お義母さんが原因でしょう。私はずっと唯花さんは理仁とは住む世界が違うと思っていたのです。そんな二人を無理やり同じ世界に溶け込ませようとするべきではありませんよ。こんな日が来るのはわかっていたことです。待ってて