和泉夕子は空港を後にし、結婚前の別荘に戻ると、机に向かい、霜村冷司とこれからのことを考え始めた。なかなか良い考えが浮かばず、相川涼介にメッセージを送って住所が見つかったかどうか尋ねると、まだ見つかっていないと返事が来た。時間は経てば経つほど、霜村冷司が危険な状況に陥るような気がした。特に大野佑欣の事件を経験した後は、不安で仕方がない。しかし、大野佑欣よりは冷静さを保てている。色々な経験をしてきたことで、以前よりずっと辛いことにも耐えられるようになっていた。和泉夕子が机に向かってぼんやりしていると、ドアをノックする音が聞こえた。如月家の三兄弟が彼女を訪ねてきて、考えがまとまったかどうか尋ねてきた。和泉夕子はやはり前の提案を断った。彼らもそれ以上何も言わず、ゆっくり休むようにとだけ言った。ところが翌日、ブランド品や栄養ドリンクなど、あらゆる贈り物が届けられた。如月圭一の妻まで訪ねてきて、自ら妊婦用の食事を作ってくれた。如月圭一との子どもまで連れてきて、和泉夕子の気を紛らわせてくれた。とにかく熱心で、和泉夕子は断りたくても断りづらい状況だった。和泉夕子が迷っていると、如月尭が自らやって来た。他の者たちのように贈り物をするのではなく、如月家の株券を持参したのだ。彼は初対面の時と同じように、白い髪に白いスーツ姿で、どう見ても若々しく、70歳を過ぎているとは思えないほどだった。威厳があり、矍鑠としていて、それでいて威圧感もある老人の姿に、和泉夕子はやはり敬意を表し、家の中に招き入れてお茶を淹れた。「実は、お茶はあまり好きじゃないんだ」コーヒーが好きだった。和泉夕子は一瞬お茶を淹れる手を止め、澄んだ目で相手を一瞥した。「うちにはお茶しかないんです。我慢して飲むか、喉の渇きをこらえるか、どちらかです」そう言われて、如月尭も文句を言うのをやめて、湯飲みを手に取り、一口軽くすすってから、和泉夕子の家を見回した。「なかなか良い雰囲気だな。だが、あなたが設計したあの小さな家と比べると、温もりは足りないな」和泉夕子は返事をせず、うつむいたままお茶を淹れ続けた。如月尭は湯飲みを置いて、お茶を淹れている和泉夕子を見た。「あの小さな家に住んでもらうつもりだ。子供が生まれて大きくなったら、俺がその子を連れて川に釣りに
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