車内は華恋が去った後、しばらく沈黙が続いた。ようやく林さんが口を開いた。「栄子......」「林さん、ちょっと待って、まず私に話させて」栄子は背筋を伸ばして座った。「この前のことは私が悪かった。あなたに八つ当たりなんてするべきじゃなかった。彼氏を紹介してくれたのも、私のことを思ってのことだったよね。本当にごめんね」林さんは何と言っていいかわからず、言葉に詰まった。しばらく二人は黙って座っていたが、栄子が再び口を開いた。「......林さんの言いことは?」林さんは唇を開いたが、結局首を振った。「いや......もう、言わなくていいや」言おうと思っていたことは、すっかりぐちゃぐちゃになってしまった。「じゃあ、これからも友達でいてくれる?」栄子が尋ねた。林さんは、笑みを浮かべている栄子の瞳を見て、一瞬心が締め付けられる思いがした。「もちろんだ」「よかった」栄子は少し明るくなった声で言った。「じゃあ、今までのことはなかったことにしよう?」林さんは言った。「......ああ」「よし」栄子は軽やかに言った。「じゃあ出発しよう」林さんは前を向き、ハンドルをぎゅっと握った。胸の中には複雑な感情が渦巻いていた。後部座席の栄子も、ようやく握りしめていた拳をほどき、そっと顔を窓の外に向けた。彼女はやりきった。林さんとは付き合えなかったことは残念だが、それでも今、友達でいられるなら、それで十分だった。互いに想いを胸に秘めた若者二人が乗る車は、街の中、無言で走る。夜の闇に灯る光が、ふたりの若い顔を淡く照らしていた............華恋が家に帰ってからも、栄子のことが気がかりで、彼女にメッセージを送った。メッセージを送ってから、ようやくドアを開けた。ドアを開けた瞬間、華恋は自分が家を間違えたのかと疑った。部屋の内装がすっかり変わっていた。以前のシンプルなスタイルから、温かみのある雰囲気に。しかも、バルコニーには小さなガーデンまでできていた。まるで住居ではなく、リゾート地のような空間になっていた。「これ、あなたがやったの?」華恋は驚きで声を上げた。時也が彼女の手を引いて部屋の中に連れて行った。「どう?気に入った?」部屋の様子
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