修は、手に持った雑誌をぎゅっと握りしめたまま、無理やりページをめくっていた。 けれど、視線は活字を追っているくせに、頭の中には何一つ入ってこなかった。 若子も、胸が詰まって息ができない気がした。 もうこれ以上、言葉を交わす余裕なんてなかった。 「西也......じゃあ、今日はこれで。休むわね」 これ以上話していたら、自分を抑えられなくなる―そんな予感がしたから。 「うん」 西也も優しく返事をして、暁の小さな手を取ってカメラに向かって振った。 「暁、ママにバイバイしような」 「バイバイ、暁」 若子も笑顔を作りながら、手を振った。 でも―心の中では、涙がこぼれそうだった。 暁のことを思うだけで、胸がぎゅっと痛む。 ―なんなんだろう、これ。 すぐ隣に、本当の父親がいるのに。 まるで空気みたいに存在を消しているしかないなんて― しばらくして、通話は終了した。 若子はスマホをそっと脇に置き、ぎゅっと口を押さえて泣き出した。 堪えようとしても、どうにもならなかった。 心が、張り裂けそうだった。 ここ最近、あまりにいろんなことが立て続けに起こりすぎた。 修が突然、妊娠した彼女を連れてアメリカに現れたこと。 ヴィンセントのこと。 そして、西也の裏切り―あんなことをしておきながら、何事もなかったかのように嘘をつき、彼女から子どもまで奪ったこと。 どれか一つだって、十分に耐えられないほどの打撃なのに。 それがすべていっぺんに押し寄せてきた。 もう、心も体も限界だった。 胸の奥に、冷たいコンクリートを流し込まれたみたいに、重く苦しくて、息をするのも辛い。 若子の泣き声に気づいた修が、慌ててベッドへ駆け寄った。 「どうした?」 若子は、慌てて涙をぬぐい、首を振った。 「......大丈夫。ただ......ちょっと、子どもが心配で......」 そんな彼女に、修は静かに言った。 「心配するな。子どもは父親のところにいるんだ―虎だって、自分の子は食べないって言うしな」 虎でも子は食べない、か。 その言葉に、若子はかすかに笑いそうになったけど、すぐに何も言えなくなった。 ―まあ、仕方ない。 だって、修は知らないのだ。 暁が、自分の子どもだというこ
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