また何日かの時が流れた。 侑子は運が良かった。ちょうどそのとき、事故に遭ったドナーから心臓が提供されたのだ。 健康な心臓を手に入れたことで、侑子はなんとか危機を乗り越えた。 修もこの数日、ずっと侑子のそばに付き添っていたせいで、若子と会う機会はめっきり減っていた。 何度も若子は、彼に生検の結果を尋ねたくなった。でも病室の前まで来て、侑子の隣に寄り添い、優しく世話を焼く修の姿を見ると―彼にはすでに想ってくれる女性がいるんだ、と、余計なことを言うのはやめようって思ってしまった。 若子は静かにため息をついて、踵を返す。 そのときだった。修がどうやら彼女に気づいたようで、侑子に何か言葉をかけた後、病室を出て追いかけてきた。 「若子」 足を止める。 振り返りながら、若子は言った。 「生検の結果を聞きに来ただけ。けど、本当に話したくないならいいわ。どうせ今は、山田さんとお似合いのカップルだし。何かあったら、彼女に言えばいい。じゃあね」 「悪性だった」 背中に向けて修の声が飛ぶ。 若子は目を見開いて振り向いた。 「......今、なんて?」 修は数歩こちらに近づいた。 「腫瘍は悪性だった。まずは化学療法で縮めて、それから手術で取り除く」 若子の指が震え始める。彼のそばに歩み寄り、声を震わせながら問う。 「治るの......?」 「医者には聞いた。まずは化学療法だってさ」 若子の胸が苦しくて、言葉がうまく出てこなかった。やっとの思いで、どうにか声を出す。 「それって......戻って治療するの?それとも、アメリカで?」 「アメリカに残る。侑子もここにいるし、彼女の体はまだ回復してない。飛行機は無理だ」 「修......お医者さんは、成功率って言ってた?」 「わからないって。できる限りのことをするってさ」 「......山田さんは、このこと知ってるの?」 「いや。彼女は手術を終えたばかりだ。ショックを与えたくない。だから、お前からも言わないでほしい」 「じゃあ......いつから、治療を始めるの?」 「明日から第一ラウンドが始まる」 修の言葉に、若子はそっとため息をついた。 「......付き添った方がいい?」 「いや、大丈夫だ。お前にはお前のやることがあるだろ
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