夜になって、修が帰ってきた。どこか疲れきった様子で、表情も冴えない。若子はすぐに子どもを抱えて駆け寄る。「修、どこに行ってたの?」「この数日、ずっとホテルに泊まってた」「修、暁はあなたの息子だよ。この事実は誰にも変えられない」「パパ」暁が両手を広げて、修に抱っこをせがむ。若子は暁を修の腕に預ける。「ほら、抱っこしてあげて。ずっとパパを探してたんだよ。この数日、会えなくて寂しがってたから」修は子どもを抱きしめながら、その柔らかさに心が溶けそうになる。帰ってきて、こうして暁や若子の顔を見ることができる―それだけで十分幸せだと感じてしまう。それでも、過去のことが胸の奥で渦を巻き続けて、どうしても拭いきれない。「暁って名前、遠藤がつけたのか?」若子は少し戸惑いながら、正直に答える。「うん、当時は本当のこと知らなくて。ずっとそばで助けてくれたから」すぐに付け足す。「もしこの名前が気に入らないなら、変えてもいいよ。修が新しく名前をつけてあげて」「遠藤はあの頃、本当にずっとお前のそばにいて、いろいろしてくれた。オレを殺そうとしたのも事実だけど、お前には本気だったんだろう」修は名前のことには、それ以上触れなかった。若子は西也の話題が修の心に引っかかっているのを察して、すぐ話題を変える。「修、中に入って夕ご飯食べよう?まだ食べてないでしょ」疲れた顔を見ると、食事はまだだとすぐにわかる。修は最初、食べる気がなさそうだったが、若子を心配させたくなくて、うなずいた。「うん」修は暁を抱えたまま、三人で家に入る。食事のとき、若子は口を開いた。「ねえ修、実は仕事が決まったの。明日から金融アナリストとして働くの」修は箸を置いて、じっと若子を見る。「SKグループに入ればよかったのに。お前が選べるポジションはたくさんあったのに。金融アナリストは大変だよ。データや資料を山ほど見なきゃいけないし、レポートも書かなきゃ」「大変って思わない。今こそ自分の人生を自分で切り拓きたいんだ。自分の力で何か成し遂げたい。修にも応援してほしい」しばらく考えたあと、修はうなずいた。「わかった。もし辛くなったら、いつでも戻ってくればいいから」「うん、ありがとう」今夜、修が帰ってきてくれて、若
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