部屋の明かりが突然ついた瞬間、雪菜の手がビクリと震えた。「やっぱり……あなただったね」背後から、落ち着き払った確信に満ちた声が響いた。「でも思ったより早かったわね。まさかこんなに我慢できないとは」「……」その声に、雪菜は驚愕したまま固まった。ゆっくりと振り返ると、そこには堂々とした足取りで近づいてくる瑠璃の姿があった。唇には誇らしげな笑みを浮かべ、まるで勝利者のように余裕のある佇まい。「瑠璃!」彼女の名前を絞り出すように叫んだ雪菜の両手から、枕が弾かれるように払い落とされた。彼女はてっきり、祖父が動いたのかと思い恐る恐る振り返ったが——目に飛び込んできたのは、光に照らされた隼人の美しい顔だった。予想だにしない光景に、雪菜は目を大きく見開いた。——これは……罠!?彼女の脳内でようやくすべてが繋がった。これは、瑠璃と隼人が仕掛けた罠。これは瑠璃と隼人がグルになって仕掛けた罠!最初から、彼女が引っかかるのを待ってたってわけだ!雪菜の心は混乱と恐怖でいっぱいだった。だが彼女はまだ仮面を被っている。ウィッグにマスク、証拠は残らない——逃げられる。言い逃れもできる。そう思い直した瞬間、彼女は反射的に部屋の出口へと走り出した。進路を塞ぐ瑠璃を見て、彼女は憤怒に満ちた顔で手を振り上げ、無理やり突き飛ばそうとした。だが、瑠璃はひらりと身をかわし、同時に足を出した。「きゃっ!」雪菜は足元をすくわれ、「ドサッ!」という音とともに、床に顔から倒れ込んだ。「痛っ!」悲鳴を上げた彼女は痛みも忘れ、すぐに立ち上がろうとした。だが——部屋の出入口には、すでに邦夫の姿が立っていた。雪菜の足が一歩も動かなくなった。背中は衣装棚にぶつかり、体が硬直したように動かなくなる。——やっぱり罠だった。完全に嵌められたのだ。「なにごと?何の騒ぎよ、こんな夜中に……おじい様、一体何してるのよ?」その時、眠たそうに目をこすりながら青葉が現れた。彼女は文句を言いながら廊下に出てきたが、邦夫の姿を見つけた瞬間、驚きのあまり目を見開いた。「邦夫?あんた、たしか出張中じゃ……数日戻らないって言ってたじゃない……どうして……」言いかけた言葉が途中で途切れたのは、部屋の中にもう一人の姿を見たからだった。
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