瑠璃は目の前の簡素なシングルベッドに横たわる男の姿を見た瞬間、胸が大きく締めつけられた。この輪郭、この背中を、彼女が見間違えるはずがない。彼女は扉を閉めると、迷うことなく彼のもとへ駆け寄った。隼人は扉の音には無反応だったが、近づいてくる足音に何かを感じ、ゆっくりと顔を上げた。その目に映ったのは、彼女だった。一瞬、絶望に沈んでいた彼の瞳に、かすかな光が灯った。目が合ったその瞬間、瑠璃の心に鋭い痛みが走る。彼は薄い衣服のまま、肩の傷には包帯が巻かれていたが、その隙間から滲んだ血が見えていた。その憔悴しきった顔、血の気のない唇――彼の姿を見るだけで、胸が苦しくなる。「隼人……」彼女はベッドの傍に腰を下ろし、そっと彼の身体を支えて起こした。「大丈夫?傷は……どう?」隼人が身を起こすと、瑠璃の目に飛び込んできたのは、彼の右手首に巻かれた太い鎖だった。肩の傷がその動きに響いているようで、わずかな動作にも痛みが滲んでいた。瞬が……こんな場所に、彼を閉じ込めていたなんて――。予想すらしていなかった光景に、瑠璃の胸は怒りと哀しみに揺れる。だが隼人の表情は、あまりにも静かだった。「やっと来たのか。もう目黒夫人は俺が死んだと思ってるのかと」その言葉に、彼女はまったく動じなかった。じっと彼を見つめたまま、静かに問い返す。「隼人……本当に、私がそう思ってるって信じてるの?」彼は一瞬、表情を緩めた。目元の鋭さが溶け、まるで春の湖のように柔らかな眼差しへと変わっていった。彼は辛そうに手を持ち上げ、彼女の頬にそっと触れた。「……もう一度、君の顔を見られるとは思わなかった」そのかすれた低い声が、彼女の心にじわりと染み込んでいく。瑠璃はその手を握りしめ、赤くなった目で祈るように言った。「なんで……なんであの時、言うことを聞かなかったの。景市に戻れば安全だったのに……どうして残ったのよ」「答えを聞くまでは、絶対に帰らないと決めてた。たとえ死んでも、君に会うまでは死ねないって」彼は苦笑しながら、唇の端を引いた。「……また、君を怒らせたか?」瑠璃は言葉を返さず、ただ静かに彼の疲れた顔を見つめていた。目の奥には、涙が今にも溢れそうに溜まっていた。隼人は眉をひそめ、指先で彼女の頬を優しく撫でる。「
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