「ん?」私はすぐには反応できず、ぼんやりしていると、康平がせかすように言ってきた。「今、お前ん家の下にいるんだよ。花火のこと、聞きたいって言ってただろ?ちゃんと話してやるよ」今日一日があまりにも疲れていて、正直断ろうかと思った。でも、康平が急に甘ったるい声を出してきた。「佳奈、早く降りてきてよ」「早くって、何を?」「下まで降りてこいって。せっかく来たのに、無駄足にさせる気かよ」「呼んだ覚えはないんだけど」「ひどいなあ。お前ができるだけ早くって言ってたくせに」……確かに私が「できるだけ早く」って言ったけど、こんな展開、さすがに予想外すぎる。心臓がなぜかドキドキし始めた。男女の境界線が曖昧になって、さらに動悸が激しくなる。こんなの、私らしくない。「やめとく。明日、私から会いに行くよ」康平は明らかに不満そうな声を出した。「えー、せっかく夜遅くに来たのに……しかも外めっちゃ暗いし……」その声に鳥肌が立ちそうだったけど、なんだかちょっと面白くもあった。ふと、前に病室で慎一が真思に「新鮮だ」って言ってたのを思い出す。慎一のせいで凍りついていた私の血が、康平の行動で少しずつ溶けていく。私も「新鮮」ってやつ、ちょっと感じてるみたいだ。今まで私に言い寄ってきた男の子は少なくなかった。でも、私はすぐに線引きしてしまうし、勉強や自己研鑽に夢中だったから、慎一に追いつこうとする日々の中で、他の男の子が私のペースについて来られるなんて思ったこともなかった。だから、ここまでしてくれる人はいなかった。青春の曖昧な恋心を経験したことがある人なら、これくらい普通だと思うかもしれない。でも私には、すごくリアルで、すごく「新鮮」だった。突然のハプニングで、これがホルモンのせいなのかは分からないけど、少なくともアドレナリンはかなり出てる気がする。「佳奈、もしお前が降りてこなかったら、俺が上がるぞ。上がったら、もう帰らないからな?知ってるだろ、俺、けっこうしつこいぞ」康平の声は、脅しというより、むしろ楽しんでる。私は呆れつつも、私にも「新鮮さ」を求める権利くらいあるよと思って、ついに折れた。「分かった、ちょっと待ってて」でも康平は、なぜかがっかりしたような声で言った。「医者紹介してあげようか?お前、目悪すぎて俺のイケメンぶり
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