私は慌てて駆け寄り、慎一が康平の襟首を掴んでいるその手を、両手で必死に引き離そうとした。けれど、彼の力はあまりにも強く、腕の筋が浮き出し、手首から袖口の奥まで緊張で張り詰めているのが見て取れる。私は顔を上げ、彼を見つめた。その顔全体がまるで夜の闇に溶け込んだかのように冷たく、瞳には深い暗色が覆いかぶさっていた。私は力を込めて叫ぶ。「もうやめて、彼を放して!」彼は一瞬だけ目を伏せ、その瞳には深い探るような色が浮かんでいた。しゃがれた声で呟く。「お前は彼を庇うのか。まさか、お前が彼の味方をするとはな……」康平は口元を歪め、抵抗もせず、むしろ呆れた顔で慎一を挑発するように見ている。「見てわからないのか?」慎一は奥歯を噛みしめ、顎のラインが力で張りつめている。歯の隙間から絞り出すように言った。「俺は、お前が彼と一緒にいるのを許さない!」まるで狂ったように、慎一は康平の襟を掴んだまま、私まで弾き飛ばし、彼を地面に叩き付けて、拳を振り下ろした。「ドン!」と鈍い音が響き、慎一自身も呆然とした顔になる。「なんで抵抗しないんだ!」二人が揉めるのは初めてじゃない。これまで康平は、たとえ敵わなくても必死に抵抗していたのに、今日はまるで諦めたようにされるがまま。顔面に拳をもろに食らい、一瞬で腫れてしまった。「くそっ、顔を狙うなんて……!」康平は彼を突き飛ばし、顎を動かしてから、地面に血の混じった唾を吐いた。「今日の一発は受けてやる。もう彼女には手を出すな。全部俺がしつこくしただけだ!」その言葉を聞いた瞬間、私は驚いて声を上げた。「康平、なんでそんなバカなことを……」私は慌てて彼を庇い、慎一を睨みつける。「もういいでしょ!帰ってくれる?」胸の奥では未だにくすぶる怒りがあった。慎一が「幸せにさせない」と言ったその言葉が、私の中の何かをさらに掻き乱していた。これまでの27年間で、今日は私にとって最悪の誕生日だ。朝はまともにご飯も食べられず、雨に濡れて、離婚もスムーズに進まず、挙句の果てに夜になっても安らぐことができない。慎一の拳は震えていた。私を見つめるその姿は、まるで捨てられた子犬のようで、声もか細くなっていた。「俺は……お前が彼と一緒にいるのを許せない。彼がお前に触れるのも許せない……」私は呆れて笑った。「そんなこと言う
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