凛は、まだ自分が昔のままだと思っているのだろうか。大学を卒業してもう何年も経つのに、今さらまた勉強を始めようなんて――寝言は寝てから言ってほしいものだ。もうすぐ結果が出る。恥をかくのは彼女の方だ。仁美が言った。「美咲の話を聞いてたら、なんだか私もちょっと気になってきたわ」藍が口元に笑みを浮かべて言う。「そうそう、みんな気になってるんだから、凛、ちょっと見てみたら?みんなで見せてもらおう。そんなに構えなくていいのよ。点数が高くたって低くたって、受かっても受からなくても、どうってことないんだから」敏子は娘の顔をちらりと見て、咄嗟に止めようとした。けれど、凛は笑顔で応じた。「いいよ」パソコンの前に、皆が自然と集まる。凛はすでに受験番号とパスワードを入力していた。あとは、エンターキーを軽く押すだけで結果が表示される。「お父さん、押して」慎吾は少し戸惑ったように目をしばたたかせた。「……俺が?」「うん。昔の大学入試のときも、お父さんが見てくれたじゃない」「そうだったな」慎吾は手をこすり合わせ、深く息を吸って、ゆっくりとキーに手を伸ばした。ページが切り替わり、画面が固まったまま、「読み込み中」の文字が表示された。一同は息を呑んで見守る。一秒、二秒……「出た!出たわ!」総合点・412。珠希は呆然として動かない美咲の袖を引っぱり、小声で聞いた。「総合点っていくつなの?四百点台って、そんなに高くないんじゃ……」美咲は唇を動かしたが、声にならなかった。「どうして黙ってるのよ?」仁美はすぐに驚きの表情を引っ込め、やわらかく笑った。「珠希さん、総合点は五百点満点なの。凛のこの成績なら、たぶんトップスリーには入ってるわ。もしかすると、一位かもしれない」珠希はその言葉を聞いて、ようやく目を見開いた。「つまり……凛、B大学の大学院に受かったってこと!?」藍は無表情のまま口を開いた。「厳密に言えば、大学院試験は筆記と面接の二段階制よ。筆記だけの結果では、まだどう転ぶかわからない」珠希はほっと息をついた。やっぱり、凛が簡単にB大学に受かるわけがない。ましてやトップ3なんて……仁美はにっこりと微笑みながら言葉を継いだ。「でも、筆記試験の比重ってかなり大きいのよね。面接で落とされる人数もそんなに多くな
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