「時見さん、この鶏スープはまだ仕上がっていませんが、どうなさいます?」「言う通りにしろ、余計な口を出さないで」煮込んだかどうかには関係ない。どうせ美琴は飲まないだろう。むしろ飲んだら、腹下しで苦しめ!病院の病室にて。晴香はノックもせず、いきなりドアを押し開けて――。「美琴さん、鶏スープを持ってきましたよ」美琴は彼女を見た途端、ようやく治まりかけた頭痛が再発したように、めまいと怒りが湧いてきた。「誰が来ていいと言った?あなたなんかに会いたくない、出て行け――」晴香は真摯な顔で言った。「美琴さん、謝りに来たんです。昨日は私がひどいことをしました。あんなに口答えするべきじゃなかったですわ。これは今朝煮込んだ鶏スープですよ。温かいうちに持ってきて、美琴さんが早く回復できるように」美琴は冷笑した。「謝りに来たと?どんな下心かわからないけど、私を怒らせないだけでもうありがたいのに、あなたからのスープなんか飲めるものか?」スープにつばが入ってるんじゃないかと疑っていた!晴香の笑顔のままで真摯そうにしているが、心の中ではもしこのおばさんが本当に怒りで死ねばいいのに、とつっこんでいた。そう思いながらも、晴香は手の動きを止めなかった。保温弁当箱の蓋を開け、キレイな器を取り出してスープを注ぎ、両手で捧げながら言った。「美琴さん、そんな風に言わないでください。本当に反省しているんです。このスープは2時間も煮込んだ栄養たっぷりのものですから、どうぞ――」話の途中に、美琴はさっと手を伸ばし、差し出された器をひっくり返した。そして枕を掴んで晴香に向かって投げつけながら叫び出した。「出て行け!あなたのスープなんか要らないわ。毒でも入れてるかもしれないし!早く出て行け――」晴香は病室から追い出された。先はできるだけ早く避けたが、やはり服にはスープが飛び散ってしまった。白いワンピースはディオールの夏の新作、目立つ染みがついてしまった。彼女は眉をひそめながらティッシュで拭いたが、どうしても取れなくて結局諦めた。どうせクローゼットにはブランドものの服が山ほどあるし、タグが付いたままのものもあるから、着替えればいいだけだ。少し歩きだして、晴香は何かを思いついたように、スマホを取り出して、海斗のLINEを探したが、すでにブロックされて
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