川沿いを歩いていくと、両側のネオンサインがきらめき、騒がしかった街が急に静かになり、凛には時間と歩調が共に緩やかになった錯覚を覚える。二人は並んで歩き、淡い沈黙が空気に漂っていたが、気まずさはなく、むしろ互いに分かり合っているような心地よさがあった。何をしなくても、この人の側にいるだけで、それが一番居心地の良い状態なのだ。「橋の上で風に当たりに行きませんか?」凛が急に口を開いた。風がそよいで、彼女は指で揺れる前髪をかきあげ、耳の後ろに押しやった。陽一は彼女の視線に辿って、遠く方を見つめて言った。「いいよ。ちょっと遠いけど」凛は冗談を言った。「もう歩けないのですか?」陽一は眉を上げて返した。「それなら競争しようか?どちらが先に橋に着くかを」言い終わると、自らも少し可笑しいと思った。二人の年齢を足すと50歳も超えているのに、まだ子供のように幼稚だなんて。一方、凛はやる気満々だった。「いいですわ、先に着いた方が勝ちで、負けた方はアイスクリームをおごりますよ」すみれがここにいたら、きっと「あなたにはこれほどの願いしかないの」と呆れていただろう。相手は彼女の従兄なのに、アイス一つで済ませるなんて。もっと高価なものを要求したって、彼は何とも思わないのよ?彼女の話を聞くと、陽一は真面目に頷いた。「そうしよう」「じゃあ三つを数えたらスタートですわ。三、二、一——」凛は足早に走り出し、陽一はゆっくりと彼女の後を追いかけた。最後まで、彼女に近づき過ぎず、離れ過ぎない距離にいた。一気に橋まで駆け上がった彼女は、息を切らしながらも目を輝かせている。そして彼女は振り返り、得意げな子狐のように男を見て笑った——。「先生、私の勝ちですよ!」陽一は既にコンビニの前に着いて、冷蔵庫を指して気前よく言った。「どの味がいい?」「……イチゴでお願いします」陽一も一本適当に選んだ。そうして、二人はアイスを食べながら、運動した後の爽快感を感じつつ、道端でのんびりと座り込んだ。「今日は星が出ていないのですね」凛は真っ暗な空を見上げて、少し残念そうな声で言った。「子供の頃は星を見るのがとても簡単ですから、空を見上げるのはほぼしませんでした」簡単だから、わざわざ顔を上げる必要もなく、見たい時はいつでも見られる。d。
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