だが、二人の次女が行方不明になってからというもの……全てが変わってしまった。そもそも、これには久雄夫婦が長年海外で暮らしていたことも大きく関係している。今もなお行方不明で、生死すらわからない叔母のことを思うと、時也は思わず二人に視線を向けた。もしこのまま見つからなければ、この悔しさはきっと、死ぬまで心の底に残り続けるのだろう。「トキ、のどが渇いたわ」突然、祖母・守屋靖子(もりややすこ)がそう口にした。「おばあちゃん、ちょっと待ってて。水を買ってくるから……」時也はそう言ってから凛のほうを見た。「今、忙しい?」「ええ。何かお手伝いすることがあれば」「二人のそばにいてくれる?すぐ戻るから」「じゃあ、私が行きましょうか?」どうせ、凛も水を買いに来たところだった。時也は首を横に振った。「おばあちゃんは体調の関係で、いつも決まったブランドの弱アルカリ水しか飲まないんだ。この近くじゃ売ってなくて、向かいの通りにある輸入スーパーまで行かないと」「そうなんだ……それじゃ、行ってきて。私、ここでおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に待ってるから。安心して」「ありがとう」そう言って、時也は踵を返し、その場をあとにした。靖子は、凛の手をそっと取って、隣の席に招いた。「いい子ねえ。トキが、あんたとは友達だって言ってたけど、どうやって知り合ったの?」「ええ……共通の知人を通じて、です」海斗が一応、その共通の知人ということになる。「そうなの……あの子が女の子と友達になるなんて珍しいわ。あなたが初めてよ」靖子が楽しげに笑いながらそう言った。凛は内心でそっとつぶやいた。――それは、おばあちゃんが彼が昔、服を替えるように頻繁に彼女を変えてたのを知らないからですよ。「長いこと帰ってこなかったから、ずいぶん変わってしまったな……」ふいに、久雄が感慨深げに言った。その懐かしむような口調を聞き取って、凛はここ数年の帝都の変化について話し始めた。久雄は、彼女がすらすらと語る様子から、この街にずいぶん詳しいのだと感じて、ひとつ問いかけた。「お前は、地元の子なのかい?」凛は首を振った。「私は臨市で育ちました。ご存知ですか?南の丘陵地帯で、四季がはっきりしていて、山も川もある、とても綺麗なところなんです……」凛の語る風景は具体的
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