朝霧は真奈の前に歩み寄り、親しげに彼女の手を握りながら、取り入るように言った。「瀬川社長、私たちは同じ練習生チームにいた仲です。清水の性格をご存知でしょうから、どうか気にしないでくださいね」誰の目にも明らかなように、今の真奈は簡単に手を出せる存在ではなかった。Mグループのゼネラルマネージャーという肩書きだけでも十分だが、業界ではすでに真奈とMグループの実権を握る最上道央との間にただならぬ関係があるという噂が広がっていた。さらに朝霧は、ここ最近高級車が真奈の送迎に来ていたこともあり、当然のように彼女が最上と関係を持っていると考えていた。だが真奈は、朝霧が握る手をすっと引き抜いた。朝霧はバツが悪そうに、その場に立ち尽くすしかなかった。それを見た清水会長は、すぐに前に出て言った。「瀬川社長、上の方でお話ししましょう、上の方で……」彼は媚びるような笑みを浮かべ、真奈を上階に案内した。それを見た清水は、父親があれほどまでに真奈に頭を下げる姿に、悔しさと怒りを感じ、顔を真っ赤にして憤っていた。真奈が清水会長について会議室に入ると、清水会長は慌ててドアをしっかりと閉め、そのまま緊張した様子で真奈に近づき、小声で懇願した。「瀬川社長、練習生たちが離脱したのは佐藤さんの許可があってのことなんです。あなたと佐藤さんにはきっと何か計画があるのだとは思っています。でも…どうか、私を助けてください!」「清水会長、それはどういう意味ですか?私に何ができるというのです?」真奈はわざと困惑したような顔を浮かべながら、問い返した。清水会長はさらに慌てて答えた。「私が判断を誤って、会社をこんなに赤字にしてしまって…しかも、出雲総裁の投資金まで無駄にしてしまったんです。もし彼がこの件で私に責任を問うようなことがあれば、私は……」「清水会長、練習生が去ったのが私と佐藤さんの決定だと知っているなら、私たちが会社の損失額を気にしていないこともお分かりでしょう。ですから会長の地位は変わらずあなたのものです。出雲については…投資には元々リスクがつきものです。彼が来ても、清水会長はどう答えるべきかご存知でしょう」これを聞いて清水会長はっとした。この二日間、出雲の投資資金が無駄になったことでびくびくしていたが、もっと深い意味があるとは考えてもみなかった。今となって振
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