「救急箱が来た!」メイドが救急箱を真奈の前に差し出した。ちょうどそのとき、外から幸江と伊藤も到着した。荒れ果てた屋敷の中を目にした幸江は一瞬言葉を失い、二人とも強盗の正体が誰であったかをすぐに悟った。「私の車で行きましょう。救急車がいつ来るかわからないから」幸江は眉をひそめながら言った。「ありがとう」真奈は警備員に指示を出し、冬城を幸江の車まで運ばせた。病院では、医師たちがすぐに冬城の応急処置を開始した。幸江は真奈に寄り添い、廊下のベンチに腰を下ろして声をかけた。「大丈夫よ。さっき先生も言ってたじゃない。致命傷じゃないって」「でも、出血が多すぎると命を落とすこともある」真奈は眉間を押さえながら尋ねた。「伊藤は?」「智彦は……用事があって一度戻ったわ」「黒澤を探しに行ったの?」真奈も幸江も、それ以上言葉にせずともわかっていた。今日冬城家に押し入った強盗の正体は、黒澤だった。今回の黒澤の行動はあまりにも軽率だった。どう見ても衝動的な犯行で、この一撃は冬城の命を奪わなかったとはいえ、予期せぬ事態が起こる可能性は誰にも否定できない。「ご家族の方はどなたですか?」医師が手術室から出てきて言った。「患者さんは入院が必要です。ご家族の方にサインをお願いします」「私がサインします」真奈は一歩前に出て、書類にサインをした。そして医師に尋ねた。「彼はいつ頃目を覚ましますか?」「麻酔がまだ切れていないので、夜中過ぎになるでしょう」「わかりました。では、私が付き添います」「真奈!」幸江は心配そうに真奈を見つめた。真奈は振り返り、彼女に向かって言った。「黒澤のことは伊藤に任せましょう。冬城の容体が落ち着いたら、私は帰ります」「でも……」二人ともわかっていた。黒澤のあの気性を。彼が冬城家にまで乗り込んだということは、それだけ怒りが深かったということだ。これは伊藤と黒澤の十年来の友情だけでは、とても収まる問題ではない。「帰ったら伊藤に伝えて。今回の黒澤はあまりにも衝動的で、証拠もたくさん残しているはず。彼に処理をお願いして。警察が介入すれば、黒澤はかなり不利な立場になる」その言葉に、幸江はうなずいた。「わかった。帰ったら伝えておくね」真奈はそれ以上何も言わず、黙っていた。このとき、手術を終えた冬城
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