テレビ画面では、冬城が浅井を優しく見つめ、髪をそっと整えていた。二人は楽しそうに談笑しながら、まるで長年連れ添った夫婦のように自然に寄り添っていた。その眼差しは、どう見ても演技には見えなかった。傍らで幸江がぽつりと言った。「不思議でしょ?二人が一緒に映るの、これが初めてじゃないのよ。さっきまで私、あの晩餐会の会場にいたの。そこから飛んで帰ってきたの」「……確かに、ちょっと不思議ね」真奈はそう呟きながら、テレビに映る冬城の表情に目を凝らした。その眼差しには、紛れもない深い情が宿っていた。そして次の瞬間、真奈の目が止まった。浅井の左手薬指――そこには、冬城家に代々伝わる家宝の指輪がはめられていたのだ。真奈はすぐにテーブルの上のリモコンを手に取り、巻き戻しボタンを押した。画面を3秒ほど戻して一時停止。そこには、冬城が浅井のこめかみの髪を優しく整えている場面が映し出されていた。浅井は柔らかな笑顔を浮かべ、そっと手を上げて、冬城のネクタイを直していた。真奈は浅井の指に輝く指輪を、はっきりとこの目で見た。それを見ていた幸江が、不安そうに尋ねた。「どうしたの?」「浅井がつけてるその指輪……あれは冬城家の家伝の指輪よ」真奈は、前世での記憶を鮮明に思い出していた。あのとき、彼女が妊娠していた頃、その指輪は自分の寝室に置かれていた。冬城おばあさんが、孫の嫁として自分を認めてくれた証――そう信じていた。だが、あの夢の中で見たのだ。遺体安置所。浅井が静かに歩み寄ってきて、彼女の亡骸の指からあの指輪を外した。あの歪んだ笑顔。勝ち誇ったような、ゾッとするほど冷たい顔を、今でも忘れられない。「真奈、私を恨まないで。あなたが死ななきゃ、冬城夫人の座は私のものにならないのよ。まさか、本当に司さんがこの家宝の指輪をあなたに渡してたなんて。でも大丈夫。今日からこの指輪の持ち主は、私よ」……頭の奥がずきりと痛んだ。真奈の体がふらりと一歩、後ろへよろける。すぐさま黒澤が駆け寄り、彼女の腕を支えた。幸江も慌てて駆け寄ってきた。「真奈!大丈夫!?」「平気…ただ少し眩暈がするだけ」真奈の顔色は青ざめていた。黒澤は黙って俯きながら彼女を見つめ、その眼差しには隠しようのない心配と痛みがにじんでいた。その様子を見て、伊藤は幸江の腕を軽く突いた。
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