「私はまだ用事があるので、立花総裁、瀬川さん、お先に失礼します」家村はそのままホテルを後にした。立花は真奈の目の前まで歩み寄り、意味ありげに言った。「お前と彼は……」「私たちがどんな関係だと思うの?」「どんな関係でもいい。逃げようとしていなければそれでいい」「どうして?」真奈は言った。「逃げたいなら、昨日の夜に逃げてたわ。今さら逃げる必要なんてないでしょう?」「俺の前でとぼけるな。逃げないのは、逃げられないとわかっているからだ」目の前の立花を見つめながら、真奈の顔から笑みが少しずつ消えていった。どうやら立花はすぐに頭の中で整理がついたらしく、あの夜真奈が戻ってきた理由をすぐに理解したようだ。立花は眉を上げて言った。「緊張するな。自覚さえあれば、どんな理由で戻ってきたとしても受け入れる」「私のどこがそんなに特別なのかわからないけど、立花総裁がこんなに夢中になるなんて……もしかして、私に気があるんじゃないの?」真奈のその目は、笑うと三日月のように弯曲し、どこかしら狡猾さを漂わせていた。立花は手を伸ばして真奈の顎をつかみ、左右からじっと眺めた。「こんなにきれいな顔してるくせに、妙に自惚れた頭してるな」そう言って立花は真奈を離し、淡々と告げた。「今夜、俺の部屋に来い。話がある」夜にふたりきりで会うと言われ、真奈は一瞬で警戒心を抱いた。だが気づいたときには、立花はすでにエレベーターに乗り込んでいた。「瀬川さん、こちらは立花総裁がお求めになったものです」傍らのスタッフが箱を真奈の手に渡し、恥ずかしそうに笑った。真奈は眉をひそめ、手元を見下ろした。その箱には、避妊薬が入っていた。真奈は目を見開いた。立花が……避妊薬をどうするつもりなの?真奈は慌ててスタッフを呼び止め、念のため確認した。「これ、本当に立花総裁が頼んだものなの?」「はい、先ほど立花ご自身がお届けするよう指示されました」「……」真奈は元々、立花がそんな浅はかな男ではないと思っていた。だが今は後悔していた。立花は浅はかなだけじゃない!そのうえ女好きだ!周囲に誰もいないのを見計らって、真奈は避妊薬をそのままゴミ箱に捨てた。そしてフロントに歩み寄り、こう言った。「電話を貸してもらえないか?」フロント係はうなずき、電話を
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