「哲、冗談にも程があるだろ」悠真はうつむいて、苦笑を漏らした。そして、一呼吸置いてから真剣な口調に変わる。「もしお前が、明日香と同じように皆に晒されて、あざ笑われたら、それでも面白いなんて言えるのか?」率直すぎるくらいの言葉だった。哲には遠回しな表現は通じない。だからこそ、こうして真っ直ぐぶつけた。哲は口をつぐんだ。「それにさ、親の因果が子に報いなんてのは、時代遅れもいいとこだろ。今は法治国家なんだ。康生がやったことは、いつか必ず明るみに出る。法の裁きは、逃れられない。でも、それを明日香が背負わされる筋合いはない。彼女は、何も悪くない。淳也は無鉄砲に見えるけど、実際は一つ一つ考えて動いてる。お前が思ってるほどのクズじゃない。確かに見た目は最悪で、女とつるんでバーに通ったり、トランプ三昧の派手な生活してるけど......女と一晩共にしたところ、見たことあるか?」哲はぽかんと口を開けて、顎が外れそうになった。「え、あいつ......童貞なの?」「何言ってんだよ。南海大学のミスキャンとは、ただの見せかけの関係に決まってるだろ」「じゃあ......珠子は?あいつ、珠子のこと好きだったんじゃないのか?二人で夜中にバイク飛ばして、朝帰りしたって話、あれ、本当だろ?」悠真は湖面を見つめながら、風で揺れる前髪を指先でかき上げた。「俺の見立てじゃ、あれは......明日香に見せつけるための芝居だよ」おそらく、淳也の気持ちは、もうずっと前から明日香に向いていた。「なんでそんなことがわかるんだよ?信じられねぇ......」哲は頭を抱えるようにして、目を泳がせた。「実は、病院のときにさ。淳也は、明日香に心を動かされてたんだよ」「うそだろ......」「病院で医者が淳也の検査してたとき、腹のタトゥー見ただろ?お前、やらしいって茶化してたじゃん」哲の脳裏に、その場面がうっすら蘇る。あのとき、確かに笑って茶化した。でも淳也は何も言わなかった。ただ、静かに目を伏せていたような気がした。もしかしたら、最初から明日香に気があったのか?「だったら、なんで口説かないんだよ。なんであんなに冷たい態度取るんだ?珠子がいじめられたときだって、明日香のせいだって思って首絞めかけたじゃん。好きなら、そんなことするか?矛盾してるだ
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