「やめて......お願い、やめて......っ」珠子は必死に体をねじり、逃れようとした。「なに清純ぶっちゃってんの?一回試してみ?天国見せてやるよ」男の吐き出す息が耳元にかかり、全身に鳥肌が走る。「遼一さんっ......!助けて、遼一さんっ!」必死に声を張り上げる。遠くの宴の中、彼女の目は遼一の背中を捉えていた。けれど賓客のざわめきと、華やかなドレスの波が、彼女の声も視界も遮ってしまう。その叫びが届いたのか、一人、振り返る視線があった。遥だった。けれど彼女は、無言で視線を逸らした。その瞬間、珠子は口を塞がれ、再び冷たいプールの中に引きずり込まれた。水の抵抗と、太ももの間に押し付ける異物の感触。達哉の荒い息遣いが耳元に漏れる。だが、そのとき、異変が起こった。珠子の体が突然ぐったりと沈み、目は虚ろに開いたまま動かなくなった。顔は青白く、口元は苦しげに開いたままなのに、まるで空気を吸えていない。「うわっ、なんだよ。こいつ......病気か!?」パニックに陥った達哉は、咄嗟に彼女の体を突き放した。自分が人殺しになるかもしれない恐怖に突き動かされて。珠子はまるで力を失った魚のように、プールの底へ沈んでいく。水面には、長く揺れる髪と淡い影だけが残された。---「珠子は?」遼一がふと、スイーツコーナーを見回した。珠子の姿が見えない。視線が鋭く細められた。そのころ、遥はシャンパンを手にしながら、気怠げに唇を歪めていた。「ねえ。私、あなたのためにこれだけ人を紹介して、大きな契約までまとめたのよ。どう感謝してくれるの?」だがその言葉が終わらぬうちに、外から、夜空を切り裂くような悲鳴が響いた。「きゃあっ!誰か......溺れてる!」遼一の脳裏に珠子の顔が浮かんだ。迷うことなく手にしたグラスを放り、一直線に走り出した。プールサイドにはすでに人だかりができていた。数人が協力して、水の中からぐったりした珠子を引き上げようとしている。遼一はジャケットを脱ぎ捨て、珠子を自分の腕に抱き寄せた。その気迫に、周囲の空気が一気に凍りつく。「珠子っ!しっかりしろ、珠子!!」珠子の頬を叩いたが、返事はない。「誰か!救急車を呼べ!!」「は、はいっ!」遥も駆けつけて来た。人工呼吸を行う遼一の険
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