明日香は、手術室の前でひたすら待ち続けていた。手術はすでに三、四時間にも及び、その間、彼女は何度も淳也に電話をかけたが、呼び出し音ばかりで一向につながらない。胸の奥にざらつく不安を抱え、行ったり来たりを繰り返した。淳也は一体、どこへ行ってしまったのだろう。明日香が知る淳也の連絡先は、彼本人の番号だけ。親族に連絡を取る術はなかった。ふと、脳裏にひとつの可能性が浮かぶ。桃源村で、真帆と一緒にいるのではないか。この場所以外に、行き先の心当たりはなかった。明日香はすぐさま、以前訪れた海鮮バーベキュー店の店主の番号を探し出す。プー、プー......早く出て......!その頃、桃源村。光宏は、得体の知れないチンピラたちにぐるりと囲まれていた。食事をしていた客たちは、すでに全員追い出されている。「何のつもりだ!」信介がナイフを指先で弄びながら、薄く笑った。「大したことじゃねえさ。ただ、おとなしくしてくれりゃいい。でないと、容赦しねぇ。これから誰かから電話があっても、聞かれたことには『知らない』とだけ答えろ。もし余計なことを口にしたら......命はないと思え」「は、はい......」身長一八九センチの屈強な光宏でも、この人数を前にすればどうにもならない。何より、ナイフを操る男の腰に見える膨らみは銃の形にしか見えず、軽挙妄動はできなかった。ちょうどその時、カウンターの電話が鳴る。信介が目で合図を送った。光宏は震える手で受話器を取り、「ど、どちら様ですか......?」『光宏さん?私、明日香です。真帆さんと淳也さんが一緒にいないか探してるんです。淳也を見かけませんでしたか?』「み、見てない......何も聞かないでくれ。俺、何も知らないんだ」信介は勝手に受話器を取り上げ、そのまま切った。「まあまあ素直だったな。覚えとけ、またかかってきたら何て答えるか、分かってるな?」「......はい」信介は手下を連れて店を出ると、すぐにどこかへ電話をかけた。「親分、こちらの方は片付きました」「ああ、引き続き見張っておけ」「承知しました」病院。切れた電話を見つめながら、明日香の胸に言いようのない不安が広がる。光宏の声は明らかに怯えていた。彼に何かあったのだろうか。彼女は芳江に
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