結翔はすぐに慰めた。「お父さん、もう泣かないで。これから、佳奈にしてあげられなかった分の愛情を、孫たちに倍にして注いであげればいい。うちのお姫様を、健やかで、幸せに育ててあげよう」「ああ。俺の金は、全部、三人の孫たちのために使う。どうせ、お前は嫁も見つけられないんだ。お前に遺してやる必要もないからな」「なんだよ、その言い草は。俺だって、いつか、嫁と子供を一緒に連れて帰ってくるかもしれないだろ」その言葉を聞いて、智哉は笑いながらからかった。「それも、あり得ない話じゃないな。佑くんが、お前とあの麻耶ちゃんのママをくっつけようとしてるんだから。もし、お前が彼女と結婚すれば、一気に、嫁と子供が手に入るぞ」「結婚したいなら、とっくに結婚してるさ。他の奴は知らなくても、お前なら、どういうことか分かってるだろ?」聖人は、むっとして、冷たく鼻を鳴らした。「まさか、お前、まだ、小倉家のあの娘のことを考えているのか?彼女がどれほどお前を傷つけたかを忘れたのか。お前が、あれほど残ってくれと頼んだのに、彼女は、聞く耳も持たなかった。あんなに、心の冷たい女を、どうして忘れられないんだ」結翔はすぐに言った。「もう、余計な心配はしないでくださいよ。俺と彼女のことは、とっくに終わってるから」「なら、お前は、誰を待っているんだ?この数年間、お前は、一度も恋愛をしたことがない。俺が、知らないとでも思っているのか?」智哉は、意地悪く笑った。「お父さん、これは、兄さんが昔作った過ちの落とし前なんですよ。彼は、相手に責任を感じているんです。でも、万が一、いつかその人を見つけたとして、相手がとっくに結婚して子供までいたら、兄さんの苦労も、水の泡ですよね?」結翔の瞳が、わずかに翳った。「もし、本当にそうなっていたら、俺は、彼女の幸せを祈るだけだ」彼は口ではそう言ったが、心の中には、依然として、一つの執着があった。彼は、あの夜の女の子を、必ず見つけ出さなければならない。彼は、あの女の子の柔らかい唇と、しなやかな体を決して忘れられない。彼は、失恋してから、自分はもう二度と誰かを愛する能力はなく、他の女の子にそういう感情を抱くこともないと思っていた。しかし、あの夜、彼は、一度知ってしまった悦びを、忘れられなくなったのだ。何度も、何
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