翔太はタバコの灰を弾き落とし、否定もせずに口元を歪めた。「もう遅い。早く休め」「……うん、分かった」直樹は電話を切った。翔太は部屋に戻り、ベッドで眠っている女をしばらく見つめたあと、自分も横になり、彼女を抱き寄せた。……翌朝。美羽は目を覚ました。薬の効果はもう切れており、頭ははっきりしている。彼女はベッド脇のテーブルに手を伸ばし、手に触れた物をそのまま男に投げつけた。「出て行って!」不意を突かれた翔太の額のあたりに、灰皿が見事に命中した。血は出ていないが、赤く腫れ上がった。彼はすぐに彼女の両手を掴み、枕の両脇に押さえつけた。美羽の白目が赤く染まり、彼を睨みつけた。翔太は冷ややかに言った。「恩を仇で返すのか――昨夜、俺がいなければ、君はもう奴らに埋められたかもしれないぞ」美羽の胸は激しく上下し、唇をかみしめながら答えた。「……どいて」翔太の口角が吊り上がった。「俺に手を出すのが癖になったか?言ったはずだ、三度目は許さない、と。手を出したからには、代償を払ってもらう――たとえ今は嫌でも、やってもらう」そう言うと、彼はそのまま彼女に口づけた。美羽は必死に顔を背けた。昨夜は意識が朦朧としていたから仕方なかった。だが今は違う、彼女が受け入れるはずがない。必死にもがく彼女に、翔太が吐いた一言で、全身が氷雪に閉ざされたかのように動けなくなった。「――昨夜の君の写真、忘れたのか?」美羽の顔から、一瞬で血の気が引いた。昨夜、勝望の手から救われた恩情は、その言葉で一気に霧散した。彼女は歯の隙間から絞り出すように言った。「……翔太!卑怯者!最低!人でなし!」彼は罵声を無視し、唇を彼女の首筋に落とした。美羽は目を固く閉じた。彼女は痛いほど分かっていた。翔太は最初から、彼女と「普通の関係」を築こうなどと思ってはいない。3年の間、「美羽のことは自分の彼女だ」と、一度も認めたことはなかった。翔太の両親が結婚の話を持ち出すたび、彼は怒りと苛立ちを露わにした。さらに、悠介の誕生日パーティーの場では、彼女のような女は眼中にないと公然と口にした。――それでも。別れてからこういうことをしたのは二度目……いや、三度目だ。彼は自ら彼女を求めている。彼にとって彼女は、欲望の捌け口でしかない。感情と
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