彼は……なんてここにいるの!?小太りは勝望の手下であり、逃亡犯でもある。さっきは勝望の傍にはいなかった。だが今、その手に刃物を握りしめ、彼らめがけて突進してきたのだ!刃先が目前に迫った瞬間、美羽はとっさに翔太を突き飛ばし、自分も身を引こうとした。だが、翔太は彼女がそうすることを予期していたかのように、伸ばされた彼女の手を正確に掴み、力強く自分の背後へと引き寄せた。そして一蹴り、小太りの刃を払いのけた。だが、あまりにも距離が近すぎ、突発的な状況だったために狙いが外れ、刃は吹き飛ばず、わずかに逸れただけだった。次の瞬間、小太りは狂ったように、無秩序に刃を振り回した!「どんな達人でも、包丁には敵わない」――理性を失った人間を前にすれば、どんな武芸も無力。ほんの一瞬のうちに、その刃が翔太の腰腹を深々と突き刺した!美羽の瞳孔がぎゅっと縮んだ。小太りは一撃を決めても止まらず、勢いよく刃を引き抜いた!刀身に血が滲み、翔太も腹を押さえた。さらに小太りが二撃目を振り下ろそうとした刹那、美羽は肩にかけたチェーンバッグを武器代わりにし、その顔面めがけて叩きつけた!バッグには金属製の装飾がついていて、ぶつかれば相当痛い。小太りは顔を押さえて動きが一瞬止まった。その隙に翔太が彼を蹴り飛ばし、ボディガードたちも駆けつけた。刃を翔太に届かせられないと悟った小太りは、今度は無差別に振り回し始める。外には犬、手には刃。叫び声が飛び交い、人々は逃げ惑い、混乱の渦の中で美羽の腕にも刃が走った。――「パンッ!」銃声が響き、狂ったように刃を振り回していた小太りの体がその場で凍りついた。私服警官が引き金を引いたのだ。美羽は反射的に、彼がどこを撃たれたのかを確かめようとした。だが、背後から慶太が彼女の目を覆った。「見るな」それでも美羽の視線はすでに捉えていた。眉間、真ん中――混乱はそこで終幕を迎えた。その場にいた二、三十人は程度の差こそあれ皆負傷し、近隣の病院へと搬送された。急診ホールは医師や看護師で慌ただしくも、秩序正しく動いていた。美羽も病床に横たわされた。腕の切り傷は浅くはなく、縫合が必要で、破傷風の注射や点滴による炎症止めも欠かせない。事が起きた時、慶太は結菜を助けていた。彼女は犬にふくらはぎを噛まれ、血が滴り、
Read more