九条津帆は車を走らせた。しかし、九条美緒との関係が、この瞬間から崩れ始めたなんて、彼は気づいていなかった。その後、彼の事業は父の九条時也を超えるほどに成功した。でも、自分を犠牲にしてまで6年も待っていてくれた九条美緒は、もうどこにもいなかった。彼はゆっくりと、少しずつ彼女を失っていったのだ。......九条津帆は車で会社へ向かった。会議室には、すでに人が集まっていた。九条家の長男である彼の機嫌が悪いことは、誰が見てもあきらかだ。整った顔は不機嫌にこわばり、会議を仕切る時も相手企業の担当者にとても厳しくあたった。その相手とは、中野明美だった。九条津帆の機嫌を損ねることができるのは、九条美緒くらいだろうと中野明美は考えた。いつもは女性に冷たい九条津帆が、九条美緒の前では信じられないくらい優しい。中野明美はそれが気に入らなかったけど、大したことじゃないと思っていた。九条津帆みたいな男が、一人の女にいつまでも我慢できるわけがない。会議は終了した。いくつか細かい点の打ち合わせが残っていた。中野明美はとても美しく、スタイルも抜群だった。彼女は自分の魅力をよくわかっている。だから九条津帆と話すときは、わざとシャツのボタンを二つ開け、少し屈んで胸元をちらりと見せるのだ。仕事の話が終わると、彼女は細い指でそっとテーブルをなぞった。その表情は、とても色っぽい。「ケンカでもしたんですか?津帆さん、私と組んだ方がいいですよ......数年後、あなたに後継ぎができたら、離婚して好きな女性と一緒になれますから」九条津帆はゆっくりと立ち上がり、中野明美を見下ろした。彼は品定めするような視線で、そのセクシーな胸元を見つめた。口元には皮肉な笑みを浮かべている。「中野社長、まだ昼間ですよ。夢を見るには早すぎます。それから......次から交渉の場では、もっとちゃんとした格好で来てください。九条グループは、そういうお店じゃありませんから」中野明美は、恥ずかしさと怒りで顔を赤らめた。ここまで誘っているのに、彼がまったくの無反応だなんて。まさか、九条美緒の方が自分よりスタイルが良いなんてありえない。あんな青臭い小娘、いったいどこが良いのかしら。彼女は悔しくてたまらなかった。九条津帆がドアまで歩いていくと、中野明美は唇を噛みし
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