九条時也は九条津帆をあやしながら、彼女に尋ねた。「苑、お前の心の中で、俺たち二人は、どんな関係なんだ?」「私はあなたの囚人よ!」水谷苑は、空虚な声で言った。「時也、私はあなたの愛する人なんかじゃない。ただの囚人よ!」彼女がそういう間に再び、夜風が吹き抜けた。九条時也は背筋が凍る思いだった。......その夜、彼は書斎で寝た。そして、夢を見た。夢のなかでは水谷苑が、九条津帆を連れていなくなってしまったのだ。そして九条津帆のために編んだマフラーやセーターも、全て持ち去られ......寝室はがらんとしていて、残されたヴェールだけが、静かに揺れていた。「苑!」九条時也は、冷や汗をかいて目を覚ました。目を開けると、窓の外はまだ暗かった。時計を見ると、まだ午前3時。九条時也は胸騒ぎがして、もう眠れそうになかったので、書斎を出て寝室へ向かった......寝室のドアは少し開いていて、明かりが漏れていた。中に入ると、水谷苑がリビングにいた。薄いネグリジェ姿の彼女は......灯りに照らされて、白く輝いていた。彼女はひどく痩せていたが、美しかった。九条時也は彼女が手に持っている薬を見て、静かに聞いた。「具合が悪いのか?こんな夜更けに、薬を飲むなんて」水谷苑は薬を飲み、「少し、胃の調子が悪くて」と静かに言った。彼女は、彼に多くを語りたくなかった。ここ最近、二人はまるで他人同士のように、距離を置いて暮らしていた。今夜も、そうなると思っていた。しかし、九条時也は不安だった。あの夢を見てから、いてもたってもいられなかった。彼女がまだ自分の傍にいることを確認したくて......水谷苑が部屋の奥へ入ろうとした時、九条時也は彼女の手首を掴み、ソファに押し倒した。そして、彼女の体の上に覆いかぶさった。華奢な彼女と対照的に、彼の体は逞しかった。そんな彼に彼女は、押しつぶされそうだった。彼は彼女の顔中にキスをした。鼻から唇、そして柔らかい耳朶へ......九条時也の体は火照り、今すぐ水谷苑を抱きたいと思った。彼は彼女の耳元で甘い言葉を囁き、「もう、他の女とは関係を持たない。お前だけだ」とまで言った。しかし、水谷苑はそれを嫌がった。彼とは関わりたくない。彼に抱かれたくない。どうして、また彼とセ
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