All Chapters of (改訂版)夜勤族の妄想物語: Chapter 451 - Chapter 460

482 Chapters

6. 「あの日の僕ら2」㊴

-㊴ 事件の終末- 龍太郎は今までに無い位に感情的になっていた、茂手木に賄賂を渡し自分の身を守ろうとして「大切な娘」を奪った男の前で大粒の涙を流していた。龍太郎「返せよ!!俺や守君、そして皆に好美ちゃんを返してくれよ!!「たかがアルバイト」じゃねぇんだぞ!!いい加減にしろよ!!」悟「・・・。」龍太郎「何とか言えよ!!無言のまま逃げれるとでも思ってんのか?!」悟「待てよ・・・。俺は義弘に言われてやっただけだよ、証拠もあるだろうがよ。」 龍太郎は悟のデスクや実行犯の持っていた手紙について思い出した、しかしそれらについても調べが付いている。 龍太郎は押収した手紙を取り出して告げた。龍太郎「これの事か?」悟「それだよ、ほら「貝塚義弘」って書いてあるだろう。」龍太郎「嘘を言うな、これを見てみろ。」 龍太郎は再び監視カメラの映像を見せた。龍太郎「その手紙は両方共お前がパソコンで作成して「貝塚義弘」と名前を付けたんだ、全ての罪を既に亡くなっている義弘に擦り付けて逃げる為にな。」悟「指紋は無かったんだろう、何処に証拠があるってんだよ。」龍太郎「おい、俺は1度も「指紋は無かった」と言ってねぇぞ。何で知っているんだ。」悟「いや・・・、えっと・・・。」龍太郎「知っているには理由があるんだろ、作成した文書や封筒を扱う時に手袋をして指紋が残らない様にしていたからなんだろ!!」悟「じゃ、じゃあトラックはどうなる!!俺は被害者なんだぞ!!それにどうやって14台も一気に売却したって言うんだ!!」龍太郎「馬鹿野郎!!しらばっくれるのもいい加減にしろ、従業員が帰った後に中古車買い取り業者の人間を工場に呼び出して査定と運転をさせたんだろうが!!今お前が言った「売却した」って言葉が何よりの証拠だよ!!お前が工場長になってから貝塚技巧が経営難に陥っていたのも調べがついてんだよ、俺のバックには誰がいると思っているんだ!!それに中古車買い取り業者にお前個人の名義でトラック14台が売却されたって記録も残っているんだぞ、貝塚社長に協力をお願いして調べて貰ったんだ!!幸か不幸か、お前がトラックを売った業者は貝塚技巧と同じで貝塚財閥の子会社だったんだからな!!」悟「何だって・・・、あの女(あま)・・・。」龍太郎「あの女だと、親会社の重役の顔もろくに覚えていないお前がよく言うよ!
last updateLast Updated : 2025-11-24
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6. 「あの日の僕ら2」㊵

-㊵ 死者からの手紙- 女子2人が新郎新婦を祝福する中、守は辺りを見廻していた。その様子を見て不審に思った桃が香奈子に分からない様に小声で尋ねた。桃(小声で)「さっきから何やってんのよ、お祝いする気ある訳?」守(小声で)「結愛がいないんだよ、招待状はちゃんと渡したはずなのにな・・・。」 ずっと社長を探す守の下に式場の従業員が近づいて来た。従業員「あの・・・、恐れ入りますが宝田 守様で宜しいでしょうか。」守「はい、そうですが何か・・・。」従業員「貝塚財閥の社長様からお手紙を預かっているのですが。」守「結愛から俺に?分かりました、受け取ります。」 守が白い封筒を2通受け取ると従業員はその場を去った、手紙を見てみると1通は香奈子宛でもう1通は守宛らしい。守「これは祝電で読んでもらった方が良いんじゃないかな・・・。」 そう思った守は先程の従業員を探した、しかしどこに行っても見つからなかったので受付に手渡した。受付「お預かりいたします、宝田様のお名前でお預かりすれば宜しいでしょうか?」守「「貝塚結愛」でお願いします。」受付「あの貝塚財閥の結愛社長の事でしょうか?」守「そうですけど、何かありましたか?」受付「失礼ですが、貝塚社長は先日竜巻に巻き込まれて亡くなったとお伺いしたのですが勘違いでしたかね?」守「いや・・・、初めて聞きましたけど。」受付「そうですか・・・、ではお預かり致します。」 守は自分宛の手紙を懐にしまって式場に戻った、教会では新郎新婦が誓いの言葉を牧師の後に復唱しようとする直前だった。 一番の見せ場に間に合った守は音を立てる事無く桃の横に座った、一息ついて親族の席の方を見ると光江と隆彦が涙を流して震えていた。牧師「今この2人は神の下で夫婦となろうとしています、新郎小比類巻裕孝、貴方は目の前の女性を妻とし、病める時も健やかなる時も愛する事を誓いますか?」 どうやらこの日は光江に気遣って母方の姓を名乗っている様だ。裕孝「はい、誓います。」牧師「宜しい、新婦吉馬香奈子、貴女は目の前の男性を夫とし、病める時も健やかなる時も愛する事を誓いますか?」 香奈子は産みの父である隆彦と再会して以来ずっと「吉馬」の姓を名乗っている。牧師「さぁ、皆さんシャッターチャンスですよ!!Then, you kiss to the bride
last updateLast Updated : 2025-11-24
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6. 「あの日の僕ら2」㊶

-㊶ 手紙が教えてくれた可能性- 披露宴会場で本日の主役の2人と共に笑いあり涙ありの宴が行われていた、余興として桃と美麗が新郎新婦席の2人の為にカラオケボックスに通い詰めて練習したと思われる最近でもベタだとされている某女性シンガーのとある曲を歌っていた。香奈子「2人とも下手すぎー!!」 高砂で腹を抱えて笑う香奈子と裕孝、練習では上手に歌えてはいたのだがどうやら緊張を和らげようと酒を呑みまくったので2人共顔が赤くなり酔いが回っていたのだ。 最後の両親への手紙の時、2人共片親ずつだったのでウェディングプランナーの提案で2人から隆彦と光江への手紙となった。光江の離婚など懐かしきエピソードや、コンビニや病院での感動の再会について書かれた手紙の内容を聞いて母と父は涙を流していた。新郎新婦も同様に泣いていたらしい、「感謝と歓喜の涙」と言うやつだろうか。 守は感動の涙と共に終わった披露宴から有志での2次会への会場へと先に向かった、新郎新婦が会場に選んだのは勿論皆の集合場所とも言える「松龍」だ。 手紙の内容、特に最後の1文が気になったので龍太郎が何か知っているだろうと踏んだ守は店主に結愛からの手紙を見せて質問した。守「龍さん、今時間大丈夫?」龍太郎「ああ・・・、少しだけなら。裏庭に来いや。」 2次会の為の特別料理を作っていた龍太郎は1段落したので裏庭に守を連れて行き、煙草を取り出して燻らせ始めた。龍太郎「どれどれ・・・、もう1度見せてくれるか?手書き・・・、の様だな。」 結愛直筆と思われるその手紙を受け取った龍太郎は守に質問した。龍太郎「守、この手紙は誰から受け取ったんだ?」守「会場の従業員さんからだよ、確か「結愛社長から手紙を預かっているのですが」と言って俺に渡して来たんだ。」龍太郎「そうか・・・、その従業員の名札は見たか?」守「ごめん、ただその人名札してなかったんだ。」龍太郎「じゃあ、従業員ってどうして分かったんだよ。」守「制服だよ、周りと同じ制服を着ていたんだ。」龍太郎「そうか・・・、待ってろ。」 龍太郎は携帯を取り出して挙式と披露宴の会場を経営する会社へと電話を掛けた。龍太郎「もしもし、私警視総監の松戸と申します。1つお伺いしたいのですが、そちらの従業員の方が名札をせずに業務をされる事はあるのでしょうか?」 偶然だが電話に出たのは
last updateLast Updated : 2025-11-29
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6. 「あの日の僕ら2」㊷

-㊷ 早すぎる再訪と新事実- 通常営業を止めて店自体を貸し切りにした龍太郎は普段のメニューではなく新郎新婦の為に特別に「満漢全席」の様な物を用意する事にした、本人は嫌だったらしいが致し方が無いので王麗が父である特級厨師・張朴に依頼して手伝って貰っていた。龍太郎「けっ・・・、じじいに来させるほどの事じゃねぇだろ。」張朴「師にむかって何を言うとるか、相も変わらず可愛げのない弟子じゃな・・・。さっきもわし1人に調理を押し付けるし・・・。」王麗「もう・・・、2人共折角の宴なんだから喧嘩しないでよ・・・。」龍太郎「仕方ねぇか・・・。」 店主は調理をしながら辺りを見廻した、先程まで裏庭にいた守しか見当たらない。龍太郎「守、そう言えば他の連中はどうした?特に美麗(みれい)なんだが・・・。」守「もうすぐ来ると思うよ、俺先に来ただけだから。美麗(メイリー)なら桃と一緒に来るんじゃないか?2人でずっと呑んでたし。」龍太郎「ずっと呑んでたって?あいつ・・・、手伝いの事忘れてやがんな。」守「余興で緊張してたらしいぜ、俺で良かったら手伝おうか?丁度暇だから構わないよ。」 龍太郎はこの日使う円卓上の写真を守に見せた。龍太郎「すまんがこの写真の通りにあそこに置いてある道具を並べてくれないか?」張朴「すまんな守君、バイト代は弾んどくよ、儂の馬鹿な弟子がな。」龍太郎「馬鹿とは何だ、くそじじい。早く作れよ。」張朴「じじい使いが荒いの・・・、修業を終えて結婚したばかりの頃とは大違いじゃ。」守「まあまあ、取り敢えずあれを並べるんだね。」龍太郎「すまんが頼むわ。」 守が横に添えられた手袋をはめて円卓上に什器等の道具を丁寧に並べていると外から聞き覚えのある女性と男性の声が、しかも結構最近。女性「お前な、昨日の内に書類済ませとくって約束だっただろうがよ。」男性「俺の所為じゃねぇよ、後からリンガルスさんが追加して来たんだよ。俺じゃなくてお前のサインが必要な書類ばっかりだから何も出来なかったの。」女性「願書へのサインはまだ日にちが大丈夫だろうが、ダンラルタ王国からの分がまだ来てないんだぞ。」守「あの声・・・。」 守は聞き覚えのある声の主を確認する為に出入口に向かった、やはり最近はずっとスーツ姿の「あの2人」だ。守「結愛に光明!!」結愛「悪い悪い、光明が「仕事が終わ
last updateLast Updated : 2025-11-29
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6. 「あの日の僕ら2」㊸

-㊸ 双子の相違点- 目の前にいるスーツ姿の女性に驚きを隠せない双子の妹はその場で数秒程停止した後に目を輝かせ始めた、未だ現実を信じる事が出来ずにいた。真美「あの・・・、貝塚財閥社長の結愛さんですよね?」結愛「そ・・・、そうですけど・・・。」 ぐいぐいやって来る真美に思わずたじろいでしまう結愛、何故か「大人モード」のスイッチが入ってしまった。結愛「待って、君って確か喫茶店で働いてた守の彼女の・・・。」真美「それは姉の真帆なんです、私達双子でして。私は妹の真美です。」 すると出入口に姉の姿があった、彼氏が先に会場を出た事を知らなかったのでずっと顔をきょろきょろさせていた。ただどうしてこの2人が招待されたのかは分からないが。真帆「守!!何で先に帰っちゃったの?!寂しかったんだから!!」守「悪かったよ、龍さんに用があったから急いでたんだ。」真帆「だからって真帆に一言も無いなんて酷い、ちょっとこっち来て!!」 守が真帆に近付くと真帆は守の両手で顔を挟んでキスをした、寂しい思いをした分濃厚に交わした。真帆「やっぱり・・・、大好き・・・。」結愛「お前ら人前でよくやるぜ・・・。」 結愛の声に反応した真帆は急に大人しくなった。真帆「あ、この前の社長さんですよね。新しいオレンジジュース入ってますよ。」結愛「助かるよ、君ん所のジュース美味いんだよな。」 何気ない会話を交わす2人に割り込む様に真美が結愛に色紙を渡した。真美「社長さん、サイン下さい!!」結愛「やっぱり読モもしてみるもんだな、もう俺もすっかり有名人だよ。」真美「読モってどういうことですか?」 憧れの社長本人の前で目を丸くする真美。真帆「すみません、真帆と違って真美はファッション雑誌は全く読まないんです、経済とビジネス系の雑誌ばっかりでして。」真美「「今活躍する女性若社長」の取材記事読みました、いつか真美も貝塚財閥に入社したいです。」 真美は懐から結愛の取材記事が載っている雑誌も取り出した、どうやら宝物として持ち歩いている様だ。真美「お願いします、これにもサイン下さい!!」結愛「嗚呼・・・、それなら・・・。」 いつも通りの黒いスーツで写っているので龍太郎に白のマジックを借りて漢字で「貝塚結愛」と崩して書いた。結愛「会社で会えるのを楽しみに待ってるからな・・・。」 結愛
last updateLast Updated : 2025-11-29
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6. 「あの日の僕ら2」㊹

-㊹ 赤かった、そしてまたやらかした娘- 今日の主役以上に宴を楽しんだ娘を見た母は少し引き笑いをしながら連れて来てくれた「紫武者(パープルナイト)」に感謝した、美麗が宴を楽しんだ事は主役の1人である香奈子が誰よりも証明していた。王麗「すまないね真希子、緊張していたからってこんなに赤くなるまで呑むなんてね。」真希子「構わないさ、運転は趣味みたいなもんさね。」王麗「お礼と言っちゃ難だが、2次会ではいっぱい呑んでおくれ。」真希子「勿論そのつもりさ、じゃあこいつを置いて来るね。」 真希子は再び排気音を響かせて家に帰って行った。香奈子「それにしても美麗強いね、あんなに吞んだのに。」王麗「そりゃそうさ、居酒屋の娘だからね。(中国語)あんた、父ちゃんの手伝いすっぽかしたね。父ちゃんキレてたよ・・・、今月と来月のお小遣い天引きだね・・・。」美麗(中国語)「げっ・・・、嘘でしょ・・・。」 勿論冗談である、ただ手伝う事を忘れていた事を反省させる為に言っただけだが効果は抜群らしい。王麗(中国語)「じいちゃんまで来ているって言うのにどういうつもりだい。」美麗(中国語)「余興で緊張してたの、仕方ないじゃん。それにもうほぼ素面だもん。」 ふと王麗は店のカラオケで美麗が余興の練習をしていた場面を思い出した。王麗(日本語)「あれ?そう言えば一緒に余興をしてた桃ちゃんはどうしたんだい?」 美麗とは打って変るかのように香奈子と裕孝の肩を借りてふらふらと歩く桃。王麗「あらあら、美麗と呑み比べでもしたのかね。烏龍茶でも持って来るから挟みな。」 王麗は踵を返して調理場に戻った、右手で美麗の右耳を引っ張りながら。美麗(中国語)「痛いよ、何すんの!!」王麗(中国語)「反省させるためだよ、あんたまたやったね・・・。」 そう、生前の好美と香奈子の引っ越しを手伝った時の様に美麗がまた王麗のトラックでドリフトしたらしく、実は地元の走り屋同士での会話はその噂で持ちきりだったのだ。王麗(中国語)「あんた今度は山でやったんだってね、真希子に聞いたよ。事故したらどうするつもりだったんだい、それにタイヤがちびっているじゃないか。これは峠を走る用の車じゃないの、ビールを運ぶ用。あんたのはあれ!!」 王麗が指差した先に紺色のカフェラッテが1台、興奮した美麗は日本語に戻った。美麗(日本語
last updateLast Updated : 2025-11-29
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6. 「あの日の僕ら2」㊺

-㊺ 涙雨か祝いの雨か- 今回の2次会では敢えて高砂を作らず、回転テーブルでゆっくりと飲食を楽しめるようにした。いつもの松龍での楽しく酒を呑む香奈子、ただ自らが着る衣装が恥ずかしさを覚えさせていた。香奈子「どうしてチャイナ服な訳?これって美麗の役割じゃないの?」美麗「私も普段からそこまでがっつりとしたものを着るのは無いかな・・・。」 理由は1つだけ、勿論龍太郎の趣味だからである。もしも自分の店で結婚式の披露宴やその2次会を行う事になったら花嫁に着てもらおうと用意していたのだった、ただ男性用の物を用意していなかったので少し違和感があるが。 少し顔を赤らめる今日の主役を遠目に見ていた真帆がその姿を羨ましがっていた。真帆「香奈子お姉ちゃん良いな・・・、真帆も守とあんな感じで結婚したいな・・・。」守「う・・・、うん・・・。」 チャイナ服姿の香奈子に学生時代の好美を重ねてしまっていた守、理由は他でも無く松龍でアルバイトを始めたばかりの頃の好美と出逢って守の恋が始まったからだ。 ため息をつきながら紹興酒を呑む守を見た真帆が守の服を掴んで振り向かせた、恋人の表情は少しながら嫉妬心を感じさせた。真帆「どうして真帆を見てくれないの、今の彼女は真帆なんだよ!!」守「ご・・・、ごめん・・・。」 再び紹興酒を口にする守、真帆は服を掴む手の力を強くした。真帆「また好美さんの事を考えていたの?真帆は好美さんみたいにはなれないの?」 真帆は体を小刻みに震わせ、大粒の涙を流し始めた。守は号泣する恋人にどう言った言葉をかければ良いのか悩んでいた。一先ず・・・、顔を近づけた・・・。守「悪かったよ、そうだよな・・・。今の彼女は真帆、俺は真帆と新たな一歩を踏み出したんだよな。」真帆「そうだよ、忘れちゃだめだって言ったじゃん!!」美麗「守君、こんなお祝いの席で泣かせちゃ駄目でしょ!!・・・ってあらら。」 守とキスを交わす真帆の涙の雫が床に落ちた瞬間、出入口から雨の音がしてきた。真希子は出入口から少しだが強まる雨を眺めていた。真希子「あらあら、お祝いの日に雨だなんて・・・。」 そんな真希子の言葉を聞いてそっと横に立つ結愛。結愛「大丈夫ですよ、これは何処かで読んだ話ですけど結婚式は雨の日にした方が縁起が良いらしいですよ。」真希子「そうかい、じゃあこれは神様からの祝い
last updateLast Updated : 2025-11-29
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6. 「あの日の僕ら2」㊻

-㊻ しっかりと見ていた友人- 守も胸をドキドキさせながら耳を塞いだ、周囲にいる数人も守と同様にしていたのだが事情を知らない真帆や真美は訳が分からなくなっていた。真帆「どうして聞こうとしないの?」真美「お姉ちゃんの言う通りだよ、裕孝さんが可哀想じゃん。」 しかし理由はすぐに分かった、裕孝を擁護しようとした双子まで耳を塞ぐ程の理由。真美「何これ・・・。」真帆「流石にこれは酷い・・・。」 そう、裕孝は重度の音痴だった。この事が発覚したのは中学時代の遠足での事だったかと守は思った。 当時、遠足の目的地へと向かう観光バスの車内、人工衛星を利用した最新式のカラオケで盛り上がっていた時の事。友人(当時)「次は裕孝が行けよ。」裕孝(当時)「俺か?俺は歌が苦手なんだよ。」守(当時)「そう言う奴に限って上手かったりするんだよ。」裕孝(当時)「仕方ねぇな・・・。」 渋々分厚い本を開いて曲を探す裕孝、お気に入りの「あの曲」を見つけるとすぐさまリモコンで番号を入力した。 数秒後、前奏が流れ始めた。友人たちが皆笑顔を見せた。友人(当時)「お前、これ好きだよな。皆これ好きだから良いと思うぜ。」 シンセサイザーで奏でられた聞き心地の良い前奏、そして深く息を吸い込んだ裕孝。 次の瞬間、バスの車内が地獄へと化した。友人(当時)「だ・・・、誰か!!曲を止めろ!!」 運転手も動揺したのか、バスが安定性を失いかけているのでこのまま行くとその場にいた全員が死にかねなかった。ただ、やっとの思いで守が曲を止めるまでは。守(当時)「こう言う事だったんだな・・・。」裕孝(当時)「だから言っただろうが・・・。」 それから目的地に到着するまで車内にはずっと静寂が広がっていた、この遠足以来ずっと裕孝は人前で歌う事に抵抗していた。守も含めて誰一人ずっと裕孝の歌を聞いた者はいなかったと言う。 しかし、今日は人生の大きな門出の日。裕孝は意を決して歌う事を決めたのだ、それを察したのか香奈子がもう一方のマイクを手にした。裕孝「な、何やってんだよ。」香奈子「良いじゃない、丁度デュエットの曲なんだから。」 確かに香奈子は間違ってはいない、歌詞が色分けされて表示されているのだから。一応ケーキ入刀という形で夫婦初めての共同作業は行ったが香奈子は自ら進んで裕孝と何かを行いたかったのだ。
last updateLast Updated : 2025-12-01
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6. 「あの日の僕ら2」㊼

-㊼ 来ると思わなかった文- 2次会の宴もたけなわとなり、参加した面々が各々の家路につき始めた頃、守は体を小刻みに震わせながらさり気なく帰ろうとする結愛と光明を呼び止めた。守「待てよお前ら、俺に言わないといけない事があるんじゃないのか?」 守の言葉に惚けたふりをする結愛、どうやら何事も無かったかのようにその場を離れたかったらしい。結愛「何だよ、俺がお前に隠し事をした事があるか?」守「お前らの事、龍さんに聞いたんだぞ。ちょっとこっちに来いよ!!」 守は自らの気持ちを表すかのように強く結愛と光明の腕を引いた。結愛「痛ぇよ、スーツが破れるだろうが!!これ新調したばっかりなんだぞ!!」光明「守、お前何興奮してんだよ、ちょっと落ち着け!!」 守は至って冷静だった、しかし以前龍太郎から聞いた事が本当に事実なのか確かめたかったのだ。守「お前ら、幽霊なのか?竜巻で一度死んだって聞いたぞ。」真帆「守、どういう事?真帆、初めて聞いたよ!!」守「今から全てが分かるよ、ちょっと待ってて。」 恋人を怯えさせる訳には行かないと優しく声をかける守。光明「守には嘘つけないな。結愛、この際ハッキリと言ってしまおうぜ。」結愛「仕方ねぇな・・・、全て話すよ・・・。」 結愛は先日、原因不明の竜巻で自らを含めた貝塚財閥の人間数人が亡くなった事、そして異世界に転生を果たして魔法使いになった事を話した。結愛「死んだって実感が無いんだよ、それに「転生」って言っても姿はこのままだから「転移」って言った方が良いかも知れん。ただ「神様」ってやつのお陰で色々と便利な生活をしているのは確かなんだ。」 話の次元が違い過ぎるので頭が追いつかない守、その横で真帆も頭を悩ませていた。真帆「結愛さんは「あの世」から蘇ったって事?」結愛「そうでは無いんだな・・・、向こうの世界の人間だけどこっちの世界を訪問したって考えてくれた方が良いかも知れんな。」 守は挙式の時に受け取った結愛からの手紙の事について問いただした。守「「好美に会ったら」ってどういう事だよ、お前あいつと面識ねぇだろ。」結愛「えっとな・・・、ダルランさんを通して知り合ったんだよ。」守「ダルラン?俺の知り合いにそんな名前の人いねぇぞ。」結愛「悪い、光さんだよ、吉村 光さん。あっちの世界で結婚して苗字がダルランになったんだ。そ
last updateLast Updated : 2025-12-01
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6. 「あの日の僕ら2」㊽

-㊽ 漏洩- 結愛に渡された手紙にずっと感動の涙を流す守、行き方も分からない遠い世界でだが好美が生きている事を心から喜んだ。手紙に書かれている好美の意志に反してしまう思考だが、正直、「会いたい・・・。」 真帆は体を小刻みに震わせて大粒の涙を流す守の肩に手をやった。真帆「守、良かったね。」結愛「お前充実してんな、いっぱい女の子に囲まれてよ。」龍太郎「お・・・、お前遂に二股か?」守「そんな訳ねぇだろ、今の彼女は真帆だぞ!!」 守の言葉に少し顔を赤らめる真帆。真帆「それ、守の方から言うのは反則だよ。真帆がその言葉で守を煽るのが楽しいのに!!」結愛「良いぞ真帆ちゃん、どんどん言ってやれ!!」 すると調理場から後片付けを全て終わらせた王麗が出て来た。王麗「さっきから見ないと思ったら父ちゃんもここにいたんだね?皆で楽しそうじゃないか、何の話だい?」結愛「守がリア充の癖に彼女の目の前で別の女に発情してるって話だよ。」守「ば・・・、馬鹿!!何言ってんだよ!!」王麗「守、あんたも悪い子だね、真帆ちゃん泣いてるじゃないか。」 よく見ると真帆の目からは雫が、そして王麗の手には目薬が。守「やられた・・・、女将さんもやってくれんな・・・。」真帆「えへへ、真帆の前で好美さんの事考えているからだよ!!」王麗「女の涙は何よりも強いのよ、分かった?」 裏庭で数人が談笑していると店内から女性の大声が聞こえた、中国語で話している事から察するに声の主は美麗。美麗(中国語)「何これ、どういう事?!」龍太郎「何だアイツは、いきなり何言ってんだ。」王麗「私が行ってみるよ、皆ちょっと待ってな。」 王麗は声の方向へと歩き美麗に声を掛けた。王麗(中国語)「何だい、大きな声出して、近所迷惑になっちゃうだろう。」美麗(中国語)「ママ、これ・・・。」 王麗は美麗が指差した方向に目をやった。王麗(中国語)「これは・・・、騒動だね・・・。」 意外と冷静だった王麗は裏庭に急いだ。王麗(日本語)「結愛ちゃん、まずい事になったよ。皆もちょっと来てくれるかい?」 裏庭のメンバーは王麗に連れられ美麗の座る回転テーブル席へと向かった、そして言われたままに店内のテレビを見た。結愛「どうなってやがる・・・。」 テレビに映っていたのは結愛含む貝塚財閥の数名の死亡が発覚したという報
last updateLast Updated : 2025-12-01
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