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6. 「あの日の僕ら2」68

Penulis: 佐行 院
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-15 09:10:14

-68 嘘がきっかけの夜-

 連続でのプロポーズがあった後で守には少し気になっている事があった、安正と美麗が本格的に付き合い始めたきっかけが香奈子の引っ越しの日に繰り広げられたドッキリだった事は覚えているがそこからどういった経緯があったか、そしてどういった進展があったかを全くもって耳にしていなかったからだ。

守「なぁ安正、ドッキリのあの日からお前と美麗(メイリー)の間にあった良い思い出の話でも聞かせてくれないか?酒の肴にでもしたいんだけど。」

安正「おいおい、こんなに美味そうな料理が並んでいるのにそれ以上の肴を俺が用意出来るとでも思うか?」

真帆「真帆も聞いてみたい、美麗(みれい)お姉ちゃんにあった幸せなエピソード。」

安正「真帆ちゃんが言うなら・・・、でも酒が不味くなっても知らねぇぞ・・・。」

 これは美麗が福来子達とドッキリを仕掛けた数週間後の話だ、安正は友人と大学近くにある鶏料理が自慢の食堂でランチをしていた。

友人(当時)「安正、最近彼女さんとどうなんだよ。今夜だってちゃんと考えているのか?」

安正(当時)「今夜って何なんだよ成久(なりひさ)、俺は今夜バイトだぞ。」

 安正の友人である加州(かしゅう)成久はちゃんと恋人の為の行動を安正がとっているか心配だった、予想はしていたがバイトを理由に元々高嶺の花と呼んでいた彼女の事を蔑ろにして欲しくは無かったからだ。

成久(当時)「ちょっと待てよ、じいちゃんに電話してみるから。」

安正(当時)「店長に?」

 そう、成久は当時の安正がバイトをしていた弁当屋の主人の孫だった。成久が片手に持った箸にチキン南蛮を挟んだまま携帯を操作して店に電話を掛けると電話に出たのは話に出て来た本人の祖父だった。

祖父(当時・電話)「お電話ありがとうございます、出来立て弁当のカシューナッツです。」

 いくら苗字が加州だからって店名の決め方が雑過ぎやしないだろうか、ただ今現在での論点は決してそこでは無い。成久は笑いを堪えながら祖父に声をかけた、その傍らで箸に挟んだままのチキン南蛮からはタルタルソースが完全に落ちてしまったみたいだ。

成久(当時)「あ、もしもしじいちゃん?今夜って忙しいの?」

祖父(当時・電話)「何だ成久か、今夜か?忙しいも何も、今日は昼営業だけにしているはずだぞ?誰か出鱈目でも言ったのか?」

成久(当時)「いや、そう言う訳じゃ
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    -70 嫉妬の矛先- 2人は綿菓子の屋台から数メートルに渡り伸びる行列に並んで自分達の順番を待っていた、十数分経過してやっと自分達の番が近づいて来た時に恋人たちはある事実に気付いた。安正(当時)「結構大きいね、どうしようか。」美麗(当時)「お腹いっぱいになっちゃったら他の屋台を楽しめなくなっちゃうね、最初から困ったな・・・。」 2人は数分の間黙り込んだ後に互いを見つめ合って声を掛けた。2人(当時)「半分こしようか。」 顔を赤らめながら手を繋いで待つ恋人達の様子からは初々しさも見て取れたのだが、互いが同じことを考えていた事による照れと嬉しさで2人の顔はもっと赤くなった。美麗(当時)「もうすぐだね、甘い良い匂い・・・。」 それから数分経過して2人の番まであと2組となった、ここまで近づくと屋台の中の様子を伺えたのだが見た目からしてどう考えてもヤクザ者の幹部と言える40~50歳代の男性と下っ端らしき20~30歳代の男性の2人で営業している様だった。ただ周囲でこの屋台の綿菓子を楽しんでいる客たちは本当に美味しそうに食べていた、どうやらこの屋台は当たりの人気店らしい。 そして2人の番となった、注文は「下っ端」の方が受け付けている様だ。下っ端(当時)「いらっしゃい、2つで良いかい?」安正(当時)「いや、1つでお願いします。」下っ端(当時)「何でだよ、ケチくせえ事言うなよ。」 すると隣で見事な綿菓子を作っていた「幹部」が「下っ端」を怒鳴った、2人の様子から恋人たちの意図を汲み取ったのだろうか。幹部(当時)「サブ!!余計な口たたいてんじゃねぇ!!」サブ(当時)「す、すいません、兄・・・、大将・・・。じゃあ君ら1つね、300円ね。」大将(当時)「待てサブ、君ら怖い思いさせてすまねぇな。こう見えてもヤクザから足洗って堅気の人間として頑張ろうと思ってんだよ、実は俺達は昔からある恩人のお陰で料理やお菓子作りが密かな趣味だったからこうやって綿菓子の屋台を出してんだけどな。どうやらまだヤクザ者の血が抜け切れてねぇみたいだ、悪い事しちまったからこれは俺からの侘びだ、タダで持って行ってくれ。こう言っちゃなんだが、幸せな2人に俺からの手向けって事にしといてくれや。」美麗(当時)「良いん・・・、ですか?」大将(当時)「ああ・・・、俺は決して嘘はつかねぇ・・・。」 

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    -69 いつもと違う雰囲気を楽しむ恋人達- 美麗は相も変わらずのチャイナ服で大学の授業を数コマこなした後に友人の安倉 優(あくら ゆう)と安正達のいる食堂へと入った、2人はこの日朝から連絡を取っていなかったのでまさかこのランチタイムにこの食堂で会うとは思ってもいなかった。優(当時)「ねぇ美麗、今日もあんたは昼限定ランチで良いよね。AとBのどっちにする?」美麗(当時)「じゃあ・・・、Cで!!」優(当時)「Cね・・・、何のセットだったかな・・・、ってあるかぁ!!」美麗(当時)「それと、お腹空いてるからご飯は小盛ね!!」優(当時)「どっちなのよ!!ボケを連発しないでよ、ツッコミが追いつかないじゃん。」 どうやら当時、学科内で美麗はクラスのボケという役柄を担っていた様だ。その事を一切知らなかった安正は恋人を見かけてポカンとした様子だった。安正(当時)「美(メイ)・・・、麗(リー)・・・?」美麗(当時)「安正?!何でいんの?!」安正(当時)「たまにはここで食うかってなったんだよ、この後授業無いから。」 後は帰るだけになった安正は大学より自宅からの距離が近いという理由だけでこの食堂を選んでいた。優(当時)「本当にこの人と付き合ってたんだ、じゃあ今夜も一緒に?」美麗(当時)「いや、残念だけどバイトがあるんだって。」 安正は淋しそうな表情を見せる彼女を急いで宥めた。安正(当時)「それがさ、今夜休みになったんだ。夜は店閉めるって言ってたから。」 安正の言葉に黙っていなかったのは他の誰でも無く優だった、優は安正のバイト先の常連だったそうで本人にとってはかなり重大な緊急事態が発生したらしい。優(当時)「じゃあ今夜私が予約してる焼肉弁当は?18:00に5人ま・・・!!」成久(当時)「待って、ちょっとこっち・・・。」 優の言葉に焦りの表情を見せた成久は優を少し離れた場所へと連れて行った、優は成久の咄嗟の行動に驚きの表情を隠せなかった。成久(当時・小声)「すいません、安正達に2人の時間を過ごして貰おうと嘘ついたんです。じいちゃんが言うには勿論今夜も営業しますし、焼肉弁当は肉多めで用意しますから話を合わせて頂けますか?」優(当時・小声)「ふふん・・・、ご飯も大盛りに出来ます?」 優のノリの良さは地元でも評判があったらしい。優(当時)「予約・・・、明

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    -67 高嶺の花による幸せの連鎖- 目の前で新たな花嫁の誕生を目の当たりにして美麗は紹興酒を片手に立ち尽くしていた、娘の様子をじっと見ていた女将は左肩に右手をそっと置いて尋ねた、勿論周りに気付かれない様に中国語で。王麗(中国語)「どうした?寂しくなっちゃったのかい?」美麗(中国語)「うん・・・、私も今すぐ安正に会いたい・・・、2人が羨ましい。」王麗(中国語)「相も変わらずあんたは寂しがり屋だね、そう言うと思ったよ。」美麗(中国語)「えっ・・・?!」 王麗が店の出入口を指差した瞬間、安正がダッシュで店の前に現れた。これこそナイスタイミングと言えるやつだ。美麗(日本語)「安正!!どうして分かったの?!」安正「お前が呼んだんだろ、10分以内に来いって言ったの誰だよ!!」美麗「私・・・、そんな事言った覚え・・・。」 まさかと思った美麗はすぐ後ろにいた母親の方に目をやった、王麗はそれに気付くと娘に向かってウィンクした。美麗「ママ・・・、いつの間に?」王麗(日本語)「何年あんたの母親をやってると思ってんだい、お見通しに決まってるじゃないか。」 母親の気の利いた行動に感動した娘は涙ながらに出入口へと走った、と言ってもほんの十数メートルなのだが。ただ本人にとっては遠かった、それが故にギュッと抱きしめた。美麗「安正!!会えないと思ってた!!」安正「大袈裟だよ、昨日も会ったじゃないか。」王麗「美麗・・・、本当に安正君の事好きなんだね。」 王麗は安心した、秀斗が亡くなってから美麗の笑顔を見る度に無理しているのではないかと心配していたからだ。安正の顔を見て心から笑っている娘の表情を見た女将は肩に重くのしかかった荷が下りた気がした。それ位、娘には幸せになって欲しいと思っていたからだ。きっと亡くなった秀斗もそう願っているはず、それも理由の1つだった。王麗「安正君、私はあんたに謝らないといけないみたいだね。」安正「女将さんが俺に?」王麗「ほら・・・、結構前の事だけど店の座敷席であんたと美麗がキスしてたのを目撃して思わずあんたの事を見下してしまった事さ。」安正「あの事か・・・、あれは俺も悪かったから女将さんが謝る事は無いよ。」王麗「そうかい?そう言ってくれるなら安心したよ。」 娘が心から愛している男を見下していたが故に未だに2人の事を認める事が出来て

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    -66 突然の吉報- 守の笑顔、それは真帆が1日中待ちわびた瞬間だった。好美の酒による酔いからか、それとも嬉しさからか、真帆は大粒の涙を流し始めた。守「おいおい、どうして真帆が泣くんだよ。」 真帆「だって・・・、だって・・・、ずっと守が辛そうにしてるのに、真帆は何も出来なくて・・・。」 そう、真帆は悔しかったのだ。たった1人の肉親を亡くした恋人の為に何が出来るかずっと暗中模索していたらしい。それを聞いて守はどうするべきか悩んだ、「ごめん」と一言謝るべきかとも思った。  その瞬間、真帆が泣き続けながら守に強く口づけした。恋人の咄嗟の行動により、守は自分が悩んでいた事などどうでも良くなっていた。そこにいた全員が空気を読んでいたのか、数分もの間、静寂が松龍の店内を包んでいた。  ただその静寂は、遅れてやって来た正達によってかき消された。正「おいおい、心配して急いで来てみたらこのザマかよ。でも安心したわ。」 桃「正、何でここに?!」 桃は先程の電話の事を知らなかったので彼氏が来るとは思わなかった、しかしそれ以上に驚く理由が別にあった。桃「あんた、1週間もの間何の連絡をよこさずに何してたのよ!!私ずっと・・・、会いたかったのに・・・。」 正に会えないどころか声も聞けない間ずっと1人で待っていた桃に謝罪したのは正本人ではなく、まさかの父の広大だった。広大「桃ちゃん、すまんな。こいつの電話を連絡用に俺が借りていたんだよ、充電器を忘れててな。」 龍太郎「お前は昔から変わらないな、おっちょこちょいと言うかド天然と言うか。」 正「だから、本当にごめん・・・。」 桃「そんな言葉・・・、欲しくない!!」 桃は大声で反発すると正を強く抱きしめた、勿論その行動には今と会えなかった時の分の気持ちが込められていた。桃「もう帰って来ないのかと思ってた、ずっと会えないとも思ってた。私毎晩、ベッドやお風呂で泣いてたんだから。」 正「ご・・・。」 正はもう一度謝ろうと思ったが、きっと桃が望まないだろうという抵抗感を抱き、言葉が止まってしまった。桃「また謝ろうとしたでしょ、「欲しくない」って言ったじゃない。」 正「じゃあ・・・、どうしろって言うんだよ・・・。」 友人想いなのも、不器用なのも高校時代からずっと変わらない正には超が付く程の難問だった。桃「黙って・・・

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    -65 女は強し- 守は先程の店主の言葉が気になっていた、表情をよく見れば酒に酔って赤くなっている一同とは打って変わった様に蒼白していた。守「龍さん、「まずい」ってどう言う事だよ。」龍太郎「実はな・・・、あの焼酎は好美ちゃんが亡くなる数日前に製造が中止されたんだよ。いつも俺らが通っている卸業者の社長が言うには製法を唯一知ってる御仁がぎっくり腰で倒れちまったらしいんだ。普段店では出さない酒なんだがな、好美ちゃんが気に入ったって言ってたから特別に卸して貰っていたんだ。実はその社長もバイトをしていた頃の好美ちゃんの事を気に入っていて葬儀に参列していた時、号泣していたのを見かけてな。よっぽどショックになったのか、暫くの間会社に顔を出さなかったそうなんだ。」守「その社長さんとは連絡は取れるの?」 龍太郎は卸業者の番号にスピーカーフォンで電話をかけた、電話に出たのは社長の息子だった様なのだが守にとって聞き覚えのある声がした。龍太郎「俺だ、父ちゃんいるか?」息子(電話)「父ちゃんなら今トイレに入ってるよ、出たらそっちに行くって言ってたけど俺も行って良いかな?」 守は意外な電話の相手の声の主に驚いた。守「た・・・、正か?」 そう、電話に出たのは守の友人で桃の彼氏の橘 正だった。正(電話)「その声は守か・・・、大変だったみたいだな。大丈夫か?」守「何とかな、龍さん達のお陰で葬儀も無事終わったし。」正(電話)「そうか、行けなくて悪かったな。実はついさっき母ちゃんの実家から急いで帰って来たんだけど親父の携帯に女将さんから電話があってな、守達が松龍で集まってるって聞いたから俺も親父と行こうとしていたんだよ。」守「是非来ると良い、桃ちゃんもいるからよ。」正(電話)「桃が?まさかと思うけどかなり・・・。」守「お赤くなっておられるよ、正に会えなくてヤケになってるんじゃないか?」正(電話)「仕方ないな・・・、急いで行くわ。あ、父ちゃん出て来た。父ちゃん、龍さんから電話だよ。」 正は父親に電話を引き継いだ。正の父(電話)「もしもし、お待たせ。どうした?」龍太郎「広大(こうだい)か、こっちこそすまねぇ。今から来るって聞いたからついでに例の焼酎を持って来てほしいんだよ。」広大「あれか・・・、あれは好美ちゃん用に卸してただけだからな。在庫があるか見て来て良いか?

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