「うん」土曜日の朝、玲奈は青木家に戻って食事をとり、裕司の新しいプロジェクトについて様子を聞いた。問題ないと確認できて、玲奈はようやく安心した。午後二時過ぎ、彼女は車を運転してキャンプ場へ向かった。到着したとき、辰也と有美たちもちょうど着いたところだった。辰也が連れてきたスタッフたちは、テントを張ったり、バーベキューグリルを組み立てたりしていた。ここ数日雪が降り続き、山には一面の雪が積もっていた。彼女の姿を見つけると、有美が駆け寄ってきて、雪だるまを一緒に作ろうと手を引いた。かつて彼女も、茜とよく雪だるまを作ったことがある。玲奈にとって、雪だるま作りは難しくない。あっという間に、ふたりで小さな雪だるまを完成させた。有美は雪だるまのためにわざわざスカーフを用意して、完成後に使用人に頼んでスカーフとニンジンを持ってきてもらっていた。辰也が玲奈の方へ歩み寄ってきた。玲奈は彼を見たが、特に言葉を交わさなかった。辰也は彼女の隣にしゃがみこんで言った。「長墨ソフトで働いてるんだって?」玲奈は雪だるまを整えながら、顔も上げずに答えた。「うん」あの日、藤田総研で見かけたときの、智昭と優里に対する冷ややかな態度を思い出しながら、彼は尋ねた。「いつから行ってた?」玲奈は答えた。「少し前から」辰也はもっと詳しく聞きたかったが、玲奈がそれ以上話す気がないのを察し、話題を切り替えた。「全部で五回だ」玲奈は一瞬間を置いて、その「五回」が有美に付き添う回数を意味していると理解した。「わかった」と静かに答えた。有美はスカーフを二本持ってきて、もう一つ大きいのも作り、一大一小で並べるの、まるで彼女と玲奈みたいにと言って、辰也にも手伝わせていた。辰也は黙ってその指示に従った。大きな雪だるまが完成すると、有美は辰也に自分と玲奈の写真を撮ってほしいと頼んだ。辰也は自分のスマホで玲奈の笑顔をカメラ越しに見ながら、何枚もシャッターを切った。楽しい時間はあっという間で、写真を撮り終えた頃には空が薄暗くなり、バーベキューの香ばしい匂いが漂い始め、テントには灯りがともっていた。辰也が尋ねた。「海鮮、食べる?」玲奈は「うん」と言った。辰也は串焼きをいくつか彼女に手渡した。この冬キャンプ場にはそれなりに多
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