玲奈が車を運転して病院を出て間もなく、青木おばあさんが何かを思い出したように急に言った。「智昭が病院に来たってことは、茜ちゃんは?茜ちゃんはどこに行ったの?」玲奈が何も言わないうちに、青木おばあさんの表情が険しくなった。玲奈はその表情を見てすぐに察した。智昭が茜を置いて優里と一緒に病院に藤田おばあさんを見に来たことに、彼女は不満を感じているのだと。「ちゃんと配慮してるはず」玲奈はそう答えた。青木おばあさんは信用していない様子で言った。「またこんなことをするようなら、玲奈、裁判でもなんでもして、茜ちゃんの親権は必ずあなたが取るのよ!」玲奈は少し黙ったあと、静かに「うん」と返した。青木おばあさんの表情は、まだ晴れなかった。青木家に戻ると、青木おばあさんは真っ先に車を降りた。その時、玲奈のスマホが鳴り始めた。画面に表示されたのは、茜からの電話だった。玲奈はそれに出なかった。この数ヶ月、茜と過ごす時間が減っていて、電話にもあまり出ていなかったからかもしれない。ここ数日会っている中で、彼女は茜が以前よりもずっと甘えてくるのを感じていた。まるで、かつて自分一人で彼女を育てていた頃のようだった。スマホが再び鳴った。玲奈は画面を一瞥し、やはり出ることなく電源を切って家に入り、青木家の人々と食堂へ向かい、食事の準備を始めた。だが、席に着いたばかりの頃、青木家の固定電話が鳴り響いた。玲奈はほとんど直感的に、誰からの電話かを察した。彼女はすぐに立ち上がって「私が出るね」と言った。彼女は足早にリビングを出た。予想通り、電話の相手は茜だった。彼女が声を発すると、茜はうれしそうに呼びかけてきた。「ママ」玲奈は「うん」と答え、また聞いた。「ごはん食べた?」「まだだよ」茜の声には少し元気がなかった。「ママ、今おばあちゃんの家にいるの?私も行きたい。あとで一緒にご飯食べようよ、いい?」青木おばあさんがこちらを見て尋ねた。「茜ちゃんから?」玲奈は「うん」とだけ返した。「茜ちゃん、ママに会いたがってるんじゃない?」青木おばあさんは箸を置いて近づいてきた。「茜ちゃんが来たがってるなら、智昭に連絡して迎えに行かせて。ご飯も取っておいてあげるから」玲奈は答えた。「……わかった」そのまま玲奈は茜に
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