優里は数日後に返事が来ると思っていた。だがその日の午後、智昭から電話がかかってきた。「湊社長と湊夫人が明日、オークションに参加されるそうだ。一緒に行ってみるか?」その言葉に、優里は笑って答えた。「うん、いいよ」翌日の夜、会場に到着して間もなく、智昭は優里を連れて礼二の両親のもとへ向かい、紹介した。礼二の両親は、智昭と玲奈の関係も、玲奈と優里の確執もすべて把握していた。だが彼らは智昭の前では、玲奈に関することを表に出すような態度は見せなかった。穏やかな笑みを浮かべ、智昭と握手し挨拶を交わし、彼が優里を紹介すると、湊母はにこやかに手を差し出してきた。「はじめまして」名士が集まるオークション会場で、四人はしばし言葉を交わし、やがて智昭が湊父と他の参加者とビジネスの話を始めると、優里はその隙を見て湊母と二人きりになった。しばらく世間話をしたあと、優里はようやく本題に入った。「湊夫人、今日お時間をいただいたのは、実はお願いしたいことがありまして」湊母は笑みを絶やさずに答えた。「藤田さんほど若くて有能な方に解決できないことなんてあるのかしら?私の出る幕なんてないと思うけれど?大森さんは冗談がお上手ね」優里がそう言う。「今回のことは、湊さんに関係しています」湊母の表情が一瞬止まった。「礼二に関係あるの?」「はい」湊母が何か言おうとしたその時、バッグの中のスマホが鳴った。「電話が来たわ、ちょっと失礼」「……どうぞ」湊母はスマホを手に取り、少し離れた場所へ行って通話を始めた。しばらくして戻ってくると、優里に声をかけた。「ごめんなさいね、大森さん。お待たせして」「いえ、大丈夫です」「さっき、大森さんは礼二のことで何かあるって言ってたわね。どういう話かしら?」優里が話し出した。「藤田総研と長墨ソフトとの間に提携関係があること、湊夫人はご存じでしょうか?」「ええ、礼二から少し聞いたことがあるわ。つまり、その提携で何か問題があったの?」「はい、ちょっとした行き違いがありまして。正直に言えば、最初のきっかけはこちらに非がありました。でも、それでも契約を切られるほどのことではないと思っているんです。私はこれまでずっと湊さんに連絡を取り、問題を解決したいと申し入れてきました。損失分の補償もするつもりです」「です
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