社長夫人はずっと離婚を考えていた의 모든 챕터: 챕터 851 - 챕터 860

868 챕터

第851話

その夜、茜は串焼きを何本か食べ、しばらく積み木で遊び、星空を眺めたあと、山を下りてホテルに戻り、休むことにした。翌日、玲奈は礼二や会社の一部のスタッフと仕事について話し合っているとき以外は、ほとんど茜と一緒に過ごした。礼二と翔太も、何度か自分から仲良くなろうと茜に歩み寄っていた。茜はそのたびに素直に挨拶をし、きちんとお礼も言っていたが、彼ら2人と茜の距離が縮まることはなかった。2人は最初、茜が人見知りしているのだと思っていた。だが、すぐに茜が自分たちに近づかれることを拒んでいるのだと気づいた。茜はただ、2人と友達になりたくないのだ。以前、茜が優里に懐いていたことについて、礼二は玲奈をとても気の毒に思っていたものの、茜はまだ幼く、分別もつかない年頃だったため、茜を本気で責めることはなかった。茜は玲奈の娘なのだから、礼二が心から可愛がってあげたいと思わないはずがなかった。だが、今の茜の態度には、礼二もさすがに複雑な気持ちになり、思わず口にした。「礼儀正しくはしているけど、実際には俺たちが近づくのを拒んでる。まさか、生田博士のパーティーの日に俺が智昭や大森のことをあんなふうに言ったのを、恨んでるんじゃないだろうな?」玲奈は首を振った。「私にもわからない」自分も当然、茜が礼二と親しくなりたくないのだと気づいていた。礼二だけではない。自分に対しても、茜の態度は以前と比べてよそよそしくなっていた。茜の性格は、以前と比べて確かに変わっていた。その原因について、玲奈には分からなかった。だが、茜は一度も自ら彼女に話しかけてくれなかった……礼二は、茜に自分がどう接されようと、実は気にしていなかった。ただ、玲奈のことが不憫でならなかったのだ。彼は、生田博士のパーティーの日、茜が多くのことを知ったにもかかわらず、それでも智昭と優里のほうに肩入れするとは思っていなかった。礼二もこれ以上このことに深入りするわけにはいかず、ただ玲奈の肩を軽く叩いて、意識を仕事へと戻した。日曜日の午後、社員旅行が終わると、玲奈と礼二はそれぞれ帰路についた。この2日間は社員旅行だったとはいえ、玲奈も礼二も実際にはかなり忙しく、玲奈が茜と話す機会はそれほど多くなかった。茜の世話はほとんど田代がしていた。ただ、玲奈はこの2日間、智昭がずっと茜に連絡を取ろうとしていたようだが、茜は
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第852話

その後数日間、玲奈は会社の仕事に追われていた。ある日、礼二が突然玲奈にこう言った。「藤田総研では最近、また何人かの技術の中核を担っていた人材が辞めたらしい」「うん」玲奈が返事した。「私も聞いたわ」「投資家も何人か撤退したが、まだ撤退していないところもある。おそらく、もう少し様子を見るつもりなんだろう。智昭側が動くかどうかを見極めたいんじゃないか」そこまで言うと、礼二は少し笑って、付け加えた。「撤退した投資家の中には、進研マテリアルもいるらしい」進研マテリアルは、淳一の会社だ。玲奈は軽くうなずいた。礼二は思わず言った。「前に見た感じじゃ、徳岡は大森にかなり夢中になっていたように見えたからな。あっさり出資を引き揚げるするとは、ちょっと意外だったよ」玲奈は淳一のことには関心がなかったため、それを聞いても何も言わなかった。礼二はまた尋ねた。「智昭は出張からまだ戻っていないのか?」玲奈は首を振った。「わからないわ」ここ数日、玲奈は茜とも連絡を取っていなかったし、智昭の動向も特に気にしていなかった。彼が出張から戻ってきたのかどうかも、玲奈には分からなかった。「もうかれこれ1か月近くになる。大森テックの裁判の日も間近だし、藤田総研も今にも倒れそうな状況だ。智昭は本当に、この2つの会社を救うのを諦めるつもりなのか?」礼二が聞いた。「私にも分からないわ」礼二も分かっていた。たとえ智昭が大森家への支援を諦めたとしても、それだけで何かを意味するわけではない。そのことを理解していたからこそ、大森テックと藤田総研の件についても、礼二はそれほど気に留めていなかった。……放課後、茜がちょうど車に乗り込もうとしたとき、車内に座っている智昭の姿が目に入った。すると、茜はきゅっと唇を引き結び、足を止めたあと、車に乗り込んだ。智昭は隣に置いてあったプレゼントを茜に差し出した。茜は顔を背け、智昭から受け取らなかった。智昭は無理強いせず、プレゼントを脇に置くと、手を伸ばして茜の頭を撫でた。「パパは辰也おじさんと清司おじさんと食事する約束をしてるから、一緒に4人でご飯を食べよう」茜は避けようとしたが、うまくいかず、仕方なく顔を背けた。「どっちでもいい」「ここ最近、学校はどう?」茜は自分のタブレットを取り出し、俯いてパスコードを入力しながら、顔も上げずに言った。「何
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第853話

清司の印象では、茜は毎日楽しそうにしている。もし何か嫌なことがあれば、真っ先に智昭に話しているはずだ。それなのに、いったい何をそんなに悩んでいるというのだろう?茜はタブレットの画面をスクロールしながら、顔を上げずに言った。「別に不機嫌じゃないです」普段会うとき、茜はいつも笑顔を浮かべていて、一目で楽しそうにしているのが分かった。普段なら、からかわれればすぐに元気いっぱいに言い返してくるはずだ。だが今のように、からかわれても大人しくしていて、人に構おうともしない様子を見れば、清司にも茜は本当に不機嫌であると分かった。清司が茜を少しからかって、何か嫌なことでもあったのか聞こうとしたところ、辰也が軽く咳払いをした。「次はお前の番だ。料理を注文しろ」「もう注文したよ」「あと2品頼め」清司は驚きながら、「今日そんなに腹減っているのか?」と聞いた。だが、辰也は何も言わなかった。以前、みんなで一緒に海へ遊びに行ったとき、辰也はすでに茜が何か心に抱えていることに気づいていた。そのときから、きっと生田博士のパーティーの日に起きたことと関係があるのだろうと考えていた。つまり、茜と玲奈、智昭、そして優里の4人の間に起きたことが関係している可能性があるということだ。そう考えた辰也は、智昭と茜を交互に見た。茜が不機嫌な理由について話しているのに、智昭は口を挟もうともしない。それに、今もこの2人の間には静かな空気が流れ、ほとんど会話がないようだった。その様子を見て、茜が元気をなくしているのは、やはり玲奈と優里が関係しているのだろうと、辰也はますます確信した。なので、辰也は軽率に深く聞くことはせず、すぐに話題を変えた。食事もほぼ終わり、茜がトイレに立ったところで、辰也がようやく智昭に尋ねた。「お前、茜ちゃんと喧嘩したのか?」そのことには、先ほど食事をしているとき、清司も気づいていた。なぜなら、先ほど食事をしている間、茜はずっと大人しくしていて、智昭はいつもどおり茜に料理を取り分けていた。茜もそれを受け取り、「ありがとう」と礼を言っていたが、その口調は以前とは明らかに違っていた。智昭は「まあ、そんなところだ」と辰也に返した。清司の中では、茜は玲奈よりも優里のほうに懐いている。少し前の生田博士のパーティーにも茜は同席していたが、これだけ時間が経っているのだから、茜
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第854話

「本当にいいのか?ママに会いたくないのか?」茜は顔を背けた。「会いたかったら、自分でママに連絡するから。パパに誘ってもらわなくてもいい」智昭はそれを聞いて茜を見た。ちょうど何か言おうとしたところで、茜のスマホが鳴った。玲奈からの着信だった。茜は画面を見つめ、少し躊躇ってから電話に出た。「もしもし、ママ?」「うん、ママだよ」電話の向こうで、玲奈が尋ねた。「次の祝日、ママと一緒に過ごさない?」今の茜はあまり玲奈に近づこうとしていないように見える。だから、玲奈には、茜が一緒に青木家へ帰って祝日を過ごしたいと思っているかどうかも分からなかった。それでも、聞くべきことは聞いておかなければならない。茜は少しためらってから、ようやく言った。「分からない。あとでパパに聞いてみて、それからママに伝えてもいい?」「いいわよ」と玲奈が言った。「決まったらまた教えてね」「分かった」と茜が言った。「じゃあまたね、ママ」「……またね」玲奈の言葉が終わると、茜は電話を切った。車内はとても静かで、茜と玲奈の会話は智昭にもほとんど聞こえていた。智昭は「茜ちゃんに任せるよ」と言った。つまり、茜が玲奈と一緒に過ごしても、智昭と一緒に過ごしても、はたまた3人で一緒に過ごしても、どれでもいいということだ。以前なら、茜は智昭にそう言われれば、きっと後者を選んでいただろう。だが今は、こう尋ねた。「もし私がママのほうのひいおばあちゃんの家に行かないで、パパと過ごすなら、どうするの?」「俺となら、実家に帰って過ごすよ」茜は「ふうん」とだけ答え、それ以上は特に聞かなかった。家に戻ると、茜にはまだやることがあった。2階へ上がったところで、智昭が茜に言った。「今日は早く休め」茜はそれを気に留めることなく、そのまま自分の部屋に戻ってドアを閉めた。翌日、智昭は茜を学校まで送ったあと、出社した。和真と慎也は予定どおり智昭のもとへ行き、会社の状況を報告した。智昭は話を聞き終えると、指示を出した。だが、和真がまだその場に立ったままなのを見て、顔を上げずに尋ねた。「まだ何かあるのか?」優里が何度も智昭に会いに来ていたことについては、和真も慎也も彼に報告する勇気がなかった。とはいえ、優里がきっと智昭にメッセージを送っていることは、2人とも分かっていた。和真は少しためらったものの、結局こう答
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第855話

もし諦めてしまえば、何もかも失うだけでなく、借金まで背負うことになる。だからこそ、智昭という頼みの綱は、何としてでもつなぎ止めなければならない。佳子は優里を見て言った。「優里ちゃん、智昭のほうって……」優里は相変わらず同じ返事をした。「分かってる。私が連絡するから」佳子は頷いただけで、それ以上は何も言わなかった。佳子は、自分は男の扱いにはそれなりに慣れていて、男の気持ちも理解しているつもりだった。だが……認めざるを得ない。生田博士のパーティーから今に至るまで、智昭の一連の反応は、ほとんどすべて彼女の予想外だった。そんな佳子でさえも、今ではどうすればいいのか分からなくなっていた。優里は朝食を済ませると、会社へ向かった。藤田総研では現在、色々なタスクが滞っており、優里は忙しさに追われていた。ちょうど他の人と仕事の話をしていたところ、結菜から電話がかかってきた。「お姉ちゃん、智昭義兄さんが出張から帰ってきたよ!さっき藤田グループの新製品発表会に出席してたよ。発表会の会場の動画を見たの」優里は少し間を置いてから、「分かった」と言った。電話を切ったあと、優里がネットで確認してみると、結菜の言ったことは本当だった。智昭は客席に座っていて、カメラに時折映り込んでいた。彼がいつもと変わらず落ち着いている姿を見ていると、まるで生田博士のパーティー以降に起きたすべてのことが、智昭には何の影響も与えていないかのようだった。優里は動画を閉じると、スマホを手に取り、智昭に電話をかけた。1回、2回、3回と呼び出し音が鳴り、通話が自動的に切れるまで、智昭はやはり電話に出なかった。しばらくして、優里はもう一度電話をかけたが、やはり出なかった。優里はスマホを手にしたまま、和真に電話をかけた。和真は優里からの着信を見て、少しためらったものの、電話に出た。「もしもし?」「発表会の動画を見たわ」と優里は言った。「今日のお昼、智昭はどこへ食事に行くのか、教えてもらえる?」「大変申し訳ございませんが、お答えいたしかねます」優里は続けて尋ねた。「じゃあ午後、智昭は藤田グループに戻る?」今回は、和真も正直に答えた。「私も存じ上げておりません」優里はそれを聞いて、それ以上何も言わず、「わかった、ありがとう」とだけ言った。そし
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第856話

茜はもう一歩後ろに下がり、優里との距離を取った。「今日はもう家に帰ってご飯を食べたい」優里は笑った。「分かった。じゃあ私も一緒に――」「1人で帰りたいの」伝わっていないと思ったのか、茜は優里を見て、もう一度言った。「今日は1人で帰る」優里の目がわずかに曇り、一歩前に出た。「茜ちゃん――」しかし、優里が口を開いた瞬間、茜を迎えにきた運転手が彼女を制した。「大森さん、恐れ入りますが、これ以上はご遠慮ください」優里は茜を見て、もう一度口を開いた。「茜ちゃん――」茜は返事をせず、振り返ってそのまま車のドアを開け、乗り込んだ。茜が車に乗り込んだのを確認すると、運転手も車に乗り込んだ。優里は、茜を乗せた車が離れていくのを見つめ、唇を固く引き結んだ。生田博士のパーティー以来、茜は優里の電話に出ることも、一度もメッセージを返すこともなかったが、優里はそれほど気にしていなかった。優里は、時間ができたときに茜と一度会って、少し機嫌を取ってやれば、それで済むと思っていた。だが、そうはいかなかった……一方で。茜は道中ずっと黙ったまま、家に帰った。夕食が用意されると、茜は大人しく階下へ降りて食事をした。食べ終えると、また2階へ上がって自分のことをしていた。智昭が家に着いたのは、すでに夜の9時だった。2階へ上がると、彼はそのまま茜の部屋へ向かった。茜の部屋のドアは閉まっていた。智昭はノックし、茜の「入っていいよ」という声が聞こえてから、ドアを開けた。茜はドアが開く音を聞いて顔を横に向け、智昭だと分かると、何事もなかったように再び前を向いて自分の作業に戻った。「何?」智昭は部屋に入らず、ドアのところに立ったまま言った。「ちょっと様子を見に来ただけだ」「もう見たなら早くどっか行って」茜が明日の祝日に玲奈と一緒に青木家へ帰るつもりはないと察したのか、智昭はそのまま言った。「明日の夜は実家に帰って、一緒に過ごそう」「分かった」智昭は軽く頷き、「じゃあお休み」と言った。茜は返事をしなかった。智昭は彼女の部屋のドアを閉めてから、立ち去った。智昭が立ち去るまで、茜は優里が今日学校まで自分に会いに来たことを、智昭には一言も話さなかった。しばらくして、智昭が先ほど言っていたことを思い出した茜は、少しためらったあと、スマホを手に取り、玲奈に電話をかけた。玲奈も、
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第857話

執事は言った。「お菓子の注文なら簡単ですよ。誰に贈るために注文するんですか?どんな種類がいいですか?」茜はすぐに言った。「ママに贈りたいの!でもどれにしようかな……」茜は、玲奈がどんな味が好きなのか、どうやら知らないようだった。「奥様に贈るために注文するんですね!」玲奈に贈ると聞いた執事は、とても嬉しそうだった。「奥様の好みなら分かりますよ。あとでいくつか写真を送ってもらいますから、茜ちゃんが選びますか?」茜は頷いた。「うん、ありがとう!」執事はすぐに手配に向かった。洋風のケーキから秋の和菓子まで、お菓子の種類が多かったため、執事は青木家のほかの人たちの好みも考えて、いくつか違う味を注文してもいいと言った。茜はもっともだと思い、どの種類もいいと思ったので、全部1箱ずつ注文したいと言った。すると執事は慌てて止めた。「これは多すぎます。奥様と青木家の皆様だけではこんなに食べきれませんから、5、6箱くらいで十分ですよ」「……わかったよ」茜は一通り選び終え、タブレットを執事に返して、振り返って2階へ上がろうとしたところ、階段のところに立っている智昭の姿が目に入った。智昭がそこにどれほど長く立っていたのかは分からない。茜が振り返ったところで、智昭はようやく口を開いた。「お菓子を注文してるのか?俺の分はないのか?」茜はそのまま智昭の横を通り過ぎた。「ない」智昭は振り返って茜の後ろ姿を見ながら言った。「そんなに露骨にえこひいきするのか?」茜はもう智昭のことを相手にせず、そのまま2階へ上がって自分の部屋に戻った。翌日、茜は起きて間もなく、玲奈が届けてくれた栗の焼き菓子と、ウサギをモチーフにした置物を受け取った。智昭がちょうど階下へ降りてきたところ、茜が抱えている贈り物の箱が目に入った。茜はすぐにその箱を抱えたまま2階へ上がっていった。智昭はその様子を見ていたが、特に何も聞かなかった。朝食を済ませると、智昭は茜と一緒に実家へ向かった。実家には、美穂や政宗、そして休暇で帰ってきている悠真もいた。智昭と茜が戻ってきたのを見て、しかも2人だけだと分かると、茜が気づかない隙に、藤田おばあさんは智昭を見て言った。「あんたと玲奈は、まだ離婚していないんでしょう?今日は祝日なんだから、青木家に行って玲奈を迎えてきて、茜ちゃんと一緒に過ごすくらいできないの?」
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第858話

今となっては、藤田おばあさんも、玲奈と智昭がもう元の関係に戻ることはないのだと分かっていた。それを聞いた藤田おばあさんは顔を曇らせ、冷ややかな声で言った。「玲奈がこのところ自分から離婚を切り出していないのは、これまでの両家の付き合いを考えてのことだわ。この恩は、ちゃんと覚えておきなさい!もし今後、正式に離婚することになったとしても、玲奈には礼を尽くしなさい。彼女に渡すべきものは、きちんと渡すんだよ!」「分かっている」智昭の返事を聞くと、藤田おばあさんは「フン!」と鼻を鳴らした。藤田おばあさんと智昭が本当に険悪な雰囲気になってきたのを見て、政宗は話題を変え、智昭と玲奈のことについてはそれ以上話さなかった。昼になり、清司から智昭に電話がかかってきた。「今夜は何か予定あるか?」「実家でおばあさんと一緒に過ごすんだ」「一日中実家にいるつもりなのか?出かけないのか?」「ああ」「……」清司は黙ってしまった。まじかよ?優里とは、何の予定もないのか?もちろん、その後に続く言葉を、清司は口には出さなかった。「分かった。じゃあ1人で時間を潰すよ」「うん」電話を切ると、智昭は戻って、再び政宗との会話に加わった。一方で。玲奈もまた、ずっと電話対応に追われていた。翔太も玲奈にこれからの予定を尋ねていた。玲奈は、「今夜は出かけるつもりはないわ。実家で家族と一緒に過ごすつもり」と答えた。翔太は、玲奈が本当のことを言っているのと同時に、自分の誘いを断っているのだと分かった。「分かった。じゃあ……家族と楽しんで」「ありがとう、そっちも楽しんでね」電話を切ると、玲奈はリビングに所狭しと並べられた贈り物の箱に目をやり、眉間を揉んだ。辰也、翔太、瑛二から贈られてきたものも、そこに並んでいた。それだけでなく、淳一からも贈り物が届いていた。美智は反対側に積まれているいくつかの贈り物を指差して言った。「これは茜ちゃんが執事に頼んで届けてくれたものよ。茜ちゃんがわざわざ特注したんだって」玲奈は一瞬驚き、そばへ行って確認すると、確かにどの箱にも茜の名前が記されていた。だが、茜はこのことを玲奈には一言も話していなかった。とはいえ、それが茜からの返礼なのだろうと、玲奈にも分かっていた。美智は玲奈を見て言っ
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第859話

今日は祝日で、青木家の人たちは午後に静香のお見舞いに病院へ行くことになっていた。玲奈は何本か電話で話したあと、時間になると家族と一緒に病院へ向かった。静香の容態は以前とほとんど変わらず、青木家の人たちは相変わらず、病室の入口に立って、遠くから静香を見守ることしかできなかった。静香を見舞い、彼女のために持ってきた贈り物を病院のスタッフに渡すと、青木家のみんなは家へ帰った。彼らが家に着くと、家政婦が玲奈に、また誰かが贈り物を届けに来たと伝えた。玲奈はテーブルの上にいくつかの贈り物が並んでいるのを見た。しかも、包装を見るだけで、普通の箱ではないことが分かった。玲奈は「誰からの贈り物なの?」と聞いた。「茜ちゃんのお父様からです」玲奈は一瞬呆然とした。青木おばあさんも一瞬呆気に取られたが、すぐに眉をひそめた。玲奈は何も言わず、そのまま歩み寄って箱を開け、中を覗いた。智昭が贈ってきたものには、美味しそうな秋のお菓子詰め合わせだけでなく、高価なアクセサリー類までも入っていた。智昭の贈り物は、かなり豪勢なものだったと言える。そして、箱には1枚のカードも添えられていた。玲奈はカードを脇に置き、スマホを手に取って、智昭にメッセージを送った。【贈り物、受け取ったわ。お礼のつもり?】玲奈が言っているのは、智昭と優里のことが大きな騒ぎになったとき、すぐには離婚について智昭に話を持ち出さなかったことだった。玲奈がメッセージを送ると、しばらくして智昭から返信が届いた。【そうだ】玲奈はメッセージを見ると、すぐに返信した。【お礼の品なら、ありがたくいただくわ】とはいえ、玲奈がこのところ智昭に離婚を切り出さなかったのは、あくまで両家の付き合いを考えてのことだった。その後、玲奈はさらにメッセージを送った。【1か月後、また一緒に市役所へ行って、手続きをしよう】今回も、智昭はすぐに返信した。【わかった】玲奈は智昭からのメッセージを見ると、スマホを置いた。一方、智昭のほうからも、それ以上メッセージが送られてくることはなかった。青木おばあさんが玲奈に尋ねた。「向こうはなんて言ってた?急にこんなにたくさんのものを贈ってきたから、何かあったんじゃないかしら?」「何もないわ。もう全部、話はついてるから」青木おばあさ
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第860話

智昭が自分たちを助けに表へ出られない理由に思い当たると、徹の脳裏には玲奈の顔が浮かんでいた。徹は今でも玲奈のことを覚えている。ただ、彼は玲奈と智昭がまさか夫婦だとは思いもしなかったし、玲奈と大森家との間に、これほどの因縁があったとは思いもよらなかった……大森家と遠山家はそれぞれ複雑な思惑を抱いていたが、優里には彼らに構っている余裕などなかった。智昭の方から相変わらず返信がないのを確認すると、優里はしばらく沈黙した後、スマホを取り出し、清司と辰也の2人へ挨拶のメッセージを送った。メッセージが届くと、辰也はすぐに気づいた。ここ最近で、優里から連絡が来たのはこれが初めてだった。玲奈と優里の間にある恩怨を考えれば、2人が今生で和解することなど万に一つもない。だからこそ、たとえ将来的に智昭と優里が結婚したとしても、自分が優里と友人になることなどあり得ないのだ……そう思い至った辰也は、メッセージを目にしながらも返信をしなかった。一方、退屈を持て余していた清司は、優里から届いたメッセージを見て、少し呆気にとられた。清司は届いた文面を見ても、心から嬉しいと思えたわけではない。しかし……智昭の顔が頭をよぎると、彼は少し眉をひそめつつも礼儀として挨拶を返した。清司からの返信が届いたのを確認するやいなや、優里は間髪を入れずに彼へ電話をかけた。着信画面を見た清司は応答ボタンを押したが、彼が口を開くより早く、優里の方が先に声をかけてきた。「せっかくの祝日なのに、出かけてないの?」「うん」清司はそう言って溜め息をついた。「お前たちも出かけないのに、俺ひとりでどこへ遊びに行けってんだ?」その言葉を聞いた優里は目を細め、微笑を浮かべた。「明日や明後日も出かけないの?」「まだ決めてないな」そう尋ねられて清司は興味を示し、聞き返した。「どうした?お前と智昭で何か予定でも立ててんのか?」「特にないよ」清司はあまり信じられない様子だ。「2人ともないの?本当かよ?」「本当よ、嘘ついてどうするの」清司はまた溜め息をついた。「そっか……」優里はふっと笑った。「電話したのはね、あなたが退屈してないか心配で、少し喋ろうと思っただけ。私、これからまだ用事があるから、切るね。また今度連絡するわ」「おう、じゃあな」電話を切ると、優里の
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