社長夫人はずっと離婚を考えていた의 모든 챕터: 챕터 831 - 챕터 840

868 챕터

第831話

優里が帰宅した時は、もう夜の9時を回っていた。彼女が帰ってきたのを見て、正雄は尋ねた。「会社の方は何か問題でもあったか?」「今のところないわ」だが、もし投資家たちに大森テックが藤田総研に影響を及ぼしていると知られれば、そう簡単では済まない。正雄も分かっていた。大森テックの問題を早急に解決しなければ、藤田総研まで直接巻き込まれてしまう可能性が高いと。正雄もずっと積極的にケッショウテックと交渉していたが、ケッショウテック側はどうしても条件を緩めようとはしなかった。だが、ケッショウテックが要求している賠償金は、大森家が全財産を投げ打ったとしても到底用意できる額ではなかった……智昭がいてくれれば、正雄たちには再起するチャンスがある。たとえ藤田総研を手放すことになっても、それで構わないと思っていた。だが、智昭のほうからは、いつまで経っても何の返答もなかった……これだけ何日も経ったというのに、正雄たちは依然として、今の智昭が一体何を考えているのか、はっきり掴めずにいた。佳子は淡々とした口調で言った。「もう少し待ちましょう。智昭が優里ちゃんに自分から別れを切り出していない以上、まだチャンスはあるわ。それに、本当に優里ちゃんと別れるつもりなら、とっくに別れを切り出しているはずよ。今まで何も言わずにいるということは、むしろまだ可能性があるってことだわ。それに、聞いたところでは、藤田先生の政敵はずっと藤田先生の弱みを握ろうとしているらしいの。智昭のほうに動きがないのも、たぶんそれと関係があるんでしょう」そう言って、佳子は優里の手を軽く叩いた。「だから焦らないで」「分かっているわ」優里も実はそう思っていた。だからこそ、彼女は今も冷静さを保っていられたのだ。佳子の言うことにも一理あり、結菜と美智子はほっと胸を撫で下ろした。……翌日、茜をフェンシングの練習場まで送り届けた後、その日の午後、智昭は再び自ら迎えに来た。しかし、智昭と茜は自宅に帰らず、実家に戻った。2人だけではなかった。政宗夫妻や麗美、悠真も皆、実家に戻ってきていた。これは生田博士のパーティー以来、彼らが智昭と顔を合わせるのは初めてだった。藤田おばあさんは冷淡な表情で言った。「あら、帰ってきたのね」智昭は頷き、丁寧に挨拶した。茜がいる手
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第832話

「ああ」と智昭は淡々と返した。麗美はそう感嘆すると、しばらく黙り込んだ後、話題を変えた。食後、悠真は智昭のそばに腰を下ろした。生田博士のパーティーの夜に起きたことは、悠真はもう知っていた。悠真は以前から、智昭に好きな女性がいるという話は聞いていた。しかし、その相手が自分が女神のように崇めていたレーサーのCCだと知ったのは、生田博士のパーティーの日だった。すべてを知ったその時、悠真はようやく、智昭がなぜ優里のサイン入り写真を自分の部屋に飾るために手に入れてくれなかったのか、その理由を理解した……悠真が座ってくるのを見て、智昭は彼を一瞥し、「どうした?」と聞いた。悠真は一瞬ためらってから、口を開いた。「僕、お義姉さんって本当にいい人だと思う」確かに悠真は以前、CCのことがかなり好きだった。だが、CCとその母親たち一家が、玲奈や青木家を傷つけた張本人たちだと知ってからは、悠真はもうCCを好きではいられなくなった。まして、たとえこんなことがなかったとしても、玲奈と優里のどちらかを選ぶなら、悠真は玲奈のほうが好きだった。だから、ネットで一連のニュースを見たその日の夜、悠真はすぐに優里の連絡先をすべて削除し、サイン入り写真も捨てた。智昭は悠真を一瞥し、「そうか?」と聞き返した。「うん」悠真は思わず口にした。「兄さんは玲奈お義姉さんとこそ、一番お似合いだと思う」智昭は笑ったが、特に言葉は返さなかった。悠真は、智昭が自分の私事に他人から口出しされるのを好まないことを知っていた。智昭が何も答えなかったため、悠真もそれ以上は何も言わなかった。悠真が立ち去ろうとした時、智昭がふと尋ねた。「もうすぐ新学期が始まるんだろ?」「うん」智昭は続けて言った。「大学入試の成績もよかったし、何か欲しいものはあるか?」「いや、特に……」「免許を取ったらしいな?車を1台プレゼントしようか?この前SNSに載せてたやつの中から、好きなのを1台選べば?」悠真はたちまち目を輝かせ、断る言葉などもう口にできなくなった。すぐさま飛び上がると、2階へ駆け上がりながら叫んだ。「今すぐ2階に行ってスマホで写真送るよ!ありがとう、兄さん!」兄弟2人がこうして話すことはめったにない。美穂はその様子を見て、悠真の後ろ姿を眺めながら、思わず尋ね
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第833話

玲奈は「1日なら時間あるよ」と返事した。玲奈は茜の始業式のことを忘れていたわけではなかった。茜が自分の始業式に来てほしいと望んでいるのだから、時間がある以上、玲奈は当然行くつもりだった。玲奈に時間があると聞いて、茜は少し嬉しそうにした。「じゃあ、約束だよ」「もちろん」茜は少し間を置いてから、「それじゃ、ママ、バイバイ」と言った。以前なら、茜は用件を伝え終わった後も、いつも自分の日常のことを話したり、玲奈が忙しいかどうかを気遣ったりしていた。今回のように、ただ用件だけを伝えて終わることはなかった。それに、茜の口調には、どこかよそよそしさがあった。これについて、玲奈は深く尋ねず、「じゃあね」とだけ返して電話を切った。その日の夜、茜は智昭が言った通り、早めに眠りについた。翌朝、朝食を食べている時、茜は向かいに座っている智昭に言った。「始業式、ママが来てくれるって」「ああ、わかった」1日の朝、智昭と茜が学校に到着した時には、玲奈はすでに来ていた。あの日に電話をしてから、玲奈と茜はそれ以上連絡を取らなかった。それに、今日は生田博士のパーティー以来、茜と玲奈が初めて顔を合わせる日だ。玲奈の姿を見つけると、茜は車を降りて、早足で玲奈の胸に飛び込んだ。「ママ!」茜が胸に飛び込んでくると、玲奈は笑って腰をかがめ、彼女を抱きしめた。「朝ご飯はちゃんと食べた?」茜はなかなか玲奈の腕の中から離れようとせず、「うん、食べたよ!」と答えた。玲奈は微笑み、顔を上げると、少し離れたところに立つ智昭と目が合った。玲奈は軽くうなずいて挨拶した。玲奈はすぐに視線を逸らし、茜を離して言った。「先に中に入っていようか」「わかった」玲奈は茜の手をつなぎ、校舎のほうへ歩きながら尋ねた。「最近、どこか遊びに行った?」数日前に出かけたことを思い出し、茜は「うん、遊びに行ったよ」と答えた。とはいえ、その2日間を除けば、このところ茜はほとんど1人で家にいた。だが、そのことを茜は玲奈には話さなかった。2人が前を歩く中、智昭はただ後ろからついていくだけで、口を挟むことはなかった。校内は人でごった返しており、道すがら彼らの姿を見かけた人々の多くが、思わず足を止めて呆気に取られていた。まさかここで玲奈と智昭に出会うとは、誰も思っていなかった。以前ネット上で暴露された件につ
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第834話

先生との話を終えると、玲奈と智昭は案内されて席に着いた。席に着いたばかりだというのに、多くの生徒の保護者が智昭と玲奈のもとへやって来て挨拶をし、名刺を差し出した。玲奈と智昭はともに立ち上がり、相手と握手を交わしながら言葉を交わした。2人がほかの人たちとしばらく雑談していると、先生が生徒たちを整列させ、始業式に参加するよう促した。玲奈は茜の頭を撫でて、「行ってらっしゃい」と言った。茜は「うん」と頷いた。返事をしながら、茜は智昭を見て、それから玲奈へと視線を移した。もちろん茜は、2人が顔を合わせてから、ほとんど言葉を交わしていないことに気づいていた。いつからだったのか、茜の記憶では、2人は普段顔を合わせても、ほとんど言葉を交わさなくなっていた……ただ、以前は気に留めていなかっただけだ。茜は先生の指示に従って始業式へ向かった。智昭と玲奈、それにほかの保護者たちはその場に立ったまま、まだ何も分からない様子で騒がしく動き回る子どもたちの姿を見つめていた。今日会って、玲奈は茜がまた少し背が伸び、幼さも幾分か抜けて、少しずつ少女らしい雰囲気が出てきたことに気づいた……時間が経つのは、本当に早い。以前は、茜が成長していく姿を毎日見守り、その1つ1つの成長を決して見逃すことはないと思っていた。でも今は……「時間が経つのは早いな。あっという間に大きくなったな」突然、玲奈の耳元で智昭の声がした。玲奈は少し間を置いた。智昭が自分に話しかけていることは分かっていたが、返事はしなかった。智昭もまた茜に視線を向けたまま、そこから目を離さなかった。智昭は玲奈に無視されても、特に気にしなかった。だが、智昭のその感慨を聞いて、玲奈もまた、時の流れの早さをより強く感じた。これまでの出来事も、気づけばもう7、8年が経っていた。今振り返ると、まるで前世で起きたことのようにも思えるのに、どこかではつい最近の出来事のような気もした。とはいえ、今振り返ってみると、茜が4歳になる前までの智昭の無関心ぶりと、今の茜への気遣いを比べれば、この点に関してだけは、智昭の変化は確かに大きかった。そう思った玲奈は、茜のほうを見た。玲奈は少しためらった後、思わず口を開いた。「茜ちゃん……なんだか楽しくなさそうだね」玲奈は茜に会ってから、すぐにそれを感じ取っていた。「そうだな」智
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第835話

式典が終わると、保護者たちは次々と会場を後にし、玲奈と智昭も帰る準備を始めた。「じゃあ、ママは先に帰るね。何かあったらママに電話してね?」茜はうなずき、「わかった!」と返した。玲奈が話し終えたのを見て、智昭は茜の頬を軽くつまんだ。「午後、パパが迎えに来ようか?」茜は一瞬止まり、少し首を傾げて玲奈のほうを見た。明らかに、茜はその言葉を玲奈から聞きたかったのだ。しかし、ちょうどその時、玲奈に電話がかかってきたため、茜の視線には気づかなかった。茜は視線を戻し、「分かった」と答えてから、玲奈に向かって言った。「ママ、お仕事頑張ってね。私、先に教室に戻るね。もうすぐ授業が始まるから」玲奈は微笑みながら「ありがとう、授業頑張ってね」と返した。茜は手を振り、智昭と玲奈は茜が去っていく姿を見送った。先ほど電話に出られなかったため、茜が教室に入ったのを見届けてから、玲奈はスマホを手に取り、折り返し電話をかけた。智昭は玲奈に言った。「この後用事があるから。またな」玲奈は一瞬間を置いてから、うなずいた。智昭もスマホを取り出して電話をかけ、話しながら駐車場のほうへ歩いていった。玲奈も長墨ソフトに戻らなければならなかった。2人とも駐車場へ向かったが、その間には数メートルほどの距離が空いていた。事情を知らない人が見れば、2人はまるで面識すらないかのようだった。駐車場に着くと、2人はそれぞれ車に乗り込み、すぐに走り去っていった。その直後、少し離れたところに停まっていた1台の車もゆっくりと走り出した。その車に乗っていたのは、優里だった。茜が今日、新学期を迎えることを優里は知っていた。だから、わざわざここまで足を運んだのだ。先ほどの智昭と玲奈のよそよそしい様子を見て、優里はハンドルを握っていた手の力をようやく少し緩めた。今の玲奈は……本当に眩しいほど輝いている。優里は、智昭が突然玲奈を見直し、そこから恋愛に発展するかも……と考えたこともあった。去年から、玲奈が仕事で実力を発揮するようになって以来、智昭が玲奈を見る目が変わったのは、確かに間違いなかった。明らかに、特別な目で見るようになったからといって、必ずしもそこに恋愛感情が生まれるとは限らない。たとえ今の玲奈がどれほど輝いていて、智昭が以前より彼女に好意
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第836話

玲奈は「そうね」と短く返事した。礼二も分かっていた。玲奈がこのタイミングで自分から離婚を切り出さないのは、実のところ、藤田おばあさんと藤田おじいさんの顔を立てているからなのだ。そう考えた礼二は話題を変え、ふと笑って言った。「人づてに情報を探ってみたんだけど、ケッショウテックは大森テックと徹底的に争うつもりらしい。それどころか、さっき聞いた話じゃ、藤田総研まで一緒に訴えたらしいんだ」玲奈は少し間を置いてから、「結果はどうだった?成功した?」と聞いた。礼二は頷いた。「うん。さっき聞いた話じゃ、藤田総研の株式はもう凍結されたらしい」藤田総研が今回の件に巻き込まれたことについて、玲奈は実はそれほど驚かなかった。何しろ、玲奈がこれまで見てきた大森家や遠山家のやり方を考えれば、藤田総研と大森テックが今後大きく発展する見込みがあると知れば、ほかの者たちも当然、そこに一枚噛もうとするはずだ。普通に考えれば、大森テックと藤田総研の両方に問題が起きたのだから、礼二と玲奈にとっては喜ばしいことのはずだった。だが……大森テックと藤田総研を合わせたところで、智昭にとっては、それほど価値のあるものではない。この2社がなくなっても、智昭が大森家や優里の再起を手助けしようと思えば、ほんのわずかな時間で済むことだ。だから、たとえ礼二と玲奈にとって喜ばしい知らせだったとしても、礼二はその情報を知った時、すぐに玲奈に伝えようとはしなかった。一方で。優里が茜の学校を出て、藤田総研の本社ビルに足を踏み入れたばかりのところで、正雄から電話がかかってきた。「藤田総研の株式が凍結されたっていう話が、もう外に漏れたんだ」話を聞いた優里の顔色が一変した。まだ何も言わないうちに、増山をはじめ藤田総研の財務部の人たちが、優里が戻ってきたと聞いて駆けつけてきた。「大森社長、先ほど会社についていくつか気になる情報を耳にしたので、確認させていただきたく……」優里が答えようとしたその時、彼女の秘書も駆け寄ってきた。「大森社長、外では藤田総研の株式が凍結されたという噂が広まっています。先ほどから何人もの投資家から電話がかかってきて、出資を引き上げたいので、大森社長とお話をしたいと……」会社に問題が起きたと知り、ほかの社員たちも皆、優里の方に視線を向けた。
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第837話

進研マテリアル……つまり、淳一の会社だ。生田博士のパーティー以来、優里は淳一とは一度も会っておらず、連絡も一切取っていなかった。先ほど、多くの投資家が撤退すると知った時、優里は淳一ももしかすると……と考えた。優里は尋ねた。「進研マテリアルのほうは、何て言ってたの?」「徳岡社長の秘書が言うには、後ほど会社のほうから担当者が来られて、具体的な出資引き揚げの件について話し合うそうです」担当者が来る……つまり、淳一本人は直接来ないということだ。だが、これまでの交渉事はすべて淳一が直接来ていた。優里は我に返り、「わかったわ」と返事した。その日の午後、優里は目が回るほど忙しく、てんてこ舞いだった。藤田総研の多くの投資家が撤退したという知らせは、正雄の耳にも入っていた。藤田総研は数百億規模の価値があるとはいえ、まだ上場していない。今、多くの投資家が撤退し、株式まで凍結されている。このまま支えきれなくなれば、藤田総研が持つ価値はすべて泡と消えてしまう。大森家が藤田総研を引き継いでから投じた資金も、すべて水の泡になってしまう。藤田総研の企業価値がなくなれば、大森テックもまた損失を被ることになる。そして、大森テックが負うことになる損失は、大森家が全財産を投げ出したところで、とても賠償しきれる額ではなかった――正雄は険しい表情で優里に言った。「もう引き延ばしている場合じゃない」何はともあれ、正雄と優里には智昭側から何らかの返答をもらう必要があった。もし智昭側が本当に大森家との関係を完全に断つつもりなら、今ならまだ、できる限り資産を残し、損失を抑えることができる。もしこれ以上引き延ばせば……優里も当然理解していた。大森家と遠山家の人々は皆、不安を募らせていた。その時、家の外から車の音が聞こえた。佳子は車の音を聞いて慌てて立ち上がったが、玄関まで行く前に、徹がすでにリュックを背負って家の中に入ってきた。徹は家の中の重苦しい雰囲気には気づかず、家族が皆揃っているのを見て、少し不満そうに言った。「前に合宿が終わったら、みんなで空港まで僕のことを迎えに来るって約束したじゃないか?なのに空港に着いてみたら、迎えに来たのは運転手だけだった。みんな忙しいんだと思ってたのに、まさか全員家にいるなんて!」徹が
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第838話

優里は我に返り、「うん」と短く答えた。徹は帰ってきたばかりで気持ちが高ぶっており、ほかの人たちの様子がおかしいことには気づかなかった。そう聞くと、「そっか」とだけ言った。食事を終えると、優里はほかの人と一緒に徹としばらく話をしてから、2階へ上がった。部屋に戻ると、優里はスマホを取り出し、画面に表示された智昭の番号をしばらく見つめてから、ようやく電話をかけた。呼び出し音は鳴ったが、やはり誰も出なかった。電話が自動的に切れた後、優里は電話をかけ続けた。それでも誰も出なかった。何度かかけたものの、優里はそれ以上かけるのをやめ、ゆっくりとスマホを下ろした。深夜になり、徹が2階へ休みに上がった。優里が階下へ降りてくると、家族みんな一斉に彼女へ視線を向けた。優里はゆっくりと首を左右に振った。正雄は、それを見て、智昭とはやはりまだ連絡がつかないのだと察した。正雄は眉をひそめ、智昭が何を考えているのか、ますます分からなくなった。佳子も同じことを考えていた。この状況で智昭が自分たちに手を差し伸べるのが難しいことは、正雄にも理解できた。だが、これだけ時間が経っても智昭からは何の知らせもない。それなのに、優里と別れるつもりだとも言ってこない……もともと正雄は、智昭にもう少し時間を与えるつもりだった。だが今や、大森テックと藤田総研が相次いで問題に見舞われ、もうこれ以上待っている余裕はなかった……このことについて、優里もはっきりとわかっている。優里にも、智昭が今も玲奈に対して恋愛感情を抱いていないことは分かっていた。だが、智昭がずっと電話にも出ず、メッセージにも返信しないという態度では……安心していられるわけがない。そう思い、優里は立ち上がって言った。「明日、もう一度智昭に連絡してみる」結菜がすぐに口を挟んだ。「もし智昭義兄さんが、それでも電話に出なかったら?」優里は少し間を置いてから言った。「その時は、その時よ」そう言い終えると、優里は振り返って2階へ上がって行った。翌朝、優里は起きるとスマホを確認した。案の定、智昭からはまだ返信がなかった。優里はスマホを手にしたまま、しばらくしてから、また電話をかけた。だが、誰も出なかった。チャットグループでも、これまでと同じように何も動きがなく、静かなままだ
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第839話

しばらくして、優里は少し間を置いてから、もう一度電話をかけた。今度は和真に電話をかけた。和真は優里からの着信を見て、少し驚いた。しばらく迷ったものの、結局電話に出た。「お世話になります、高木です」「こんにちは、高木さん。忙しいところごめんね」生田博士のパーティーの件については、和真も当然知っていた。和真の受けた衝撃は、海斗や文音にも劣らないほど大きかった。和真はまさか、優里と玲奈にそんな関係があったとは、どうしても想像できなかった。優里の言葉を聞き、和真は少し間を置いてから答えた。「……いえいえ、とんでもないです。ご要件をお伺いできればと思います」優里も単刀直入に尋ねた。「智昭が今どこにいるか、教えてもらえる?」和真は、智昭と優里が今どういう状況にあるのか、実のところよく分かっていなかった。ただ、大森家と藤田総研に問題が起きたことについては、和真も知っていた。そのため、智昭が大森家に手を差し伸べていないことも、当然知っていた。だが、今は世間の騒ぎが大きく、智昭が大森家を助けないのは正しい判断だと思っていた。それは、智昭と優里の関係が終わったということとは別の話だ。だが、そんな中で優里が智昭の居場所を尋ねる電話をかけてきた……和真は我に返り、言った。「申し訳ありません。藤田社長の居場所を、どなたにもお伝えするわけにはいきません。どうかご理解ください」「大丈夫よ」和真がそう答えることは、優里にも予想がついていた。「じゃあ、智昭は出張に行っているかどうかだけ、教えてもらえる?」和真は少し迷ったあと、答えた。「藤田社長はここ数日、ずっと首都にいます」「じゃあ……今は藤田グループにいるの?」「いいえ、おりません」「わかったわ。ありがとう」「どういたしまして」優里が先に電話を切った。午後4時過ぎ、優里は藤田総研を出て、車のキーを手に外へ出た。30分ほどして、優里は智昭の住む邸宅地の入口に現れた。だが、優里は中には入らず、邸宅地の入口で待っていた。しかし、深夜まで待っても、智昭の車は一向に姿を見せなかった。その後も優里は一晩中待ち続けたが、結局、智昭の車は現れなかった。朝になると、いつも茜が乗っている車が学校へ向かって走り去っていった。優里はその車を見送った。この時になって
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第840話

玲奈は手を伸ばして智昭と握手を交わした。「藤田社長、ご丁寧にありがとうございます。こちらも今来たばかりです」「そうですか。どうぞ、お掛けになってください」玲奈は頷いて席に着くと、すぐに本題へと話を戻した。2人が真剣な表情で仕事の話に集中し、私的な付き合いなど微塵も感じさせない様子を見て、ほかの者たちは再び顔を見合わせた。智昭と玲奈が仕事の話をする姿を、翔太も当然、初めて見るわけではなかった。しかし、まさか智昭が、玲奈が離婚しようとしている夫その人だったとは。翔太は以前は知らなかったし、夢にも思わなかった。だからこそ、今こうして玲奈と智昭が仕事の話をしている姿を見ていると、翔太は以前とはまるで違う感覚を覚えた。以前、こういう場面では、2人は公私をきっちり分け、互いに淡々としていて、仕事以外のことはほとんど一言も話さなかった。翔太は、それは以前、優里が長墨ソフトと関わった時に、玲奈との間でいざこざがあったせいだと思っていた。だが、改めて今見ると……翔太の視線が、玲奈へと向けられた。この時の玲奈は、智昭と仕事の話をする際、一切ほかのことに気を取られる様子もなく、完全に智昭を取引先として接していた。玲奈は本当に、もう智昭に何の感情も抱いていないのだろうか?そう思うと、翔太は視線を玲奈から智昭へと移した。智昭もまた真剣な面持ちで、集中して玲奈と仕事の話をしていた。玲奈と話す時の態度は穏やかだったが……確かに、彼女に対して恋愛感情を抱いているような様子は微塵も見られなかった。翔太の視線に気づいたのか、智昭が彼の方へ目を向けた。翔太は智昭と視線をぶつけた。その目には、以前と変わらない冷たさが浮かんでいた。智昭はふっと笑みを浮かべ、翔太を一瞥すると軽く頷き、そのまま視線を逸らした。智昭のその態度は、以前、翔太がまだ優里を想っていた頃と何ら変わらなかった。智昭は、優里の心には自分しかいないと分かっていたからなのか、自分を恋敵と見なしている翔太のことなど、これまで一度も気に留めたことがなかった。そして今……以前、智昭が玲奈と協業の話をしていた時、翔太は彼女に対する積極的なアプローチをまったく隠す気がなかった。智昭が、翔太が玲奈のことを追いかけていることに気づいていなかったとは到底思えなかった。智昭は、翔太のアプローチを知っていながら、少しも動
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