監視委員会は、夕月が提出した株式分析プログラムが彼女自身の作品だと認め、株式市場に投資した資金が離婚後の財産であることを確認。凍結されていた資金は彼女の口座に振り込まれた。数億円の資産家に返り咲いた自分を確認して、夕月は口元に微笑みを浮かべた。その時、桜都証券の赤井部長から電話がかかってきた。夕月は眉をひそめながらも、通話ボタンを押した。受話器から、すぐさま軽薄な声が響いてきた。「藤宮さん、資産の凍結が解除されたとお聞きしました。おめでとうございます。よろしければ、また投資顧問としてお手伝いさせていただきたいのですが。手数料は最低限に抑えさせていただきますよ」「赤井さん、もう桜都証券を解雇されたのでは?」赤井の声が詰まった。苦笑いを浮かべながら「藤宮さんはお詳しいですね」赤井が解雇されたのは、夕月の16億円が凍結された一件が原因だった。この情報が誰かによって広められ、多くの大口顧客が桜都証券への信頼を失った。夕月の資産が凍結されている間、桜都証券は顧客を大量に失い、当然その責任を取らされる形で、赤井は職を失うことになった。「今は栄進証券におりまして、藤宮さん、ご安心ください……」「赤井さんは自分が解雇された理由をまだ理解していないようですね。部長という立場でありながら、顧客を裏切るような真似をするべきではなかった」そう言い切ると、夕月は電話を切った。赤井への言葉を聞いていた天野は唇を僅かに開いた。この赤井は、近いうちに証券業界全体から締め出されることになるだろう。後部座席から夕月の声が聞こえた。「入金された資金で、十年分の家賃も余裕で払えるわ。残りは事業計画書を作って、お兄さんの新興テック関連の事業に重点投資するつもり」「ああ」天野は静かに返事をした。彼が最初の大金を手にしたのは、夕月からの投資があったからこそ。今では天野の名義の事業の大半で、夕月が51%の株式を保有している。瑛優は現在、市内トップクラスの名門幼稚園に通っているが、半年後には小学生になる。夕月は桜井の小学部への進学は考えていなかったが、どの小学校に通わせるかは、これから瑛優と一緒に考えていくつもりだった。今は瑛優の送り迎えの便を考えて、桜井の近くに住居を借りている。コンシェルジュ付きの高級マンションで、敷地内には五つ
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