結局として、自分と美月は母娘だ。切っても切れない、複雑で絡まった関係。だから、わざわざ気まずくする必要なんてない。紗雪の感情が落ち着いたのを見て、美月も態度を和らげた。「今週末、パーティーを開くことにしたの。正式に紗雪が会社を引き継ぐことを発表するわ。それと、安東家との今後の協力を取り止めることも」紗雪は思わず目を瞬いた。「急じゃありませんか?」美月はゆっくりとお茶を飲み、落ち着いた声で言った。「前から紗雪に会社を任せると決めていたし、ちゃんと伝えていたでしょう。だから急ではないわ。ただ、あなたが心の準備をしてなかっただけ」紗雪は少し疑わしげに尋ねる。「そのこと、緒莉......姉にも言ったんですか?」美月の前では、紗雪は一応緒莉に多少の礼を払っている。美月もそれを感じ取り、追及はしなかった。「このことは彼女も知っているわ」そして穏やかに続けた。「安心しなさい。私がこうすると決めた以上、ちゃんと考えがある。あなたが心配していることは全部、もう考えてあるわ。全部手配するから」その言葉に、紗雪もそれ以上は言及しなかった。「会長がそう決めたなら、私は従います」彼女はふっと笑みを浮かべた。「その日、必ず出席します」美月は静かにうなずく。「京弥くんも連れていらっしゃい」大事な場だから、誰一人欠けてほしくない。紗雪は一瞬足を止めたが、最終的にうなずいた。美月の決断は唐突に感じたものの、会社を継ぐ準備はすでにできていた。その過程がひとつ増えただけ。むしろ堂々とした継承になる。これで緒莉が何を言おうと、周囲は見ている。どれだけ騒いでも、何も変わらない。そう思うと紗雪は少し安心した。「会長、他にご用件は?」紗雪が穏やかに尋ねると、美月は一息ついた。「もう行っていいわ」娘が自分と長く過ごしたがらないことに、美月はどこか寂しさを覚えた。子どもが大きくなれば、母は与えることしかできなくなる。それ以外にできることは、何もない。「その日はちゃんと身なりを整えて来なさい」美月は娘のビジネススーツ姿を見て、ため息をつく。娘は美しいのに、身だしなみに無頓着で、仕事一筋。社交も好まない。それがどうにも気がかりだ。紗雪は自分のスーツ姿
Read more