クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚! のすべてのチャプター: チャプター 1111 - チャプター 1112

1112 チャプター

第1111話

自分がこれまで前もって費やした努力は、結局のところ紗雪には敵わなかったということか?一体あの女はどんな手を使ったのか。まさか敦のような老獪な男まで、平気で会いに行くとは。加津也の胸中では、紗雪への悪意ある想像が膨らんでいく。――どうせ、まともじゃない手を使ったに違いない。あの顔立ちは、男に媚びるためのものだろう。そう考えた瞬間、彼の目はさらに暗く翳った。横にいた秘書は震えて一言も発せず、ただ彼の機嫌に怯えている。――この人......どうして今まで気づかなかったんだろう。最近、社長の機嫌はますます不安定になっている。加津也はふと顔を上げ、目の端に秘書の姿を捉えると、苛立ちが一気に爆発した。「なに突っ立ってるんだ」手を払うようにしながら言う。「残りの時間は全部、柿本を監視しろ。動き一つ残さずだ。二川グループと少しでも密に動けば、すぐ報告しろ」「はい。分かりました」秘書は怯えた目で彼を見上げ、唇を噛みしめたまま反論すらできない。今の彼の怒りに触れれば、自分など簡単に潰される。今できることは、ただ彼の望む通りに動くことだけ。欲しがるものは何であれ、即座に手に入れて差し出すしかない。加津也は、従順に黙り込む秘書を見て、少しだけ気が晴れた。やはり皆が自分に従ってこそ、気分がいい。「出ろ。用もないのに来るな」その言葉に、秘書は救われたように息を吐き、逃げるように部屋を出た。最近の彼の気分の浮き沈みは手が付けられない。どうすれば機嫌が良くなるのか、もうパターンすら読めない。だから、慎重に、さらに慎重に動くしかないのだ。一人残された加津也は、胸の中に澱のような怒りを抱えたまま、何かが裏で動いている気配を感じていた。自分がコントロールできない大きな手が、全てを操っているかのようだ。だが今の自分にできるのは、敦を徹底的に監視し、紗雪と距離を置かせることだけ。机に広がる書類を睨みつける視線は、ますます陰険さを帯びていく。もし本当に紗雪が汚い手を使ったのなら──必ず暴いてやる。こんなこと、簡単に済ませるつもりはない。これが自分のやり方だ。それに、あの女は何度も自分を刑務所送りにした。そろそろ反撃の時だ。相手の弱みを掴めば、二度と逃がしはしない。そう
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第1112話

加津也の瞳に、危うい光がかすめた。ここまでいろいろ見てきて、結局は自分で掴みに行かなければ何も手に入らないと、ようやく思い知ったのだ。とくに女ってやつは、絶対に調子に乗らせちゃいけない。初芽がその最たる例だ。あれだけ良くしてやったのに、平気でほかの男を探しに行くなんて。こんなの、誰だって耐えられるわけがない。*椎名グループ。京弥は書類を処理していた。そこへ匠がノックして入ってくる。家とはまるで別人のように、京弥は会社では一切の柔らかさを見せず、近寄りがたい冷気をまとった機械みたいだった。その姿に、匠は心の中でしみじみと思う。紗雪の前にいた時の京弥が懐かしい。あの頃はちゃんと人間みたいに喋っていたし、社員たちにも笑顔を見せることさえあった。今やこれだ。以前とは完全に別物。――もっとも、文句なんて言えないけど。「社長、ご指示いただいた件、全部終わっています」匠は続けた。「後は柿本氏が奥様と契約を結ぶだけです。ただ、具体的な日程は奥様次第でして」「分かった」京弥は顔も上げず、目の前の書類に視線を落としたまま淡々と言う。匠は余計なことは言わず黙った。やっぱり奥様のこと以外、社長の興味はほとんど湧かないらしい。「紗雪の方は日程決まったか?」京弥がふいに口を開く。紗雪がこの件で気を揉んでいたことを思い出した。早く片付けば、少しは気が楽になるだろう、と。匠は少し考えてから首を振った。「柿本氏は、パーティーの後だと言ってました。今週、二川家がパーティーを開くでしょう?だから奥様も、ひと段落してから契約を結ぶつもりなんじゃないでしょうか。そうすれば、後のプロジェクトも慌てずに済みますし」京弥はペンを置き、じっと匠を見た。その視線に、匠はぶわっと鳥肌が立つ。「パーティー?」突然の問いに、匠はびくりと肩を揺らす。訳が分からず、気まずそうに答えた。「二川グループが開く、安東グループとの協力解消の発表を兼ねたパーティーです。詳しいことは......私もよく分かりませんが」京弥の眉間が冷たく険しくなる。匠はますます訳が分からない。自分は何かまずいことでも言ったのだろうか。だが京弥の頭の中は別のことでいっぱいだった。――紗雪がそんな話、一
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