スタイリストたちは、そんな恋を心底うらやましく思った。ふとした瞬間、彼女たちも考えてしまう。いつか自分にも、あんな甘い恋が訪れるだろうか、と。最後には店長が二人を車まで見送った。戻ってくると、スタイリスト全員がキラキラした目で固まっていた。「私たちにもあんな甘い恋、いつか来るかな」「それそれ。二人お似合いすぎでしょ」「顔も雰囲気も、全部トップレベルじゃん......」誰かが自嘲気味に頬をつまみながらつぶやく。「私じゃきっと無理だよね」店長は苦笑して首を振った。「はいはい、感傷はそこまで。仕事しないと。甘い恋なんて言う前に、働かなきゃ。恋どころか給料も飛ぶよ」その言葉に全員ビクッと固まり、慌てて持ち場へ散っていく。恋はまだ遠いけど、仕事があるなら十分幸せ。まずは視野を長く持つこと。一つのことに囚われすぎちゃいけない。今の世の中、恋愛脳より仕事脳の方が生きやすくて稼げる。だから、今日も努力あるのみ。*車に乗り込むと、京弥はずっと紗雪を見つめていた。その視線に、今度は紗雪が照れてしまう。頬に手を当て、ためらいがちに尋ねる。「どうしたの?そんなに見つめて......」見られすぎて、さすがに落ち着かない。さっきのスタジオでもずっとそうだったのに、外に出た今のほうがさらに熱い視線だ。京弥はまるで当然のように答える。「だって綺麗だから。それに、自分の妻を見るのは普通だろ?」「飽きたりしないの?」と彼女が頬を膨らませると、彼は即座に首を振った。「そんなわけない。例えをするなら、紗雪は俺が大事に育てたバラだ。こうして美しく咲いてるのを見ると、自分は花を育てるのが上手なんだって思える。よく言うだろ。妻の美しさは夫の誇りだって」紗雪は小さく息を飲む。驚きと、照れと、そして胸の奥を満たす温かさ。昔の京弥なら、こんな風に言葉にしなかった。今の彼は、迷いなく愛を伝えてくる。海外から戻ってきて、不安になることもあるけれど......その不安を、彼は一つひとつ優しさで埋めてくれる。ベッドで眠り続けていた頃から、ずっと。変わらずそばにいて、支えてくれた。目がじんと熱くなる。「京弥......ありがとう」昏睡のときも。目覚めた今も。
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