客たちはざわつきながらも、視線を壇上へ向けていた。「二川会長はいったい何をするつもりなんだ?」「まさか二人同時に後継者に?」「それはさすがに......」さまざまな憶測が飛び交うが、美月は一切動じない。彼女には彼女の考えがあり、誰にも狂わせられない。それこそが、彼女が二川グループをここまで成長させてきた理由だ。周囲の雑音を聞き流し、己の信念を貫いたからこそ、会社は倒れず、むしろ強くなった。静まり返る会場。もう二つの重要発表は済んだはず。――まだ続きがあるのか?美月は優雅に周囲を見渡しながら話し始めた。「まずは、今日ここにお越しくださった皆さまに、あらためて感謝いたします。ご存知の通り、私は二人の娘を持っています。次女は後継者に決まりました。しかし長女は体が弱く、無理をさせるわけにはいきません。将来、寄る辺のない人生を歩ませるわけにもいかないでしょう」紗雪の胸に不安が広がる。緒莉は目を輝かせ、期待に唇をわずかに持ち上げた。――これはきっと自分のための話。客も同じ予感を抱く。この流れ、この言葉。二人を同等に扱うための布石ではないのか。美月の声が一段高くなる。「二人の子を持つと、一方に偏らず公平にするのは本当に難しい。長く悩みましたが、今日、こうして皆さまにお伝えする決意をしました」そう言うと、美月は緒莉へ手を差し伸べた。「緒莉、こちらへ」緒莉は表情こそ崩さないが、胸中は熱く高鳴る。優雅に歩み寄り、美月の横に立つ。美月はその手をしっかりと取り、客に向かって告げた。「ですので、私は会社の30%の株式を緒莉の名義にします。私の次女に次ぐ権利です」会場が一気に沸き立つ。緒莉の目が見開かれる。予想以上の内容だった。美月の持株は65%。それを分けたということは――「次女=35%」、「長女=30%」。しかも緒莉は体が弱く、会社には出ない。つまり――紗雪が働き、緒莉が利益を受け取る構図。「公平」という言葉の仮面をかぶった、露骨な贔屓。台上で、紗雪はその光景を無言で見つめていた。母が緒莉の腕を取り、二人で微笑み合う――まるで美しい家族の瞬間。だが紗雪の目には、あまりに痛々しく映った。つまり、自分はただの飾り。後継者という肩書き
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